蓄熱材を、電気を使わない温室に加えよう

日中の熱を蓄え夜間に放出して室温を四六時中安定させる温室システムを設置しよう

 

このコロラドにある温室は、スマート・グリーンハウス有限責任会社によって建てられた。この温室は熱を吸収し蓄え、放出するために、後ろの壁に沿って大きな水の入ったタンクが置かれている。 Photo by Smart Greenhouses LLC

 

翻訳:大本 清子

 

このコロラドにある温室は、スマート・グリーンハウス有限責任会社によって建てられました。この温室は熱を吸収し蓄え、放出するために、後ろの壁に沿って大きな水の入ったタンクが置かれています。

 

 全ての温室は一日中、太陽を熱として使っています。夜になると断熱効果のない素材の温室は、急激に熱を失います。この非効率性は光を最大化することを目標にした、伝統的な温室デザインの基本原理が関係しています。ガラスや透明な樹脂 <<プラスチックとビニールが含まれる樹脂を訳出>>と言った、窓の材質は、光を取り入れるのには良いですが、熱を維持することは難しいのです。

 ソーラー温室は違った方法をとります。化石燃料に頼ることなく過加熱と過冷却に影響されないしくみを作るために、窓の取り付けと断熱のバランスを取るのです。化石燃料の代わりに、太陽はエネルギーを供給し、温室は必要になった時に自らの熱を提供するため、その太陽のエネルギーを集めて蓄えます。蓄熱材の使用は熱を貯蔵し、温室の温度の変化を和らげるという、最も古くからあるシンプルな方策です。

 

蓄熱材はどのように働くのか

 光が素材に当たると、その光の一部が吸収され、熱に変わります。蓄熱材はこの熱を伝導して吸収します。熱は少しずつ素材の表面から中心に向かって伝導し、日中に素材全体で数℃ほど温度を上げます。夜になって温室の気温が下がると素材は熱を伝導し、近赤外線を放射し、ゆっくりと熱を放出し始めます。このようにして、温室の気温を調整するのです。日中は太陽からエネルギーを吸収し、夜に(気温が蓄熱材より低くなればいつでも)熱として放出し、日々の温度の変化を緩やかにするのです。

 蓄熱材は熱を蓄えるので、よく「熱の溜まり場」「熱の貯蔵庫」「熱の電池」などと言われます。その発想はどれも同じで、熱が過剰供給される時にできるだけ熱を蓄え、必要になった時にゆっくりと供給するということです。そのために冬は(あるいは温室に温度が必要になればいつでも)蓄熱材に光を最大限まで当てなければいけません。後で熱を放出できるよう昼間のうちに、できるだけ蓄熱させることになります。直接光に照らされなかったとしても、蓄熱材は周辺の空気からも熱をいくぶん吸収します。つまり曇りの日であっても、いくらかの効果はあるということになりますが、蓄熱材の熱を蓄えるという能力の一番の誘因は、直射日光の吸収作用にあります。

 夏の間の蓄熱材の目標は、温室を涼しく保つ助けになることです。そのためには夏の間は蓄熱材を遮光する必要があります。温室内の熱気が蓄熱材の間を移動するため、熱をいくらかは吸収するでしょう。夜になるとその熱を放出し(夜の気温が十分に低下するなら)、翌日の日中にまた温室の温度を下げるでしょう。

 

蓄熱材を選ぼう

 全ての物質は、ある程度の熱を蓄えますが、他よりも効果的に蓄える物質もあります。物質が蓄えられる熱の量は「熱容量」と呼ばれ、2つの要因によって決定されます。1つ目の比熱は物質の性質で、物質を1℃上げるのにどのくらいのエネルギーが必要かで決められます。

 密度は物質の比熱を決める2つめの要因になります。ある体積あたりの蓄熱材の量が増すほどエネルギーは多く蓄えられます。石やコンクリートと言った、蓄熱材のほとんどが効果的なのは、高密度だからです。

 「比熱と密度」という2つの特性を乗じると物質の「体積あたりの熱容量」になります(下記の一般的な建設資材の体積あたりの熱容量の表を確認してみてください)。これがもっとも役立つ測定単位です。一定量の物質に蓄えられた熱の総量を表すからです。温室を設置する際、栽培に利用できたはずの相当なスペースを取ってしまう蓄熱材の量は、非常に重要な要素になります。

 

一般的な建材の1立法フィート( ft³)あたりの熱容量(英熱量)

建材 体積あたりの熱容量 (Btu/ft³/F [1 Btu/ft3/F = 67.1 kJ/m³/K])

 

水* 62

スチール 59

岩、石(30%の空気含有量) 25

湿った軽鬆土 25

コンクリート 25 to 32

レンガ 23 to 35

日干しレンガ 20

木(松、モミ) 18

砂 18

空気 0.018

 

* 役立つ換算:1ガロン(3.8L) の水は 8.34 Btu [1Lあたり4.186kJ (=1kcal=水1Lを1℃上昇)]。

 

