ハーブのお手当て、ホームメードのビターズと気分一新のお茶のレシピで、落ち込んだ冷たい季節のムードを押し上げて、消化器・神経系の働きを促そう
ハーブは、健康増進の穏やかだが着実な方法だ
お茶用の色とりどりのハーブ(ラベンダーやセイヨウオトギリなど)は、陰鬱な季節を輝かせる。
文:Marlene Adelmann
翻訳:浅野 綾子
時に悲しくなることは、人間の自然な健康状態の1つだ。この記事を読んでいる全ての読者は、悲しい気分の経験、さらには、ひょっとしたら何らかのうつ病の経験さえあるに違いない。冬のどんよりした日々が近づいてくると、それまでより多くの時間を部屋の中でひとりで過ごすかもしれない。それが、陰鬱な気持ちや、冬の気分の落ち込みにつながることがあるのだ。
けれども、悲しみ、やる気のなさの全てがうつ病に分類されるわけではない。「気分の落ち込み」とうつ病との違いは、状態の現れる期間や深刻さ、要因による。うつ病と違い、気分の落ち込みは来ては去る。だけど、その威力は十分だ。嫌な気分は、疲労や空腹、乾燥、過労、栄養不足、寝不足、日に当らないこと、その他肉体的及び精神的ストレスで引き起こされることがある。こうした気分は大抵すぐに終わるが、うつ病は適切な手当てをしなければ数週間から何年にもわたってだらだらと続くことがある。
脳内物質のアンバランス?
うつ病の生態学の初期の仮説は、神経もしくはニューロンの信号を細胞に送る働きをする神経伝達物質のモノアミン(ノルエピネフリンやセロトニン、ドーパミン)を中心としていた。これらの脳内物質は、メンタルヘルスの向上と幸せの門番として絶えることなく広く求められている。こうした脳内物質は重要だ。なぜなら、食欲や睡眠、元気、喜びをコントロールする助けとなるからだ。うつ病を含む多くの気分障害を和らげるこうした物質の効果を考える時、これら全ては言うまでなく関係のある事柄なのだ。
しかし、脳内物質が全てではない。1977年、ジョージ・L・エンゲル (George L. Engel) は、もっと総合的で生物心理社会モデルを提示した。それは、現実社会での治療法における、考えられる生物学的、心理学的、社会的構成要素について議論したものだ。医療従事者には、うつ病が多面的であり、脳内物質を調整することは部分的要素にすぎないことが広く認められている。
その他の要因
遺伝子: 家族に何らかの深刻なうつ病を経験した人がいることは、遺伝的に同じ病気を発症しやすいことを意味するかもしれない。これは、うつ病になると運命づけられているということではなく、むしろ、うつ病の影響の受けやすさが大きくなっていることを意味する。
脳の構造の変化: うつ病がうつ病を生むかもしれない。研究には様々な結論があるが、脳の画像解析を使った研究にこのようなことを示唆するものがある。気分や記憶、判断に関係する脳の部分(扁桃体と海馬状隆起)は、繰り返される気分障害に応じて変化するかもしれない(あるいは、うつ病にかかった人は既に縮小している)というのだ。ストレスが続くことは、新たなニューロンの生産も緩慢にして、神経伝達を阻害し、うつ病にかかりやすくするかもしれない。
生活上のストレス: 経済的葛藤、損失、もしくはその他の生活上の困難は、多大なストレスになることがある。現実に生じている恐れ、あるいは想像上の恐れは、私たちの魂と身体に刻まれて、私たちに、傷つきやすい、混乱している、怖い、あるいは落ち着かないと感じさせる原因となる。また、ストレスホルモンの高まりや、その他の肉体的反応の引き金となり、身体に顕著な変化を生み出す。
健康状態: 甲状腺機能不全症、糖尿病、アレルギー、自己免疫疾患、その他内科治療を要する深刻な状態は、うつ病の症状や本格的なうつ病を促すかもしれない。あなたが感じていることが単なる一時的な気分の落ち込み以上だと感じたら、いつでもかかりつけ医に連絡しよう。
毒素: 毒素に晒されることは、私たちの精神及び肉体的健康に影響することがある。殺虫剤、環境汚染、特定の処方薬、シンナー、重金属は、全てうつ病とつながりがある。こうした毒素への接触を出来る限り最小限にして、化学製品に代わる自然のハーブ製品を代わりに試してみよう。
腸内健康: 脳の健康と腸の健康には強いつながりがある。研究者は、腸の炎症と刺激が中枢神経系と脳に変化を与える(逆も同様)可能性があることを発見している。
季節的変化: 日の短さ、日照不足や活動量の減少は、季節的情動障害としても知られる冬季うつ病の原因となりうる。
うつ病と気分の落ち込みのためのハーブ
気分が落ち込んだり、いつもの自分ではない時、気分を和らげて日常をもう一度楽しめるように、できることがある。ハーバリストとして私たちは、心と身体の多くの複雑さについて取り組まずに済ましてしまうことが多いことだろう。だから、どんな状態の原因を考えようとする時でも、既往症や食事、生活習慣について検討するのだ。
良いニュース: 身体を応援し、調子を整え、滋養のあるハーブ療法が、悲しみやうつ病に役立つかもしれない。ハーブの神経薬は、ストレスや不安を取り除き、神経を穏やかにして滋養を与える。アダプトゲンは、身体のストレスへの反応を穏やかにし、不安を減らすのに役立つ。ビターズは腸内健康維持に役立つ。ハーブは脳の働きを応援し、積極的なものの見方を維持するのに役立つことができる。刺激物をのぞいた食事と運動を併用した時はなおさらだ。発酵食品、オメガ3脂肪酸とビタミンB群を食事に取り入れ、精製された小麦、砂糖、コーヒーとアルコールを制限することもできるだろう。太陽の下での屋外活動時間は、必要なエネルギーの高まりをあなたにもたらすことができるだろう。
ハーブは健康を増進する穏やかだが着実なアプローチになることがある。だけど、覚えておこう。ハーブ療法は顕著な効果が見られるまで長い時間、何ヶ月もかかることすらあるかもしれない。抗うつ製剤を飲んでいる、もしくは妊娠中か授乳中なら、うつ病へのハーブ使用について、必ずかかりつけ医と話し合っておこう。
いつもの自分に戻る
冬の真っ最中、うつの気分は最も私たちに影響を及ぼすかもしれない。でも、落ち込んだ気分は、私たちに内省的になり自分を改める機会をくれる。私はうつにのたうつことを主張しているわけではなく、むしろ、必要な医療やハーブの助けを借りながら、悲しみを迎え入れ、それがもたらすかもしれないメッセージの受け入れを考えてはどうかと言っているのだ。
人として私たちは、他人との魂のこもったコミュニケーションや、自分も地球の一員であるという感覚が必要だ。冬の落ち込みとうつ病に助けとなるハーブを使うことは、私たちにとって、再びつながり、自分たちを慈しみ養い、そして全てを一体として創造する、1つの方法なのだ。
うつ病と冬の気分の落ち込みに、このハーブ療法を試してみよう。
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カンゾウのアルコール漬け
マーリーナ・アデルマはハーバリストでハーバル・アカデミー (The Herbal Academy) の創立者。ハーバル・アカデミーは、ハーブのアートと科学の国際的な学校で、オンラインの訓練プログラムを提供し、ボストン地域のハーバリストの出会いの場としても一役買っている。
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By Marlene Adelmann
February/March 2017
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