野生動物の歩道橋

マザーアースニューズ 環境保護 動物

動物たちが車の通行に阻まれることなく、行きたいところへ行けるように「野生動物用の橋」を造る取り組みが増えている。

翻訳:山下 香子

 

野生動物が渡り歩く際に人間の都合で建設された幹線道路に行く手を阻まれるということが米国のあちらこちらで起きています。他の生き物の移動を妨げ続けてきたのはほかでもない私たち人間だという認識が広がるなかで、自然保護NPOや運輸関係の組織団体によって、動物たちが車の通行に阻まれることなく、行きたいところへ行けるように「野生動物用の橋」を造る取り組みが増えています。動物用の道路横断施設は、カニのための地下通路から陸ガメのためのトンネルまで多種多様。米国運輸省の下部機関である連邦道路管理局の推定では、毎年100万~200万件の野生動物と自動車の衝突事故が発生しているといいます。野生動物のための横断施設が整備されれば、動物と人間双方の安全が守られるほか、事故による経済的な損害を減らしたり、動物たちが移動の自由を取り戻したり、切断された生息地を再びつなぎ合わせたりすることが可能になります。

 そうした通路のひとつ、キーチェラス湖野生動物専用高架橋 (Keechelus Lake Wildlife Overcrossing) が太平洋岸北西部で完成間近となっています。ワシントン州のスノコルミー山道(Snoqualmie Pass)近くを走る、6車線の州間高速道路90号線に架かる橋です。ワシントン州で州間高速道路または幹線道路の上を渡る野生動物専用通路としては初めて造られるものであり、また、北米最大の野生動物用の橋となります。車が通り抜ける2つのコンクリート製のアーチ道の上に幅約20メートルの土の通路が敷設される計画です。アカシカ、クマ、ピューマなどの大型哺乳動物がカスケード山脈の南部から北部へ、あるいは北部から南部へ安全に行き来できるようになります。橋の両端に約2.4メートルの壁を設けることで動物たちを橋を通るように誘導するとともに車の走行音を遮ります。また、ジリスやサンショウウオのような比較的小さな生き物にも高架橋を利用させたいと考えるワシントン州運輸省(WSDOT)は、この地域に自生する植物を自生している組み合わせのまま、橋の上全体に植える計画を進めています。

 WSDOT はいくつもの政府機関、市や群の当局、地域活動グループと協議して約24キロメートルにわたって伸びる90号線回廊地帯 [北米大陸を横断する全長5000キロ近くの90号線の内、カスケード山脈を横切って野生生物の南北への移動を遮っている部分] を改善する長期的な構想を練りました。この高架橋はそのプロジェクトの一環として建設されています。野生動物が90号線を越えたりくぐり抜けたりするための設備としては、ほかの高架橋、ガード下の通路、道路下の水路といったものがまだいくつか着工を待っています。

 

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Ambitious Wildlife Overcrossing Completed in Washington State

By Amanda Sorell | April/May 2019