土の漆喰を壁に塗ると、美しく調湿性のある仕上がりになり、環境に優しいだけでなく、見た目が良い仕上がりになる。
文と写真: マイケル・ヘンリー (Michael Henry)
翻訳:北原 千絵
私は約 20 年前にオンタリオ州でストローベイル建築の左官工事を始めました。ベイルの建物は 1900 年代初頭のネブラスカのサンドヒルにルーツを持ち、1980 年代から世界的なルネッサンスを迎えました。私が仕事を始めた頃の一般的文化におけるストローベイル建築に関する言及は、3 匹の子豚の話だけでしたので、ほとんどすべての現場で大きな悪いオオカミのジョークのバリエーションをいくつか聞いていました。私たちの普段の返答は「最初の小さな豚は自分の家に漆喰を塗り忘れた」でした。
これには多くの真実があります、なぜならストローベイルの家の強度、耐候性、気密性のほとんどは漆喰から来ているからです。技術者が耐荷重性のあるストローベイルの建物を承認する際に、最も重要な数字の一つに漆喰の圧縮強度があります。 では、よく言われるストローベイルの断熱性能はどうでしょうか? たまに、オーナービルダーが、漆喰を塗っていないベイルの家で越冬しようとします。 オンタリオ州の冬の終わりの風が強い日には、家の中の温度が氷点近くまで下がり、毛布の下に身を寄せ合っている彼らを見つけることができます。しかし、次の冬、彼らの家が漆喰の防風コートを身に着けていると、数キロ四方の中で最も快適で効率的な家となっています。
伝統的な技術と現代的な方法の出会い
漆喰は通常、砂、繊維、水、結合剤で構成されています。結合剤は、漆喰を特徴付けるものです。最も一般的な結合剤は、粘土、(水和または水硬の)石灰、石膏(パリの漆喰)です。左官職人の中には、これら 3 つの結合剤のいずれかのブレンドを様々な組み合わせで使用する人もいますが、キッチンサイエンスの下には複雑な化学が隠されているため、比率が重要です。例えば、粘土と石灰は素晴らしい漆喰を作ることができますが、必要な化学反応は特定の pH レベル以上でしか起こらないため、間違った比率では、ただ単に脆くなり、大失敗となってしまうでしょう。
天然の漆喰には、セメントやポリマーを結合剤として使用する現代の漆喰に比べて多くの利点があります。最も重要な 2 点は、水蒸気透過性が高く、水分が閉じ込められて下地材が腐る可能性が低いことと、二酸化炭素排出量がはるかに少ないことです(セメントは世界の二酸化炭素排出量の約 8 パーセントの排出源です)。私にとっては、何千年にも及ぶ建設遺産とのつながりも重要な意味を持っています。それを数値化することはできませんが、歴史的建造物の中で時間を過ごしたことがある人ならば、それを感じたことがあるでしょう。
天然の漆喰は、多くの自然建築スタイルには欠かせないものですが、より一般的な建築物にもよく合います。
最近では、頻繁に乾式壁の上に、またはそれほど頻繁ではないものの、乾式壁の代わりに取り付けられた木摺り下地の上に漆喰を塗ることを求められます。通常、最終的な表面仕上げは顔料を使用し、塗料の代わりになります。その結果、家に美しさ、形、質感を与える無毒性の仕上げとなります。
家のエネルギー効率が向上し、気密性が高くなると、毒性が低いことがますます重要になります。ほとんどの自然素材の漆喰は化学的な揮発性ガスをほとんど発生させませんが、完全に無害であるというわけではありません。たとえば、家で密封されていない土の漆喰を使用する場合は、粘土にシリカがほとんど含まれていないことを確認する必要があります。シリカにより、肺がんや珪肺症を引き起こす可能性があります。また、漆喰を塗った後のほこりを掃除する必要があります。掃除の際には、マスクを着用し、モップや HEPA フィルター[空気中の微細なホコリを取り除く高性能フィルター]付きの掃除機を使用する必要があります。天然の漆喰は住まう上で一般的に安全ですが、どの微粉で作業しても同様にするように、作業時には注意が必要です。
私の好きな仕事の多くには、自分自身で左官工事をしたいと思っている住宅所有者との直接作業が伴っていました。すべての人ではありませんが、セルフビルドをするような人々は、大体において左官作業を学ぶことができます。
そしてこの作業が終わると、彼らは漆喰を維持し、修復する方法を知ることになります。
これは大きな利点です。というのも、土の漆喰は簡単に修復できるものの、十分に柔らかくて簡単に損傷するからです。石灰は少し丈夫ですが、塗装されていない石灰の漆喰は、明らかな痕跡を残さずに修復するのはさらに難しいです。
あなたが自然建築を構築している場合は、下塗りを漆喰にして、最終的な仕上げとして塗料を使用したいと思うかもしれませんが、何の問題もありません!多くの美しい非毒性塗料が利用可能で、いくつかは、仕上げ塗りをしていない漆喰よりも耐久性があり、汚れに強く、改良が簡単です。ケイ酸塩塗料は非常に丈夫で耐候性があり、漆喰とよく結合します。多くの人にとって、未塗装のアクセントウォールは、家全体が未塗装のコーティングのない漆喰で仕上げられるよりも望ましいかもしれません。
壁に塗る漆喰の種類に関係なく、おそらく配合レシピが必要になります。一部の優れた天然漆喰は、混合済みの袋で販売されていますが(アメリカンクレイが思い浮かびます)、選択肢はまだ限られています。天然漆喰の世界は、主に DIY です。これにより、丁寧にレシピを作り、お互いに共有し、修正し、また共有する天然漆喰の美しい共同コミュニティが生まれました。まさにオープンソースのコミュニティです。実際にのぞいて見るには、Facebookグループ「I Love Natural Plaster」をチェックしてください。
ティナ・タレイン (Tina Therrien) と私が本「エッセンシャル・ナチュラル・プラスターズ (Essential Natural Plasters)」を書き始めたとき、この精神を利用して、同僚からレシピを集めることにしました。どうなるかわからなかったのですが、みんな快く引き受けてくれました。何人かの投稿者は自分の本を持っていて、そのうちの一人は私たちのプロジェクトを「コミュニティによる、コミュニティのための本」と表現してくれました。その結果、私自身が参考にしている本ができあがり、私が役立てている一冊は、すでに書き込みで埋め尽くされています(白状すると、私の記憶力が悪いので、自分のレシピの詳細まで参考にしています)。
マザーアースニューズ から DIY の漆喰塗りの記事を書いてほしいと頼まれたとき、読者に広く使ってもらえるようなものをシェアしたいと意識しつつ、どのレシピを選ぶべきか悩みました。私が選んだレシピは、自然の壁や乾式壁の上に最終仕上げ剤として使えます。石灰漆喰を作るためにも、ほぼ同じレシピを使用できることでしょう。その場合は粘土を S 型 (Type S) 水和石灰に変えて、乾いた砂と石灰を別の容器に入れてあらかじめ混ぜておき、小麦ペーストは残しておくだけです。
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