もっと賢い農場の段取り

自分の土地で労せず賢く働くのに役立つよう農場のインフラを設定しよう。

 

文: ベン・ハートマン (Ben Hartman)

翻訳:大本 清子

どの農場であれ、処理して、保管して、立ち入りやすくするスペースを整えるために作るべき8つのインフラがある。Photo by Ben Hartman

 小さな農場に引っ越した後そんなに経たずに、私たちは販売用の野菜の栽培を開始する前に、やっておかなくてはいけないことがあることに気づきました。納屋の柱は傾いていて支えが必要でした。古いニワトリ小屋に塗られていたペンキは完全に剥がれ、木肌が見えました。井戸はありましたが、給水栓はありませんでした。納屋は家畜を飼うことはできましたが、収穫野菜の作業をするようにはなっていませんでした。

 そこで最初の1年は、農場のインフラ構築 -ビニールハウスを建て、排水管を埋設し、(納屋を)野菜の作業所に改修し、車道を作り、それ無しでは農場をまとめられないことをしました。早いうちに農場のインフラ作りに時間を費やし、その先の長い年月は順調に農産物の販売ができるようにしました。

 私たちの経験から、どんな農場であれ下記の8つのインフラを整えることをお勧めします。

1. 作業所

 小規模な農園はガレージ程度の大きさの作業所が必要です。明るく、清潔を保ちやすくするのがいいでしょう。理想を言えば、壁はパネルが貼られていて、ホースで洗い流せるようにしていて、床はモップで拭きやすい様に塗装されていると良いでしょう。もし冬の間、農産物を生産することを考えているなら、断熱と暖房が必要になるでしょう。

 私たちの作業所は搾乳をする場所でした。ここを買った時、11個の仕切り棒を引き抜いて、そこに飼い葉用の桶を敷きました。その後、断熱をして壁を塗り、小さなガスヒーターを入れました。作業所は、収穫した野菜を桶で洗い、顧客用のボックスに野菜を詰める作業に使っています。

 作業所の中には、石鹸を置いた、手を洗うためのシンクがあります。作業者には食べ物を扱う前に、ここで手を洗ってもらっています。

 冬に洗い湯を温めるため、小さな電気湯沸かし器を使用していて、また4連のシンク(1つのシンクは奥行き50cm、幅70cm、深さ45cmです)ではベビーリーフやスプラウトを洗います。シンクの代わりに、生産者の中には頑丈な飼い葉用の桶を使ったり、ホウロウの浴槽を使う人までいます。私たちのシンクの上には、シンクに水を素早く貯められるように、短い園芸用のホースが取り付けられた、3cmの送水管が走っています。床にある下水管は排水した水を、埋設した10cmのプラスチック製の排水管を通して排水します。

 シンクの先には野菜の水切りのための2台のスピナーがあります(古い洗濯機です)。そしてシンクの後ろには75cm×180cmのステンレス製の準備台と、45cmの足踏み式のバッグ・シーラーがあります。テーブルの後ろの棚には包装資材とボロ布が収納されています。私たちはシンクとテーブルを廃業したバーから購入しました。バッグ・シーラーは梱包資材の会社、ユーライン (uline)  製です。洗濯機は家庭から出たものをタダで入手しました。故障してるからなのですが、私たちは脱水が出来さえすれば良かったのです。

 作業所から廊下を挟んだ向かいに磁石が付くホワイトボードがあり、注文数を集計したり、作業の完了具合を表示するために、カラーマグネットを使ってます。ホワイトボードの下のテーブルには収穫の際に使うものを置いています。ニトリル手袋、長さ60cm、幅1cmの野菜を束ねるツイストタイ、ケールやレタスをまとめるための、サイズ64の輪ゴム、大袋に貼る縦横10cmのラベルシール、収納ボックスに貼る5cm幅の色つきのマスキングテープと、カップに入れたマーカーです。

2. スプレー・ステーション

 ニンジンやラディッシュその他の収穫物をシャワーしながら洗うため、小さなガレージくらいのスペースが必要になるでしょう。年の始めや年の終りも栽培するなら、壁が欲しくなるでしょうが、真冬に栽培をしないなら野外の差し掛け小屋で十分です。私たちのスプレー・ステーションは、納屋に追加した差し掛け小屋で、作業所を出た所にあります。ビニールハウスを作った時に余った資材を使って、天候によって巻き上げたり下げたりできる、カーテンを付けました。

 シャワー用テーブルに加え、差し掛け小屋は収穫用の大型手提げ袋と木箱を保管しています。私たちが差し掛け小屋を作った時、小屋の角にある排水溜まりに向かって傾斜するようにセメントを流しました。そこから水は10cmの排水管を通って外に出ます。私たちはレストランで使われていたステンレス製の棚2つを、シャワーをする台として使っていました。以前はこの台を支える足として、木箱を使っていましたが、この棚をチェーンで吊るせばいいのでは?という、素人の改良案で、今ではチェーンの下で手早く汚れをとり除けるようになっています。

