ホットプロセス法で軟石鹸を作る

ナチュラルで手作りの石鹸を草木灰からとれた苛性アルカリ溶液とスロークッカーを使って作る方法、道具そしてそのメリットについて順を追って説明する。

 

 

文:Susan Verberg

 

油に苛性アルカリ溶液を加えハンドミキサーやスティックブレンダーでよく混ぜて一晩おいておく。

 

 石鹸を作る人たちは、古代ローマ人がサポラ山で神に捧げる動物を燃やし、どのように石鹸を「発見」したのか、神話に登場する山のふもとを流れる小川がいかに洗濯にはもってこいの場所だったのか、話すのが大好きだ。彼らは、水、灰、動物の脂肪が偶然にその場所で石鹸を作りだし、小川を満たしたという。実際には、ローマ人が石鹸を作ったわけではない。豊富な石灰岩と貝が入手可能であったケルト人が市場を独占し石灰岩と貝から消石灰を作り苛性ソーダ灰汁(水酸化ナトリウム)を作ったものをローマ人が買っていた。

 私は、全て自然の材料を使ってヤギのミルク石鹸を作り、職業として地元のファーマーズマーケットで長い間売ってきたが、古代の技術を基に自給できる石鹸づくりの工程を開発することにした。目標は自分で苛性アルカリ溶液を作り、台所から出る油脂のごみを石鹸に変えること。ついに思いきってやってみることにした。それは、とても面白い冒険となった。古い記事や手書き原稿を丹念に調べ、中世の英語を解読し、台所には奇妙で泡立った調合物があふれた。そして、なぜこんなに単純そうなものがこんなに難しいのか不思議に思った。

 私は、あなたのやる気を無くしたいわけではない。アウトドア好きならもうすでに石鹸を作ったことがあるかもしれない。キャンプファイヤーで灰のついた脂っこいフライパンをごしごしこするのは、単に汚れをごしごし落としているのではない。少量の水で流せば、灰の中の水酸化物塩が料理に使った油と混ざり原始的なクレンザーができる。

 

石鹸づくりの基本を理解する

 「けん化(saponification:ラテン語で石鹸を指す sapo に由来)」として知られる、石鹸を作る過程を始めるにあたって、石鹸とは何か、なぜあのように働くのかおさらいしてみよう。石鹸はアルカリと呼ばれる水溶性塩基からできていて、水に溶解する能力を保ちつつ酸を中和する。もっと明確にいうと、石鹸は界面活性剤で、脂肪や油を水に拡散するという際立った能力を持っている。だから、油染みを洗い流すことができるのだ。

 石鹸は一般的には「苛性アルカリ溶液」と呼ばれる水酸化物塩溶液と酸性の油分を混ぜて作られる。軟石鹸を作るのに使う苛性アルカリ溶液を作るには、水酸化物塩を溶かすために水を灰でろ過する(またはドリップする)。灰には高濃度の水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩などのミネラルが含まれている。苛性アルカリ溶液の質は原料となる植物がどれだけよく燃やされたかによって決まる。完全に燃焼すればする程(全ての有機材料が燃焼されている状態)水酸化物が水の中に溶け出し、苛性アルカリの塩基性が強くなる(pHが高くなる)。炉や暖炉で見られるような不完全燃焼の場合は、灰に石灰を加え炭酸塩(炭)を水酸化物に変えることができる。

 私が作る灰からドリップした苛性アルカリ溶液はおよそpH11だが、市販の苛性アルカリ溶液はpH14であり、灰から作る苛性アルカリ溶液の1000倍もアルカリ性が強い。この点で、炭から作る苛性アルカリ溶液は従来の石鹸づくりと大きく異なる。pHが低いおかげで、ドリップされた苛性アルカリ溶液の取り扱いは商業用の苛性アルカリ溶液の取り扱いに比べはるかに安全だ。しかし、用心のため石鹸を作る時は必ずお酢を手の届くところに用意しておいたほうがよい。酢の酸が苛性アルカリ溶液のアルカリ性を中和してくれるからだ。

