自然の池でアクアポニックス

野菜の畑を池に浮かべ、魚のいる池の養分を利用しよう。

文:ロバート・ペルビス (Robert Pavlis)

翻訳:大本 清子 

 

裏庭の池にある、筏(いかだ)の上で野菜を育てることを想像してみてください。池の水が野菜の培地であるなら、水遣りや除草や肥料を撒く必要はなくなるでしょう。池は土壌よりも温度が低く保てるので、レタスのような冷涼な気候の作物をより長く収穫できます。魚のいる池はアクアポニックスの野菜に役立つ、自然の栄養源を提供してくれます。池に浮いてる野菜は食物を提供してくれるだけではありません。藻類の増殖に必要な養分を消費し、池の藻類を低いレベルに抑えてくれます。

 

アクアポニックスの歴史

 植物の栽培と魚の養殖を同時に行うことは、けっして新しいことではありません。長い間、社会は食べ物を湖や川で生産してきました。アズテカ族はチナンパスという大きな人口の島と半島を造り、そこで唐辛子、カボチャ、トウモロコシ、トマト、豆だけでなく、木も育てていました。現代のイラクで今でもマダン族は家や、それどころか会議場が乗せられるくらい大きな筏で食べ物を育てています。

 水上で食べ物を育てるのは理にかなっています。水界生態系は水分と作物に必要な養分の全てを提供し、また土壌にいる害虫を排除できます。作物は藻類を寄せ付けず、魚に隠れ場を与えます。こういった利点や自然水系で作物を育てるという長い歴史があるにもかかわらず、この発想が自宅の裏庭の池に使われることは、めったにありません。

 

池の養分

 魚の排泄物や死んだ有機物が分解されると池には養分が自然と蓄積されます。魚の健康や作物の成長に一番大切な養分である窒素は、池を通して多種の分解者の助けによって循環します。これがどのように働くかの例をスライドショーの図で見てください。

 死んだ動物や作物の残さといった有機物は池に蓄積されます。するとバクテリアが有機物を分解し始めます。最初の分解で魚にとって非常に毒性の強い化学物質、アンモニアが作られます。幸運なことに、バクテリアはアンモニアを亜硝酸塩にも変えます。次にそれを硝酸塩にしますが、この2つは魚にとって毒ではありません。窒素はいくらか大気中に排出されます。しかしほとんどは成長する作物によって再度使われるまで、硝酸塩として水中に留まります。

 藻類は他の植物に比べ、成長するために多くの硝酸塩を必要とします。そこで藻類の繁殖を抑える要は、水中の硝酸塩の量を抑制することです。自然の池では大抵これを水中や岸辺の観葉植物などが行っています。観葉植物の代わりに池の水で野菜を育ててみましょう。藻類の繁殖を抑えるだけではなく食卓に食べ物を提供する働きまでしてくれるでしょう。

 

なぜ池で育てるのか?

 現在、ハイドロポニックスは商業用のレタスやトマトといった野菜を育てる一般的な方法になっています。ハイドロポニックスでは作物の根は、養分が入った水の中に浸かっていますが、枝葉は一般通り、空気に触れて成長します。

 商業用のハイドロポニックスに対して、池はどうでしょうか。池の水上に植物を浮かせることができれば、実際にハイドロポニックスと同じように育っていきますが、一点大きな違いがあります。池に養分をやらなくてよいのです。魚、虫、バクテリア、そして枯れた植物が養分となるからです。

 商業用のハイドロポニックスのシステムは、どちらかというと複雑です。作物の根にポンプで水を送り、生産性を最大化するために酸素と養分のレベルを検査するための機器を使用します。こういったもの全ては池で行うハイドロポニックでは必要ないでしょう。作物を固定するための簡単な造りの筏が必要なだけです。

 

アクアポニックスのシステムに合う作物を選ぶ 

 アクアポニックスでは野菜の根はほとんどが、土ではなく水の中に浸かります。ですから根菜類は良い選択にはなりません。それ以外の野菜のほとんどは水に直接浸かりながらよく育ちます。

 もしアクアポニックスを始めたばかりなら、どんな葉物野菜でも良いですから試してください。例えばレタス、ホウレン草、スイスチャードなどです。もしアクアポニックスの経験を積んだ生産者なら、より冒険的な選択に手を広げるかもしれません。エンドウ、豆、トマト、キュウリや、さらに唐辛子などです。

 どの作物を選ぶにしろ、いつも菜園でやるように種を土に植えるところから始めてください。そして苗が10㎝ほどになったところで水だけの環境に移植します。

 

筏の上で野菜を育てる

 野菜を池で育てる場合、一番簡単なのは水に浮かぶ筏のシステムを使うことです。高密度ポリスチレン素材を筏に使うのが一番安くて簡単です。でも環境に及ぼす影響には気をつけてください。この素材が壊れると動物(魚も含みます)はその破片を食べ、喉につまらせる可能性があります。そしてこの素材は分解されるのに500年かかるのです。濃厚ポリスチレンにいくつか穴を開け野菜を挿して全体を池に浮かべます。

 簡単に小さなビーズに砕けてしまう安い発泡スチロールよりも、高密度ポリスチレンは耐久性があり、池の表面に浮いていられるでしょう。魚を新鮮に保って店やレストランに輸送するために使われる容器のフタでもうまくいき、新鮮な魚を売っている所で働いている人にお願いして、無料でたやすく手に入れることができます。または建築資材を売っている店で、もっと大きなポリスチレンのシートを買うこともできます。