 一つ最近変えたのは、口径2cmのホースを吊るすことです。これでつまづかなくなり、掃除も早く終わり、人間工学的に良い配置で洗えるようになりました。井戸のメンテナンスの業者に来てもらった後、私たちは圧力を高めるために地下の水道管を口径2cmから3cmに大きくしました。私たちは真鍮の遮断バルブをシャワーのノズルとして使っています。差し掛け小屋で大型手提げ袋と木箱をシャワーで洗うようになってから、それらはそこで保管しています。木箱の積み置き場です。私たちは大型手提げ袋を乾くまでピラミット状に積み上げ、それから畳んでいます。

3. 冷蔵室

 多くの生産農家は2つの冷蔵保存場所を用意しています。1つは13℃から16℃に保つ所で、もう1つは2℃から4℃に保てる場所です。

 私たちは13℃から16℃の部屋をトマトルームと呼んでいます。私たちは夏の暑い日、この場所でトマトやバジルを箱に入れて保管し、秋に収穫した貯蔵用の野菜を保管しています。部屋は1.8m×3.4mで、標準のウィンド型のエアコン付きです。2℃から4℃の冷蔵室を設置するため、レストランの解体事業者から、中古の2.4m×2.4mのウォークインの(人が立って入ることができる)クーラーボックスを買いました。クールボット (CoolBot) の外付けサーモスタットで温度を調整するエアコンを取り付けるため、奥面に穴を開けました。クールボットとAC(直流)の組み合わせは2つの点でコストを下げます。一般的なウォークインの冷蔵室のコンデンサーとエバポレーターよりずっと安いですし、交流の方が使うエネルギーが少ないのです。ウォークイン冷蔵室の代わりは、自分で高気密高断熱の部屋を作ることです。私たちはこの冷蔵室を使って、トマトとバジル以外の生産物を貯蔵しています。冬には電気式の暖房を入れて氷点下を少し上回るようにしています。

 この2つの小さなエアコン付きの部屋は小さな農場には十分です。農場がもっと大きくなるにつれて、特定の生産物に適した温度調節幅のある冷蔵室を増やしていくことができるでしょう。

4. 農具庫

 もう1つ大切な建物が農具庫です(同じく小さなガレージサイズです)。農機や備品のストックを保管するためです。この建物には、暖房や断熱は不要です。

 農具庫を作るため、私たちは古い鶏舎の一部を壁で区切りました。内部には4つの農機と農具を保管しています。トラクター、手押しのトラクター(これは冬が温暖な気候では必要ありません)、ジャング (Jang) の種まき機、そして紙製育苗ポットの移植機です。しっかりと巻かれた被覆資材を置いている棚が2つ、その他の棚には防水シートや灌漑設備の備品、支柱用具を置いてます。部屋の片隅には用具を研いだり取っ手を直したりする、修理台を備えました。私たちの農場には道具があまりないので、小さいスペースが適当です。

 お金をかけない農具庫の代替案は、温室の一部を利用して、農機具を保管することです。でも毎年3月くらいになると、スペースがないことを悔しく思うことになるかもしれません。そこで何が育てられるかを考えてみて下さい!

5. ガソリン庫

 ガソリンやオイル、他の可燃性の液体を保管するため、農家は小さな倉庫を確保することをお勧めします。これらは匂いがあり、土壌を汚染し、床にシミを残します。そしてもちろん、燃え上がる可能性があります。これらの液体を離しておく場所が必要です。私たちは208ℓのドラム缶を2つ置いてます(1つはディーゼル用で、1つはガソリン用です)。私たちはこれを屋外トイレくらいの大きさの倉庫に、ボロ布、エンジンオイル、その他、トラクターエンジンとガソリンエンジン関連の液体と一緒に入れています。この倉庫は他の建物と6m離れていて、安全性と防犯のために鍵がかけられるようになっています。

6. がらくた置き場

 毎年春と秋に、私たちは農具を分類し、価値がないもの(私たちの生産システムに合わないもの)を捨てようと、地域の委託オークションに出してしまうまでの間、がらくた置き場に置いておきます。このがらくた置き場のおかげで、私たちは余計なものを取り除き、仕事に集中することができます。間違って置いてしまっても、置き場に行って取り出すことができます。道具が完全に不要になるまで、オークションを1、2回見送ることもあります。私たちは、この置き場を定期的にいらなくなった物を吸い込む掃除機だと思っています。この目的のために私たちは、納屋の一角を縦横3.7mの壁で区切って使っています。

