Climate Farming(気候対応農法)6 つの実践方法

マザーアースニューズ 自然 農 自給

菜園を CO2 をガッツリためる栽培オアシスに変えよう。

 文:ジェフ・マイヤー(Jeff Meyer)

翻訳:浅野 綾子

 

 2021 年 6/7 月号の気候対応農法シリーズの第 1 回(『Climate Farming(気候対応農法)の実践』)を読んだ読者なら、おわかりのはず。気候対応農法(Climate Farming)は、環境再生型農業、パーマカルチャー、シントロピック・アグロフォレストリー(syntropic agroforestry)という、すでに効果が実証済みの農法を独特な方法で組み合わせた、最先端の栽培実践方法です。気候対応農法の実践には、以下のような方法があります。

  • 栽培作業への家畜の組み入れ
  • 不耕起を取り入れることで表土の撹拌を最小限に抑制
  • 堆肥づくり
  • 混植
  • 輪作
  • 自然の力を借りた土壌浸食抑制
  • 入念な水分管理

 気候対応農法の目的は、表土の健康状態を改善し、有害な農業廃水を減らし(または取り除き)、大気中の温室効果ガスを隔離しながら、美味しくて、栄養豊かな果物や野菜をつくることです。

 気候対応農法を実践に移すことは、気候変動との戦いの中で、ソーシャルメディアに投稿したり、運動に寄付をしたりする以上のことをする一つの方法です。私たち全員が、家庭菜園をしたり、気候対応農法で栽培された生産物を市場で販売するよう求めたりすることで、自分の役割を果たしはじめることができます。

 農業や家庭菜園を通して集団的に炭素隔離をすることで、気候変動の好転という世界規模での影響に加え、河川や小川や湖の状態も改善し、地域に明らかな変化を生み出すことになるでしょう。これは、私たち全員が賛成できることに間違いありません。

 大変革に飛び込む準備はできていますか。あなたの農場や菜園や自営農場を、二酸化炭素をガッツリためるオアシスに変える、今すぐできる 6 つのことをまとめてみました。

 

 

1️⃣ 堆肥の山をつくる 

 堆肥は生物豊かな土壌改良材で、ゴミを減らすだけでなく、土をふたたび活性化させる貴重な栄養分を放出します。堆肥づくりについて最大の誤解のひとつは、はじめるのに広いスペースが必要だと考えられていることです。都会の住人でさえ、適当な容器と方法を使えば堆肥づくりができます。自分の状況に最適な方法を判断するのが、はじめの一歩です。

 裏庭があるなら、やってみたいどの方法でもできるスペースがあります。ほとんど使われていない庭の一角に堆肥を積むことも、堆肥が広がらないように木製の容器をつくることも可能です。アパート住まいや、都会の一軒家に住んでいる人なら、頭を使って斬新な容器をつくることもできるでしょう。さまざまなオンラインの専門ショップでは、都会の農地改革者のためにデザインされた、組み立て済みの容器を販売しています。DIY の才能がある人なら、リサイクル資材(食べ終わったバター容器やコーヒー缶などを思い浮かべてみましょう)でクリエイティブな容器をつくってみてもよいでしょう。容器は理想的な温度に保てるシンクの下や、戸棚の中、ベランダに置くことができます。これといった容器が見つからなければ、根覆いに使う黒ビニールで堆肥の山を覆って、ブロックで押さえておきましょう。このやり方は家庭菜園に理想的です。というのも、どこからでも手を伸ばせて、熊手でめくるのも簡単だからです。

 堆肥づくりを成功させるには、野菜くずやコーヒーかすや草切れなどの窒素豊かな「緑色」の資材に、同量の、おがくずや藁や葉のような、高炭素の「茶色」の資材を寄せ集めたものを足す必要があります。堆肥の山は分解を早め、臭いを除くために、月に 1 回混ぜ合わせるか、切り返しましょう。乾燥がひどくなってきたと感じたら(常に、水を含んだスポンジを絞ったような固さにする必要があります)、ホースで水をやさしく吹きかけましょう。堆肥の山が黒っぽくなってポロポロと崩れ、土のような香りがしたら出来上がりですよ。

