農場の家畜。全体的な手法。

マザーアースニューズ  家

世界中の小規模農家が、家畜を農場経営に取り入れ る創造的な方法をあみだしている。

 

文:メレディス・リー(Meredith Leigh)

翻訳:浅野 綾子

 

 世界中で、土地と文化に調和させながら家畜を管理する方法を実際に やってみせている人たちがいます。そうした人たちの革新的な方法を認 めて取り入れることが、工業的畜産の問題を軽減するのに鍵となるス テップです。小規模生産者であるか大規模生産者であるかを問わず、すでに検証済みの生産方法からインスピレーションを得られるでしょう。こうした生産方法は、ゴミや農業廃水、土地 の浸食、ガスの排出を減らしながら、家畜の健康を向上させます。これらの実践方法を取り入れることは、収入やビ ジネス効率の強化にもつながることでしょう。 革新的な方法を実践する農家は、家畜をその他の農業事業から切り離さず、むしろ多くの土地管理活動と一体化さ せています。家畜を柵で囲う時でさえも、家畜が土地に害を与えることにはなりません。このことは西洋の畜産と明 らかに異なる考え方を示しています。西洋の畜産では、家畜は畑や森林、食料供給源から切り離されます。工業的な飼 育方法では家畜はひとつの場所にまとめられ、エサはトラックで運ばれます。エサは、監禁状態によって生まれる諸 条件に合うように高度に調合されています。西洋的な飼育方法で行くと、集中畜産でえられた効率は、家畜のエサや りとその結果生まれるゴミや土地の浸食、農業廃水の対処に必要となる手間や化石燃料で、結果として失われること になります。しかしながら、家畜は管理された自然体系を発展させて、一層効果的にし、注意を向けさえすれば、こ の例を数多く増やして改良できるのです。

 

スペインの「デヘサ(Dehesas)」

 森林放牧(Silvopasture)は中世から活用されており、その例として、オークが点在する牧草地で家畜を放牧するス ペインの「デヘサ」という生産方法があります。デヘサは、さまざまな食料や必要な繊維を供給してくれるサバンナの 風景を模倣しています。生産者は家畜の肉や乳、その他の生産物のみならず、オークの木からとれるコルクの販売や、 狩猟権、草の生える低木層からとれるキノコやハーブ、その他の植物を元にした生産物から利益を得ています。現代の 例は、ミネソタ州の 100 エーカー(40 ヘクタール)の農場で行われている、家禽と多年生植物の生産体制である「メ イン・ストリート・プロジェクト(Main Street Project)」に見出すことができます。この団体はニワトリをエルダーベ リーやヘーゼルナッツ、ひまわり、トウモロコシ、その他の一年生作物とあわせて放牧しています。この生産体制で卵や肉、医薬品用の植物、苗を生産する一方、土壌の改善や有色人種の生産者向 けの訓練支援センターの運営もしています。 スウェイルと飼料の土手を取り入れるのは、家畜生産を農場風景に溶け込ま せるもう一つのやり方です。スウェイルとは、土地のろ過機能を向上させる溜 池、もしくは水路のことです。このスウェイルまわりや、スウェイルのゆるや かな斜面上の植生は、保水性があることから一般に豊かで多様性に富んでいま す。生産者は、スウェイルの沿道(水が水路に流れ込む長い縁)に生える植物 群落を管理して、果樹やハーブ、医薬品用の植物を育てることができます。生 産者がよく行うのはこの沿道に飼料の土手をつくり、家畜用の飼料を育てるこ とです。たとえばハンノキですが、ヒツジ放牧の牧草地で、スウェイルの沿道に植えられることがあります。そうする ことで刈った葉や小枝をヒツジに投げ与え、もしくは厳しい天候で収容されているヒツジのところまで運ぶことがで きます。管理された森林、森林放牧地で家畜を飼育する生産者は、「木質飼料(tree hay)」もつくります。これは高 い栄養価がぎっしり詰まった木の葉を刈って貯蔵したものです。同じ木から果樹や木の実、薪がとれ、キノコや低木層 に育つ作物には陰をつくり、メープルシロップのような樹液を元にした生産物もとれます。

 

木や葉の飼料でヤギのエサ(ケニヤ)

 木や葉の飼料を最大限活用することは、「LOFODA-G-ミール(「Locally Formulated Dairy Goat Meal: 地域調合の乳 用ヤギのエサ」の頭文字をとったもの)」の話に実例があります。退職した教師であり農家のジョー・オーコ(Joe Ouko)は、ケニヤ南西部にあるオーコの地元で多くの人たちを巻き込んだ社会事業を通し、この「LOFODA-G ミー ル」を開発するプロジェクトを主導していました。オーコと彼の同僚は、この「刈って運ぶ」やり方を、環境的に持 続可能で文化的にもふさわしい、さらには家畜の栄養と乳の生産を最大限にする飼育方法へと発展させました。 「イノベーションは必要があって起こりました。私の地域では、雨がほとんど降らないのです」とオーコは言います。 干ばつが起こって、木や植物からの飼料が不足する時「小枝を切るという古くからの習わしは、ほとんど意味をなさ なくなりました。生きている木から飼料を得るのは、再生を難しくするのです」。干ばつがひどくなり、飼料の奪い 合いが増えました。オーコは言います。「二つのことに気づきました。雨季に木の新芽だけを切ると、よく再生する こと。それからヤギは緑色の乾燥した葉を好むということです」。オーコは新芽を採集して陰干しし、貯蔵用の飼料 をつくりました。 雨季に採集した木から取った飼料を備蓄して、乾期を通した乳用ヤギのエサにできるとわかり、オーコはプロジェ クトの提案に手を伸ばしました。農家のイノベーションを支援する国際的ネットワークの「Prolinnova(PROmoting Local INNOVAtion:地域のイノベーションを促進する)」の助けを借りて、オーコは関係者と力を合わせてこのアイデ アを改良したり、支援を利用したり、借入金の調達をしたりしました。「Prolinnova ケニヤのパートナーは、私たちが 農家主導の共同研究と呼ぶ研究に、多くの時間とエネルギーをかけてきました」というのは、Prolinnova の国際サポー トチームのメンバーであるチェシャ・ウェッタシンハ(Chesha Wettasinha)です。 ひとつの大きな進展は飼料用粉砕機を入手できることになったことで、それによってオーコは乾燥した飼料を粉砕し て貯蔵容量を上げることができました。。。

 

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