この独創的な不耕起栽培機具で、畑の土を健やかに保ちながらオーガニックな作物を育てることができる。
フレイル草刈機の刃が被覆植物を粉々に砕く。砕かれた草切れは、表土2.5~5センチにすき込みやすい大きさだ。
文:Joanna Poncavage
翻訳:浅野綾子
初めに悪いニュースから。この20年間、1年当たり何百万トンもの土が、水と風による浸食が原因で、アメリカの耕作地から失われている。浸食割合はうなぎ上りで、さらに多くの土壌が耕され、むき出しにされたままだ。深く耕すことも、土壌構造や植物に滋養物を与える生物を破壊することになる。これは、さらなる肥料と土壌改良材が後日投入される必要があることを意味する。良いニュース?あなたの土地で不耕起栽培もしくは浅耕栽培技術を取り入れることで、あなたもこの問題の解決に向けて一役買えることだ。
不耕起栽培手法(「ゼロ耕起 (zero tillage) 」としても知られる)は、どのような農地サイズにも使うことができる。裏庭菜園、小さな市場向け野菜農園、数エーカーにわたる農場など。この栽培技術には、厚いマルチを作ることも含まれ、作物をこのマルチの中に植えていく。被覆植物と組み合わせた不耕起栽培は、浸食作用を減少させることができ、土の栄養と有機物を押し上げ、水分を保つ。加えて、厚い被覆植物のマルチが雑草を抑え、微生物やミミズ、キノコ、土壌構造と土の健康を保つ他の有益な微生物を住みやすくする。
現在、不耕起栽培が主要作物の栽培面積35パーセント以上で使われているにも関わらず、慣行栽培は主に除草剤と合成肥料に依存している。けれども、オーガニック不耕起栽培の方法なら、あなたの農地のサイズを問わず、化学製品を使わずに土壌構造を改良することができるだろう。ゼロ耕起を可能にする特別な道具を必要とする有機栽培農家の人たちに、以下の道具は特におすすめだ。
1. ローラー/クリンパー(Roller/crimper)
オーガニック不耕起栽培は、被覆植物から始まる。被覆植物は、刈り取られた後マルチになる。あなたの農地がかなり小さいなら、被覆植物を手で刈り取ることもできるが、大きい場所の栽培では機械を使う。12年前、ジェフ・モイヤー (Jeff Moyer) は、ローラー/クリンパーを、有機栽培のリーダー的存在であるローデル・インスティテュート (Rodale Institute) で作り出した。この器具は、基本的に大きく重い円筒で、山形に長い刃が溶接されている(スライドショーを見よう)。被覆植物の上を転がして、クリンパーの刃が被覆植物の茎を刈り、雑草を抑えるマルチを作るためにその場で枯らしてしまう。このマルチは、被覆植物の茎と根が分解されると土に有機物を加える一方、水分を保つ。「全部のことをやってしまうのが被覆植物の生態なんだ」とモイヤーは言う。彼の著書「Organic No-Till Farming(仮訳:オーガニックな不耕起栽培)」は、不耕起栽培がどのように耕起を不要にとどめるのか、手間を省くのか、化学製品に頼らずに土を改良するのかが説明されている。
「被覆植物のマルチは、かなり厚くなければならない。1エーカー当たり、少なくとも乾燥したもので2,200キログラム強、3,600から4,500キログラム強あればずっと良いね。」とローデル・インスティテュートの責任者であるモイヤーは言う。タイミングもとても重要だ。被覆植物は、花が咲いている時が最も枯らしやすいが、種をつける前でなければならない。
限られた電気工具しかない菜園家や市場向け農家は、簡単な材料で自分のクリンパーを作ることができる。80センチ弱のアングル鉄1本を、80センチ弱のツーバイフォー(2x4)の末端にねじ止めする。木材の端にそれぞれ穴を開け、ロープを通し、ロープの両端を結んで留める。自家製クリンパーの使い方について、モイヤーは説明する。「板の上に体重をのせて、被覆植物の茎を押しつぶし、ロープで引き上げる。これを繰り返すんだ。」
