あなたの敷地にアグロフォレストリーを

マザーアースニューズ 自然 自給 DIY

農法に樹木を取り入れることで、農場の効率と土壌の質を向上させられる。

文:デイル・ストリックラー(Dale Strickler)

翻訳校正:沓名 輝政

 以前、リンゴと梨の木が2本ずつある庭に隣接した牧草地を借りたことがあります。毎年秋に果実が熟すと、負荷のかかった木は傷のある果実を早めに落としてしまうのです。家の人は落ちた実の周りの草刈りを嫌がり、私の牛はフェンスを越えて転がった実を食べるのが好きだったので、牛が隣接したパドックにいるとき、私は風で落ちた実をフェンスの向こうに放り投げていました。また、ピックアップの荷台に実を満載にして、牛のいる場所まで運んでいくこともありました。庭をきれいにするのと同時に、牛にご褒美を与えるという、一挙両得の方法でした。

 しかし、それは時間がかかり、骨の折れる仕事でもありました。そこで私は、このような作業をする代わりに、リンゴや梨の木を、実が必要な場所、つまり牧草地に植えてみたらどうだろうかと考えました。夏には日陰をつくり、秋には実をつけ、冬には落ち葉を飼料として与えられるのです。牛の群れ全体に4本の木を植えるのではなく、1エーカーあたり30~40本の木を、9~12m 間隔で植えられるのです。そうすれば、たくさんの牛に餌を与えることができます。

 この発想は新しいものではないのです。実は、大学時代に読んだ本が、農業の未来に対する私の考えを完全に変えてしまったのです。地理学者のJ・ラッセル・スミスが書いた『Tree Crops』という本で、彼は世界中を旅して、さまざまな地域の土壌と社会の状況を記録しています。彼は、一年草の穀物作物による土壌侵食の惨状と、それとは対照的に、人間や家畜が収穫する実を落とす樹木による食料システムを観察しました。スミスは、樹木を利用した社会は豊かで長寿であり、穀物栽培のような骨の折れる労働を必要としないことに気づきました。また、樹木によって土壌が保持され、土地を荒らすような耕作も必要なかったのです。

 もし、9,500万エーカー(3,800億平米)のトウモロコシと9,000万エーカー(3,600億平米)の大豆の代わりに、草や木が混在し、家畜が自由に拾える飼料が落ちていたら、この国はどうなっていたか想像してみてください。

アグロフォレストリーの概要

 アグロフォレストリーは、林業から始めると説明しやすいかもしれません。林業は本来、木材の収穫を目的とした木の栽培のことです。多くの森林地帯では、林業が唯一の事業であることが多いです。一方、アグロフォレストリーとは、牧草地や作物などの他の農業形態と一体化した樹木の栽培のことです。

 アグロフォレストリーには、林業、畜産業、農作物と いった単一目的のために土地を利用するよりも、多くの利点があるのです。

植生は何層にもわたって、また長い季節にわたって太陽光を取り込み、生産性を高め、最終的にはより良い土壌を提供できる。

樹冠は、日差しや風から下の作物や動物を保護できる。

木の根とその下にある草本植物は、風や水による土壌侵食を軽減できる(45ページ下のイラストをご参照)。

植物の多様性を高めると、病気や虫によって作物が全滅する危険性を減らせる。同時に、その多様性によって、より幅広い種類の良性の昆虫が集まり、その昆虫が捕食者を呼び寄せ、その捕食者が将来の害虫を駆除できる。

1つの事業が低価格になるリスクは減り、ポートフォリオはよりバランスの取れたものになる。

作物の根の多様性、光合成の期間の延長と速度の向上により、森林、草地、または作物地と比較して、土壌中の炭素隔離率を向上できる。

アグロフォレストリーの基本的な形態

水辺の緩衝帯

 水辺の緩衝帯は、小川や河川の土手を土壌浸食から守ることで、土壌の損失を防ぐだけでなく、土粒子、農薬、肥料による水質汚染の量を減らすことができます。適切に設計された水辺の緩衝帯は、土壌と水を完全に保護するために、樹木、低木、草本植物で構成されている必要があります(上図ご参照)。

 シロップ用のカエデ、ナッツや木材用のクルミやピーカンなど、収穫できる樹種を選ぶとよいでしょう。ブラックウォールナットやピーカンなど、価値の高い木の多くは、水辺に自然に生息しています。

防風林

 防風林(上図をご参照)は、家屋、作物、家畜を守るために、さまざまな形で利用できます。防風林の設計(位置、木の間隔、列の数)は、目的によって異なります。

 家の保護。冷たい風と冬の雪がある地域では、防風林は雪を閉じ込め、家の周りの風速を減らし、家の暖房費を削減します。。。

 

* 今号の記事全文は2月末までのご注文でご利用いただけます。こちらからどうぞ

* 今号の和訳抜粋サンプルはこちらからどうぞ

* 和訳全文は1年おきに発行される和訳電子版のバックナンバーでお楽しみください