 

2️⃣ サポート品種(support Species)を育てる

  サポート品種の栽培は、気候対応農法の非常に重要な点です。サクッと噛みごたえのある野菜とジューシーな果物が常に目標ですが、自然に土を豊かにしながら十分な収穫を得るには意識した行動が必要です。

 ほとんどの自然の生態系においては、複数の異なった品種の植物からなる共同体と共存しないで、単体で育っている植物を眼にすることはないでしょう。共存することで、植物はそれ自体では到底持ち得ない生産能力を発揮するのです。以下は、農場や菜園の生態系でサポート品種を活用する、5  つの重要なメリットです。

 (1) バイオマスの蓄積。サポート品種は、農場の主要農産物回りの土に「叩き切って落とす(chopped and dropped)」 ようにすれば、土をつくるバイオマスを供給してくれます。その後で分解されて、土を豊かにします。

 (2) 窒素固定。多くの場合、農家はサポート品種としてマメ科を利用します。というのもマメ科の根は、根粒バクテリアを引きつける単糖類やその他の化合物を放出するからです。こうしたバクテリアは植物と共生し、共生する中で大気中の窒素を利用します。このバクテリアの働きがなければ、大気中の窒素は植物が使える状態にはならず、炭水化物との交換に利用されることもありません。

 (3) 生きた苗床。多くのサポート品種は、生きた苗床として機能します。傷つきやすい幼苗が畑に植えられたばかりの時、日陰をつくって太陽の強い光から幼苗を守ります。

 (4) 保湿。サポート品種は、蒸発散(地表から大気中への水分の動き。同様に植物の表皮から大気中への水分の動きも指す)を減らして、土と植物の保湿に役立ちます。

 (5) カバークロップの利用。小さな草本植物の多くは、直前に栽培した作物が栄養分を吸収したために痩せた土を再活性し、輪作用カバークロップとして利用できます。

 

 3️⃣ 土地や太陽に逆らわない

 まだ土地を耕したことがなく、はじめて栽培にとりくむのであれば、土地の生態学的可能性を最大にできる方法で菜園をデザインする貴重な機会を手にしています。多くの栽培者は畝を立てる時に、自分の土地の傾斜に注意を払っていません。このことは、不十分な灌漑や、雨水の過度な排水、水分や栄養素の浸出につながります。

 畝立てを計画する時は、畝を土地の傾斜に垂直に立てることに注意しておきましょう。そうすれば、作物を植えたそれぞれの畝回りに、雨水ができるだけ長い距離を流れるようにできます。時間および表土面積両方の観点から、雨水と土の接触を最大にすることができます。この方法で雨水の流れる速さをゆるめたり、流れをとめたり、溝に流れるようにしたり、溜めたりすることは、作物が育つ場所に栄養分をとどめ、近隣の水路に水が流れ込まないようにすることにもなります。高価な測量器具を使って傾斜を正確に測る方法もありますが、家庭菜園をしている人向けの簡単な器具があります。エーフレーム [A-frame:3 つの支柱を「A」形に組み合わせ、中央におもりをつけた紐をつるして水平を見る道具]や、バニャップ水準器[bunyip level:水の入ったビニールホースの両端を、それぞれ目盛りをふった背の高い支柱にくくりつけて、ホースの中の水の高さで傾斜を測る道具]などです。こうした道具を使えば簡単に傾斜がわかります。

 傾斜だけでなく、自分の区画にどれだけ日照があるかに注意して、それに応じて栽培計画を立てれば、見合った効果が得られます。日照をそこまで必要としない作物には、木を利用して陰をつくりましょう。太陽の道筋にも注意しましょう。そうすれば、作物の種類によって適切な日照が確保できる菜園をデザインでき、栽培エリアを最大にすることができます。。。

 

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