7. 灌漑システム

 本格的な市場向け菜園では豊かな水源が必要になります。以前の農場では、近くの用水路から水を引くのに運搬可能なガソリンポンプを使っていました。先端がプラスチックの直径7.5cmのホースが用水路に置かれていました。粒子状の物質を取り除く砂ろ過器のシステムを通して水が流されていました。これと同じやり方を考えているなら、必ずポンプは農園側よりも、用水路側の近くに置いてください。ポンプは吸込能力より吐出能力の方が高いからです。

 今の農場は、家庭用と農場用に直径1.2mの井戸に頼っています。私たちは十分な容量にするため2つの圧力タンク(114ℓと227ℓ)で全てを賄っています。私たちは地下120cmに給水栓に繋がる直径31mmの水道を敷いています。凍結防止型の給水栓は直径38mmで、標準的な19mmや25mmのパイプよりも、水量を増やすために太くなっています。水は水圧が0.4MPaに保たれています。インターネット上にたくさんのチャートがあるので、あなたに必要な、井戸の直径やポンプやタンクのサイズや給水管の直径を、適切に選ぶのに役立つでしょう。しかし、システムを設計する時には専門の業者に相談することをお勧めします。

 私たちの灌漑設備は2つあります。ドリップテープとオーバーヘッド・スプリンクラーです。ケール、トマト、唐辛子、ズッキーニ、キュウリなど、ビニールマルチや防草シートを張って育てている野菜には、予め散水孔が開けられているドリップテープを使います。ドリップテープは少ない水で、常に土壌を湿らせ、作物の葉を濡らしません。このことは特にトマトで大切です。ドリップテープの部品は、遠くまで水を運ぶのに十分な5cmのメインチューブと調節弁、そして8mmのドリップテープから成っています。私たちはドリップテープの先にキャップは付けずに、テープの先に1つか2つの結び目を作ってとめます。私たちはこれを鉱物性の沈着物で詰まるまで使用します。たいてい2期が過ぎると詰まります。次に使うまでの間、私たちはテープをしっかり巻いて桶に入れて保管します。漏れは直線の継手で直しますが、2箇所以上から漏れるようになれば取り替えます。

 私たちは(ビニールマルチや防草シートを被せていない)むきだしの土で育つ作物にはオーバーヘッド・スプリンクラーを使います。こちらの方がドリップテープよりも早く設置できるからです。ヘッド部分は、望みの液滴直径 (droplet size) によってノズルの取り替えが可能です。私たちはミディアムサイズのノズルにしています。経験上、直径が大きくなると飛沫が大きくなり、蒔いた種を動かしてしまい、小さいノズルから出る飛沫は風に飛ばされます。

 最初、オービット(Orbit)製のような、園芸用のホースとスプリンクラー用のステップスパイク据え付け具を、私たちのオーバーヘッド・スプリンクラーに使っていました。その後、2cmのPVCパイプと継手でライザーを組み立てました。私たちの物は1.2mで、水やりをして育てている作物の中で、一番背が高い作物より少し高くなっています。最後にセニンガー (Senninger) のエクセル・ウォブラー (Xcel-Wobbler) のヘッドを取り付けました。冬になるとヘッドを外し、開口部に蜘蛛が巣を張るのを防ぐために蓋つきのバケツに入れて保管します。給水栓とライザーを繋ぐのに、私たちの栽培区画の端に置いている直径2cmの業務用のホースを使っています。給水栓をホースに取り付けるために私はクイック・コネクト・フィッティングを使っています。ビニールのチューブは固くて動かしにくいですが、安いです。

 私たちの灌漑システムの最後がタイマーです。私たちはプロ用のガルコン (Galcon) 製のタイマーを使っています。最初の1つは、シンプルな2つのダイアルが付いた一般的な継続的灌漑に使用するものです。1つめのダイアルで継続時間を選びます(2分から9時間まで)、もう片方のダイアルは頻度(3時間おきから2週間おきまで)を選べます。設定はあっという間に変えられます。液晶ディスプレイが無いからです。そして長持ちします。2番目のものは、毎日または週1回の設定ができるタイマーです。こちらはもっと細かく設定ができますが、簡単には使いこなせません。これは種を直播きする時用のものです。

8. 車が通れる道

 農場のインフラ構築の最後は、よく見落とされがちな車が通れる道です。コンクリート製の立派なものは必要ありませんが、生産現場や農場の建物に出入りする必要があるはずです。私たちは温室の前を通る道を作り、作業小屋まで行けるようにしました。1年のどの時期にも車でそこへ行けますし、大量の肥やしや堆肥を積んだトラックで、立ち往生することなく現場までたどり着くこともできます。道を作るにあたり、No.2 (7.5cmから10cm) の石灰石を基礎に15cmの厚さに敷き、その上にNo.72 (2.5cm以下 )の石灰石を5cm厚で重ねました。

 

たのしい暮らしをつくるマザーアースニューズ

購読登録はこちらからどうぞ

 

A Smart Setup for Your Farm

By Ben Hartman | October/November 2018