 平らなポリスチレンの問題はポリスチレンと水面の間に空気の層が全くないことです。植物は根の一部が空気に接していた方が良く育つのです。そこで筏と水面の間に空気の隙間を作ると良いです。筏の四辺にポリスチレンを細長く切ったものを接着剤や(針金にビニールを被せた)ビニタイで接着させたり、銅配管用に売られているポリスチレンフォームを使います。どの材料であれ水に浮くものであれば中心の筏を水面に接しないように持ち上げ、作物の根が必要な空間を確保することができるでしょう。

 作物を固定する方法はいくつかあります。2cmから5cmほどの長さに切った、配管用のポリスチレンフォームを作物の「首輪」として使うことができます。これには最初から切れ込みが付いているので根を傷つけずに苗を入れることができます。その後、この「首輪」をポリスチレンの筏の穴に軽く押し付けるようにして入れます。作物が育ち、よりスペースが必要になると、作物は「首輪」に向かって広がり、ぎゅう詰めになるでしょう。

 もう一つの良い方法は、ハイドロポニック用の鉢を使うことで、これには水が循環できるようにたくさんの穴が開けられています。手作りする方がいいなら、プラスチック製のコップに穴をあけて自分用の鉢を作ることもできます。それからそこにハイドロポニックの培地であるロックウールやハイドロボールを入れます。根系がよく発達するまでの間の支えにさえなれば、どの方法を選ぼうとも作物にとって大して変わりはありません。 

 筏を使った栽培は組み立てるのも使うのも簡単ですが、1つだけ困った欠点があります。魚が作物の根に近づくのです。ほとんどの魚は根を少しかじる程度なのですが、鯉や金魚などの他のコイ科の魚は作物の出来に関わるほど、根を食べてしまうかもしれません。作物の根を魚から守るために筏の下に網を巡らせることもできます。

 

ボッグ・ガーデン(湿原の菜園)の利用

 水を浄化し養分のレベルを低く保つために、しばしば池にはボッグ・ガーデンが加えられます。上の図はボッグ・ガーデンがどのように池と繋がっているかを示したものです。水は池からポンプでボッグ・ガーデンの底に送られ、そこで砂地の層を通して作物の根に届きます。そして最後には池に戻されます。作物は池からポンプでもたらされた養分が豊富な水から恩恵を受け、池に戻される水は養分が減っていて、藻類の繁殖を助長しません。

  一般的に栽培者はボッグ・ガーデンで鑑賞用の植物を育てますが、だからと言って、みなさんが野菜を育てられないことにはなりません。砂地栽培は鉢植え栽培よりも簡単ですし、筏が浮いていて、池の景観が悪くなることもありません。ボッグ・ガーデンはまた、魚と作物が分けられているので、魚に作物の根を食べられるという問題も解決します。

 

外部の栽培エリアで育てる

 上記に示した二つの栽培方法は非常に簡単に実行できるものですが、みなさんはもしかすると、自分の野菜を池の中や池のすぐ近くでは、見たくないと思うかもしれません。またもっと広い場所で、野菜をたくさん栽培したいと思うかもしれません。どちらの問題も解決するには、野菜を育てる場所を別に作ることです。

 これには色んな選択肢がありますが、どの選択肢も普通、池の水を外部のタンクに取り出すためのポンプを取り付ける必要があります。水はタンクを通して流れ、最終的には池に戻ります。タンクは作物が差し込まれたポリスチレンのシートを保持します。ほとんどの生産者はポリスチレンのシートを裁断しやすいよう、四角いタンクを選びます。このタンクを使ったシステムは、養分を供給してくれる池を除けば、商業用のハイドロポニックのシステムと非常に似ています。

 一般的な池ではアンモニアのレベルが高くなりすぎないように、魚の割合を低く保つことが重要です。しかし池の外にあるより広い栽培エリアでは、作物に与える十分な養分を供給するために、池で魚を増やす必要があります。これは池でたくさんの魚を泳がせたい人や、食べ物として魚を養殖したい人にとって、嬉しいことです。

 水の移動や表面積の広い外部のタンクは、魚をたくさん生産するために必要な酸素を水に送り込む点でも素晴らしいです。

 小さな裏庭の池はかなり水温が上がりますから、昔ながらの金魚、鯉、カダヤシを飼うには良いです。中規模の池であればティラピアも飼えるかもしれません。ティラピアはより冷たい水が必要です。大きな池では、釣りの対象になるような魚が飼えるかもしれません。どの規模であっても、食卓に肉と魚を提供してくれるでしょう。。。。(つづきは定期購読にてどうぞ

 

 

ロバート・ペルビス (Robert Pavlis) は、24,000㎡の植物園のアスペン・グローブ・ガーデンの所有者であり、庭師の筆頭です。また40年の園芸経験があります。彼は「自然の池を造る (BUilding Natural Ponds) 」と「菜園の通説 (Garden Myths) 」の著者です。彼のブログ、「庭の基本 (Garden Fundamentals) 」と「菜園の通説 (Garden Myths) 」を探してみてください。

 

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Aquaponics in a Natural Pond

By Robert Pavlis|  June/July 2018