 ドリップした苛性アルカリ溶液を使っての石鹸作りは、手作りの苛性アルカリ溶液の純度、濃度が一定ではないため難しいがやりがいがある。家庭で石鹸を作る人には、コールドプロセス法よりもホットプロセス法(下記に記載する)で石鹸を作ることをお勧めする。なぜなら、ホットプロセス法は正確な量や特定の純度の苛性アルカリ溶液でなくてもけん化することができるからだ。ホットプロセスで作る石鹸のけん化(苛性アルカリ溶液と油脂との化学反応)はpHコントロールによるものではなく、熱を加えることによってコントロールされる。

 調査を進める中で、ドリップされた灰の苛性アルカリ溶液の濃度を生卵を使って確認する伝統的な技を見つけ出した。卵と正しい濃度の苛性アルカリ溶液の密度はほぼ同じであるため、卵は浮く。多くのイギリス植民地時代のレシピは卵の1/4が液体から上に出ている状態で浮かんでいれば、自家製の苛性アルカリ溶液を使うことを勧めている。このような苛性アルカリ溶液は「ブラックソープ」と呼ばれ強力な洗濯用石鹸であり、歴史を再現する人々の間ではひどく評判が悪い。一方、16世紀のシャンプーのレシピで苛性アルカリ溶液の濃度は液体の中央に卵が浮くくらいがちょうどよいと書いてあるものを見つけた。卵が浮遊するくらいの苛性アルカリ溶液を使うと中性に近い石鹸になる。これは、自家用に使うにはちょうど良い。なぜならこの石鹸は肌「刺激」しないからだ。この歴史のあるレシピには、「苛性アルカリ溶液と油脂の割合は3対1だ」と書かれており、このレシピの通りに作るといつもうまくいく。 5世紀前に立証されていたのを見つけるなんて嬉しい。

 経験と歴史の研究から、柔らかく、クリーミーなホットプロセス石鹸をゼロから作る説明書を考案した(自家製の苛性アルカリ溶液の作り方も含む)。

 

軟石鹸を作る8つのステップ

1. ろ過のためのたるを作るには、5ガロン(約19L)のバケツの底に小さな穴をドリルで開け、フィルターになるように布巾を詰める。ふるいにかけた灰を時々上から軽くたたきながらバケツいっぱいに入れる。灰を平にし、バケツの口から5cm下までいっぱいになるようにする。ゆっくりと2.5cmほどの雨水を入れ、水が浸み込んだらもう2.5cmほど入れる。バケツの底の穴から液体が滴り落ちるまで、ゆっくり水を加える。この作業にはほぼ1日かかる。ポタポタと落ちる苛性アルカリ溶液を集めるため、もう一つのバケツを灰入りのバケツの下に置いて支える。およそ1ガロン(約3.8L)の液体が溜まったところでアルカリの濃度をテストする。

2. ステップ 1 で薪ストーブや暖炉の通常の灰を使っていれば、溜まった苛性アルカリ溶液はこげ茶色で、おそらく卵は浮遊しないだろう。溜まった苛性アルカリ溶液をゆっくり火にかけ、はじめの用量の 1/4 程になるまで水分を蒸発させて、ちょうど良い濃度にする。苛性アルカリ溶液に火を通す際はステンレス製の容器を使い、絶対にアルミ(苛性アルカリ溶液と混ざることで有害なガスを出す)やエナメル(苛性アルカリ溶液が腐食させる)の容器は使用しない。石鹸づくりを始める前に苛性アルカリ溶液を冷ます。不純物は底に沈む。翌日、不純物の少い上澄みの苛性アルカリ溶液を別の容器に静かに注ぐ。