ケンタッキー州に拠点を置く、アース・ツールズ (Earth Tools) では、1~3エーカーの農家向けの小さなトラクターや機具の売上が堅調だ。アース・ツールズが販売するローラー/クリンパーは、80センチ弱の幅で、2輪の手押し耕運機で押したり引いたりして使うことができる。市場向け野菜農園の植床にぴったりのサイズだ。
全ての野菜が、被っていた被覆植物が潰された場所での栽培に適するわけではない。クリンパーをかけられたマルチに、手作業、もしくは種まき機での種まきが簡単にできる作物には、とうもろこしやかぼちゃ類、豆類、きゅうり、メロン、強い丈夫な苗に育つものならどんなものでも含まれる。マルチが厚すぎるなら、「マルチに手を入れて、芽がでてくることができる小さな窓を開けてあげる必要があるかもしれない」とアース・ツールズのジョエル・デュフォー (Joel Dufour) は言う。クリンパーがけしたマルチに簡単に定植できる野菜の苗には、トマトやピーマン、ブロッコリーなどがある。ほうれん草やビーツのような、小さい葉が出て発芽する作物は、厚みのあるマルチで簡単に駄目になってしまうことがある。こうした作物には、苗床用に細長く土が裸になるように、フレイル草刈機や道を作る円盤を取り付けたスライサー/種まき機を使おう(番号2、3をご参照)。
2. スライサー/種まき機 (Slicer-planter)
大きい土地で不耕起栽培をする人たちにとっては、マルチ層を切って直播することが問題になり得る。モイヤーは、自分の畑での試用に、前方部には3メートル強のローラー/クリンパーを取り付け、後方部にはスライサーのアタッチメントで重くなった種まき機を取り付けた4輪トラクターを使用している。この兼用機は、被覆植物を押しつぶし、マルチの中にきれいにつけられた道に、すぐさま種をまいていく。
モイヤーは、ペケア・プランター (Pequea Planter) と一緒に、不耕起種まき機用のスライサーアタッチメントのデザインをした。まだ開発の初期段階だが、アタッチメントは、すき先の端にとりつけられたゴムタイヤでできている。そのため、大きなピザカッターのような丸いスライサーに見える。ゴムタイヤは、被覆植物を押さえつけ、スライサーがマルチに道を切っていく。そして、種まき機が、種を一列にまいていく。
3. フレイル草刈機 (Flail mower)
レタスやほうれん草のような背の低い葉物は、残渣のない植床に種をまくのが一番良い。枯れた被覆植物の草切れが未来のサラダを駄目にしないようにだ。そのために、デュフォーはフレイル草刈機をすすめる。この草刈機の回転刃は、被覆植物を細かく刻む。この刻まれた草切れは、2.5~5センチの表土にすき込まれる必要があるだろう。そこで微生物が草切れを分解してくれる。このタイプの表面上の耕起は、不耕起栽培の哲学にも添う。というのも、土壌構造を壊さないからだ。「フレイル草刈機は、ローラー/クリンパーが丁度良いタイミングでできなかった時の奥の手でもあるんだ。」とデュフォーは言う。ローラーがけ早すぎれば、被覆植物にまだ力がありすぎて、枯らすことができないかもしれない。フレイル草刈機をかけてしまおう。それで事足りる。
4. ブロードフォーク (Broadfork)
オーガニック不耕起栽培であっても、土は2~3年毎に固くなってしまう。ケベックの市場向け野菜農家の、ジャン=マーティン・フォーティエール (Jean-Martin Fortier) は 、ブロードフォークで土を軟らかくする。「本当に耕してしまわずに、深く耕すことのメリットが得られるんだ。」と彼は言う。ブロードフォークは、長い真っ直ぐな2本のハンドル棒の間に横棒が渡され、その横棒の下部に縦方向に歯がついている、手作業の道具だ。ブロードフォークを使うには、歯を土中に押し込んで、土を軟らかくするために、長いハンドルを前後に揺らす。
サブソイラー (subsoiler) は、ブロードフォークのような機具で、「浅耕 (low-till) 」用と言ってよいかもしれない。トラクターのこのアタッチメントは、硬くなった植床を軟らかくするために、30センチ弱の深さまでの土中を引きずっていくことができる。
5. ロータリー・パワー・ハロー (Rotary power harrow)
