ヨーグルトの全て

マザーアースニューズ 食 社会

牛乳、微生物、温かさ、そして時間。これらがあれば素 晴らしく美味しいあなた手作りの有用微生物の入った ヨーグルトができる。

 

文:ジャナクリス・コールドウェル(Gianaclis Caldwell)

写真:カルメン・トロッサー( Carmen Troesser)

翻訳:津田 嘉江

 

ヨーグルトほど多くの再発明を経た食品は考えられないでしょう。1960 年代から 70 年代には「ヒッピーの食べ物」でした。中東とアジアの多くの国で は、長きにわたり健康と長寿につながる定番です。数千年前には人類の進化を 後押しした独特な発酵食品のひとつでした。そして現代、21 世紀では平均的な 食品店で、数えきれないほどのバージョン、スタイル、風味のヨーグルトを見つけることができます。 しかし、全てのマーケティングの誇大広告の背後にはシンプルな食べ物があります。実際、ヨーグルトが祖先のお皿 (または板のようなもの)にもたらしたのは、そのシンプルさです。牛乳、微生物、温かさと時間。適した環境で、 ヨーグルトはまさに自身をなすのです。

 

牛乳と微生物のマリアージュ

牛乳は、空気中、表面、土中、水中など私たちを取り巻くどこにでもいる小さな生命の多くをひきつける磁石です。 牛乳はこれら多くの細菌、酵母、カビ、そしてウイルスにさえも、その成長のための完全な栄養を与えます。不要な病 原菌も牛乳中で成長しますが、幸運なことに、牛乳を好む成長の早い細菌の大部分は無害で有用でさえあります。こ れらの微生物を理解することは、美味しくて安全なヨーグルトの入った食べ物を作るのに不可欠です。 ヨーグルトに特徴的な味、香りをもたらし、しばしばチーズを作る微生物とは異なる体に良い効果をもたらす微生 物は通常華氏 100 度から 122 度[37.8~50.0°C]という高い温度でよく育ちます。対照的に、チーズは華氏 80 度から 90 度[26.7~32.2°C]くらいで発酵します。 店の棚に並んでいるヨーグルトの箱に貼られた原材料表示のラベルを見ると、サーモフィルス菌(学名:S. (Strep- tococcus)thermophilus)とブルガリクス菌(学名:L.(Lactobacillus delbrueckii subsp.)bulgaricus)がリストの最初にあ げられています。この二つの細菌は牛乳を発酵させる際に共生的に働きます。各々がお互いを助け、どちらも最終的な 製品には不可欠です。 温かい牛乳に投入されたら、微生物はラクトース(乳糖)をグルコースとガラクトースの二つの単糖に分解する働き をします。これらはさらに微生物のエネルギー源と副産物に分解されます。ヨーグルトで一番大事な副産物は乳酸で す。十分な量の酸が生産されると乳タンパクが凝固し、カスタードに似たカード(凝乳)を生じます。

基本的な発酵微生物以外にも、あまり知られていない微生物が多数使用され て、微妙な香り、食感、風味とプロバイオティクス[十分量を摂取したときに宿主に 有益な効果を与える生きた微生物(FAO/WHO の定義)]の利点がもたらされる可能性が あります。全てのヨーグルト菌がプロバイオティクスというわけではありませ んが!(「プロバイオティクス」という言葉は、世界保健機構によって定義さ れているように、微生物が既知の健康上の利点をもたらす場合にのみ使われま す。)プロバイオティクスを消費するためにヨーグルトを食べたり作ったりす るなら、これらのタイプの微生物が原材料表示または自分で作るために使用す る種菌に含まれていることを確認して下さい。

 

お熱いのがお好き

熱はヨーグルトを作る時に二つの役割を果たします。それは適切な発酵の段 階を設定し、発酵が起こる最適な温度を供給することです。

ヨーグルトの作り方の多くは、牛乳を少なくとも華氏 180 度[82.2°C]に熱し、その温度を 10 分かそれ以上維持す る手順を含みます。生乳の愛好者は最初この過程で尻込みする可能性があります。これにより、牛乳は、通常の低音 殺菌温度を超えます。ではなぜこの過程が含まれるのでしょうか?主な理由は二つです。第一に、牛乳中の他の微生 物をほぼ完全に殺菌し、ヨーグルト菌にとってすばやく成長し最大量の副産物を生成するための真っ白なキャンバスを 作り出します。第二に、高熱は牛乳中のあるタンパクを変性させ、最終的に濃厚な食感を作り出す要因となります。 「ホエイタンパク」として知られるこれらのタンパクは、通常カードには含まれず、代わりに凝固過程の水分、ホエイ に残ります。しかし、高熱にさらされた時、ホエイタンパクは変性し他のタンパク(カゼイン)に付着してカードの一 部になります。ヨーグルトの水気を切らなくても、変性したホエイタンパクはヨーグルトの濃厚さを増す助けとなりま す。さらに、その後ホエイがヨーグルトから除かれる場合、タンパクの含有量を増やすのに役立ちます。 凝固が完了して、求める風味が得られるまでヨーグルトミルクを温かい温度に保つ培養は、時間と温度の両方で変 化する可能性があります。私の著書『Homemade Yogurt & Kefir ( 37 ページを参照)』に、この例であるいくつかのレ シピと、自分にぴったりのレシピを選択するためのヒントがあります。しかし、基本的に、菌を培養または接種した 牛乳には、温度を華氏 100 ~ 125 度[37.7~51.7°C]に維持できる場所が必要であり、110 度[43.3°C]がほとんどの 作り手に適しています。より低い温度ほど、より長い発酵が必要になります。例えば、華氏 125 度[51.7°C]ではおよ そ 4 時間かかります。華氏 100 度[37.7°C]では 12 から 18 時間かかるでしょう。 微妙な味と食感は、予熱過程、培養時間と培養温度を微調整することから生じます。とはいえ、もし家でヨーグル トを作ろうと決めたなら、この事実にあまりとらわれないで下さい。発酵が起こることを忘れないで下さい。温かい 場所(温湿布、パイロットライト付きオーブン、お湯入りの瓶を入れたクーラーボックス、または高級ヨーグルトメー カー)を用意して、待ち、味見し、そして学びます。

 

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