3Dプリントチャルカ|デジタル時代の糸紡ぎ

マザーアースニューズ 自然 自給 DIY 社会 コミュニティ アメリカ

ある糸紡ぎ愛好家は、時代を超えた技術を現代的な手法で継承し、その過程で自宅拠点のビジネスを構築している。

文と写真:ジョセフ・ビョーク(Joseph Bjork)

翻訳校正:沓名 輝政

 

2018年に初めて3Dプリンターを購入し、いつもの机の上のおもちゃを一通りプリントした後、私は自分だけの折りたたみ式ブック型チャルカ(畳めるインドの糸車)をプリントすることにしました。以前にも糸紡ぎに手を出したことがあり、裁判官の小槌からドロップスピンドルを作ったこともありましたが、チャルカのユニークで豊かな歴史と、折りたたんで本棚に隠せるという愉快な機能が、私の興味を新たにかき立てたのです。

 

自家織の復活

 ガンジーはチャルカの強力な支持者だったと言っても過言ではなく、ガンジーにとってチャルカは、つつましやかな工芸品から放射状に広がる家内工業の中心でした。彼は、手紡ぎの復活が地元の家内工業を活性化し、インドを英国に縛り付けていた経済的な優遇措置を断ち切り、帝国の流れを変えるだろうと考えたのです。彼が言ったように「糸車は、私にとって大衆の希望の象徴です。大衆は、チャルカを失ったことで自由を失った。糸車は寡婦の友であり、慰めでした。チャルカが、村人たちが怠惰にならないようにしてくれていた。チャルカには、糸紡ぎ、梳毛、整経、糊付け、染色、織物など、前半から後半までの産業がすべて含まれていたからです。おかげで、また、村の大工や鍛冶屋も忙しく働いていたのです」

 自宅での糸紡ぎの復興と工場製衣料のボイコットは、英国をインドに引き留める権益を衰弱させて追い出しただけでなく、インド人が自国の産業を通じて物質的、政治的自立を取り戻し、人々の中心にある精神をよみがえらせました。糸紡ぎは、インドの庶民が自分たちの労働力によって自分たちとその共同体を支え、衣服を与えることを可能にしたのです。このような糸紡ぎと国家の独立との深い結びつきは、初期のインド国旗に糸車をイメージした形で刻まれ、今日に至るまで、インド国旗は自家紡績、自家織布であることが法的に義務づけられているのです。

 

自立と家内工業 

 チャルカについて知るにつれ、チャルカで糸を紡げるようになりたいという思いが強くなってきました。ネットで見つけたチャルカは、数百ドルほどの価格帯で、当時の私が喜んで払いたいと思う額よりも高価でした。しかし、私は3Dプリンターを持っており、このツールで自分だけのチャルカを作るというアイデアに、ある種の詩的な優雅さを感じずにはいられませんでした。

 チャルカにまつわる独立性と家内工業の考え方は、私が最初に3Dプリントに興味を持った理由と本質的に同じものです。これまで高価な金型や巨大な工場が必要だったものが、デスクトップ3Dプリンターがあれば、家庭で作ることができるのです。我が家では、ギタースタンドと収納ケース、子供用のボードゲームやおもちゃ、バスルームの札、キッチン用の道具、作業場用のジグ、ドラムカーダー、ウールコーム、チーズプレス、フィニアス・ゲージの頭蓋骨の正確なレプリカ、楽器、ライフルの部品、靴下編み機(これはまだ作業中)、鞴[鍛冶用の送風機]などを作りました。3Dデザインソフトを少し勉強してからは、友人や家族から、洗濯機のカスタムパーツや、弟の学校の課題用の小さな部品、車椅子でも使えるような iPad スタンドの改造などを依頼されるようになったのです。

 3Dプリントに使われる最も一般的なプラスチックのひとつであるPLAは、発酵させたデンプンから作られる生分解性のものです。3Dプリント・コミュニティの中には、一般的なプラスチック廃棄物を利用して、独自のプリント用フィラメントを作ることに成功した人もいます。チャルカと同様に、私の安価な3Dプリンターは家内工業の世界を開き、地元コミュニティに生産的なサービスを提供することを可能にしてくれています。このつながりから、私は2021年の春、初めてのデザインプロジェクトとして、自分で3Dプリントできるチャルカを設計することになりました。。。

 

* 今号の記事全文は3月上旬までのご注文でご利用いただけます。こちらからどうぞ

* 今号の和訳抜粋サンプルはこちらからどうぞ

* 和訳全文は1年おきに発行される和訳電子版のバックナンバーでお楽しみください