フォーティエールは、野菜専門で、年間何千ポンドものメスクランを生産し、1.5エーカーの固定された植床で、15万ドル以上の総収入を上げる。彼は、フレイル草刈機で被覆植物を細かくし、ロータリー・パワー・ハローを使って、残渣を土の表層に混ぜる。
ロータリー・パワー・ハローは、歯で土をかきまぜ、植え付け準備のために表面をならす。フォーティエールが説明するように、この機具は「定植のために土を完全に調整する。」 彼はこう加える。逆進ハンドル付きの2輪手押し耕運機なら、前部後部両方のパワー・テイク・オフ・アタッチメントを見込めると。
自身の栽培方法を「ミニマム耕起 (minimal tillage) 」または「生態耕起 (biological tillage) 」と呼ぶフォーティエールは、時々植床をロータリー・プローで作り変える。ロータリー・プローは、バータ・フランコ・カンパニー (Berta Franco Co.) によって製造された、手押し耕運機用の機具だ。でも、フォーティエールは、畑の土がまだ冷たい早春に植床を作り変えている。というのは、ミミズや他の土壌生物、土の特色が損なわれないようにするためだ。フォーティエールの菜園は(あなたの菜園もだ)、それらが支えているのだ。
オーガニック被覆植物を栽培する
1年草、もしくは秋まき1年草の被覆植物ならどんなものでも不耕起栽培もしくは浅耕栽培に使えるとローデル・インスティテュートのジェフ・モイヤーは言う。「こつは、栽培ローテーションを見て、どこに被覆植物を取り入れる機会があるか見つけること。もしくは、被覆植物を栽培するためにローテーションの組み直しの検討をつけること。それから、あなたの畑の土、環境、栽培のローテーションに一番合った植物を選ぶことだ。」と言う。モイヤーは以下の被覆植物をすすめる。
• 小さな穀物:小麦、ライ麦、エンバク、ライ小麦、大麦、ソバ
• 多年草でないマメ科:ヘアリーベッチ、エンドウ豆類、飼料用大豆、クリムゾン・クローバーもしくは1年草クローバーならどんなものでも
また、被覆植物を決める前に、以下の事柄を決めておく必要がある。
• マルチはどの位もってほしいか。ライ麦のような草は雑草を抑えるのに向いている。というのも分解されるのに時間がかかるからだ。
• マルチが早く分解されて欲しいだろうか。(早い分解を望むなら)ソバかヘアリー・ベッチを選ぼう。もしくは、どのような被覆植物であっても、フレイル草刈機で細かく刻もう。
• マルチが次の春にそこにあって欲しいだろうか。(そこに欲しいなら)夏に被覆植物を植えて、冬の寒さで枯らせよう。種をつけないことを確認しておこう。
• 土に窒素補給もしてほしいだろうか。エンドウ豆や大豆のようなマメ科を植えよう。
オーガニック不耕起栽培の情報
本
「Organic No-Till Farming(仮題:オーガニック不耕起栽培)」 ジェフ・モイヤー
「The Market Gardener(仮題:市場向け野菜栽培農家)」 ジャン=マーティン・フォーティエール
記事
DIY No-Till Roller/Crimper Plans
(自分で作る不耕起ローラー/クリンパー計画)
Make Your Own Broadfork
(自分のブロードフォークを作る)
Choosing the Best Cover Crops for Your Organic No-Till Vegetable System
(あなたのオーガニック不耕起野菜栽培にぴったりのマルチ植物を選ぼう)
Managing Cover Crops in Conservation Tillage Systems
(保全耕起における被覆植物管理)
農機具
BCS America
Earth Tools
I & J Manufacturing
Pequea Planter
Best Tools for No-Till Farming
December 2016/January 2017
By Joanna Poncavage
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