 ステップ 1 で高効率ストーブから出た白い灰を使った場合は、苛性アルカリ溶液は薄い黄色で、最初から卵が浮くだろう。この苛性アルカリ水溶液は洗浄力の強い洗濯用石鹸を作るのに使える。中性のハンドソープを作るには、溶液に卵が浮遊するくらいまで少量の水をゆっくり加える。

3. 苛性アルカリ溶液 3 に対して油が 1(体積比で)になるように計量する。獣脂やラードのような室温で固形の油脂は液体になるまで温めて冷ます。もし、石鹸づくりを始めたばかりなら、オリーブオイルを使うのがよい。工程が簡単になるからだ。オイルに苛性アルカリ溶液を加えてよく混ぜる。(スティックブレンダーを使うとよい。)一晩おいておく。

4. 12時間おいておくと、溶液は分離するのでよく混ぜ合わせる。溶液を1時間から2時間蓋をしてスロークッカーで強火にかける。石鹸が冷めてはいけないのでたまにかき混ぜるだけにする。石鹸が膨れ始めたら、蓋の下で泡ができているのが見える。そうしたら、蓋を外し、泡を落ち着かせるために石鹸をよくかき混ぜる。もう一度蓋をして、つまようじを蓋の下に差し込み、熱い空気が少しの隙間から逃げられるようにする。

5. スロークッカーで石鹸を加熱し(強火のまま)続けると、中にある陶器の端から泡ができてくるのが見える。これが石鹸が作られているところだ。泡は端だけにできていなくてはいけない。真ん中で沸騰していてはいけない。上の方で石鹸が出来上がっているのが見える。端が乾くのを防ぐため、時々かき混ぜる。必ず優しくかきまぜる、そうしないとこの段階で急激に泡だってしまう恐れがある。

6. 石鹸はだんだんと濃くなり一体になり出来上がる。スロークッカーの蓋をとり、余分な水分を蒸発させる。石鹸はカスタードのように見え(石鹸を作る人たちは「トレースが出た」と言う)、石鹸をすくった時に表面に滴の跡「トレース」が残り、滴がスプーンから垂れる。これでほぼ完成。

7. つやと光沢が出て、石油ゼリー状になり交ぜた時に小さな波の跡ができるくらいまで火にかける。鍋の底で石鹸を分けても、もとに戻らなくなる。薄く、柔らかい石鹸を作るならこの時点で火を止める。または、好みの濃さになるまで水分を蒸発させる。(石鹸は固くなりはしない。)私はホイップクリームくらいの濃度が好きだ。

8. できあがった石鹸は、色や濃度がまちまちになるだろう。「古いやり方」でたくさんの石鹸づくりを成功させた。それぞれ6時間から7時間かかった。直火でこの方法をためすのなら、火力が一定でないと石鹸も安定したものにならないし、混ぜ合わせたものがトレースにならないかもしれない。

 

手作りでドリップした苛性アルカリ溶液で石鹸を作るのは、面白いし満足感を得ることができる。そして特殊な道具や高級な道具は必要ない。あなたもぜひ試してみてください!

 

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How to Make Hot-Process Soft Soap

By Susan Verberg

December 2016/January 2017

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コメント: 2
  • #1

    洋平 (火曜日, 14 2月 2023 17:17)

    軟石鹸の作り方がよくわかりませんでした。通常水酸化ナトリウムを油に入れると固まります。よければみそみたいな石鹸の作り方教えて下さい

  • #2

    沓名輝政 (水曜日, 15 2月 2023 06:31)

    洋平さん
    コメントに感謝します。
    作り方の記事が分かりにくいとのこと失礼しました。具体的にどの点が分からないのか教えていただけますでしょうか?調べて、分かりやすい翻訳に改善させていただければと思います。
    ネット検索すると、このように試行錯誤している方もいます。ご参考に。
    https://www.tinyhouseperiodicals.jp/archives/7028
    慈愛と調和と感謝(^-^)