 比熱は、熱を移動または伝導する比率である伝導性とは異なる属性であることに留意してください。蓄熱材は一般的に言って断熱性は良くありません。熱をたくさん蓄えることはできますが簡単に周辺に熱を伝導させます。つまり蓄熱材は外部と断熱するべきで、断熱材の代わりに使うべきものではありません。

 もともと温室には蓄熱性があるものがあります。土、水、そして植物がそうです。ばかにならないとは言え、こういった蓄熱源は、一般的に年間の気候を制御するには不十分です。だから蓄熱材は普通、大量の水やレンガでまとめ上げるのです。

 

蓄熱材としての水

 温室では水がもっとも一般的な蓄熱材として使われます。簡単に入手できる資材のなかで体積当たりの熱容量が一番高く、また安価です。水の入った大きなドラム缶を数本、温室の北側の壁に積み上げれば、「水の壁」という大きく安価な熱の電池が作れるでしょう。

 水の壁は冬は太陽光に当て、夏は遮光しなくてはいけません。水の壁が温室の北側に設置されているなら、部分的に屋根を断熱することで簡単に達成できます。水の壁を光に当てたり遮光したりする場合は、温室のある所の太陽の角度によって(オレゴン州立大学が、太陽軌道図を作るソフトウェアを提供しています)断熱する部分が決まります。断熱する部分を正確に決定するために、温室の水の壁の寸法、夏至と冬至、春分と秋分の太陽の高度の概略図を描いてみましょう。分度器やスケッチアップといったプログラムソフトを使えば、夏には蓄熱材を覆い、冬には光に完全に当てられるように、断熱材を設置する範囲を概算できます(イラストを見てください)。

 屋根のその部分には、断熱を加えることを強く勧めます。蓄熱材の効果を高めるだけでなく、屋根からの熱損失を減らすためです。熱損失は、屋根からが一番大きのです。

 

水を入れる容器を選ぶ

 大きい容器はたくさんの水を温室に取り入れることができ、また小さい容器に比べると、容積に比較して表面積が小さく済みます。表面積は、どれくらい早く周りに熱を伝導できるかを決めます。それを説明するために、200Lの樽と4L入りの50個のミルクピッチャーを比べてみましょう。両方には200Lの水が入っていますが、大きなドラム缶の方が容量の割に表面積が小さくなっています。熱を伝導する表面積が小さいため、ミルクピッチャーと比べて熱くなったり、冷めたりするのに時間がかかります。大きなドラム缶は短時間においては、温室の気温に影響が少ないですが、長い期間をかけて熱を溜め込むことができます。つまり大きな容器は長引く寒さや曇っている期間に、温室が氷点下にならないようにするのにより役立ちます。水を主要な熱貯蔵装置とするなら、ほとんどの生産者はめいっぱい大きな容器を選びます。積み上げて格納するのが容易で、大量の水を置くのに空間効率が良いのです。

 もっとも一般的な容器は200Lの樽です。プラスチック製とスチール製があります。金属はプラスチックより熱伝導性があるので、スチールは熱をより早く伝導します。しかし錆びやすく寿命も短いです。水が蓋にたまり表面から蒸発し続けるので普通、樽は外側から錆びます。もしスチール製を選ぶなら湿った土から離し、樽の蓋にプラスチック製のカバーをすることを考えてみてください。

 プラスチック製でもスチール製でも、安くて再利用されたものを見つけられます。造園業者、地元の運輸局、廃材所、コンテナ会社、クレイグズリストで探すのが良いでしょう。

 水の壁はシンプルな概念ですが、非常に気をつけなくてはいけないことがあります。200Lの水の壁全体の重さは、220kgくらいになります。もし倒れたら、人を押しつぶすのに十分な重さです。水の壁は安定していて、構造的にも支えられている必要があります。平石やコンクリートの上に水平に置かれていなくてはいけません。長い間、ソーラー温室を設計しているペンとコード・パーメンター (Penn and Cord Parmenter) は、野菜を育てるために一面が土になっていても、樽の下には60cm幅のコンクリート板を置くように、そしてもし樽を積む場合は、しっかりした棚材を間に挟むように言っています。ペンとコードはもう一歩進んで樽が倒れないよう、木製の板を樽を横切るように設置しています。

 

水を入れた樽を利用する際のコツ

 隙間を作ること。温室に樽を設置した後、その場で水を入れます。日中温まると水は少しだけ膨張するので、空気の隙間を残すように入れます。

 凍らせないようにする。大きな水の入った容器は完全に凍ると壊れる可能性があります。水は容器の限度容量を超えて膨張します。水の入った200Lのドラム缶が凍ることは稀ですが、冬の間中、温室のドアが開けっ放しになっていれば起こる可能性があります。春から秋まで野菜を作り、冬の間温室を使わない人は、気に留めておくと良いです。

 ドラム缶は暗い色を塗る。暗い色はより熱を吸収します。そして蓄熱材の一番の目的は、熱を最大限吸収することです。光を反射させるため温室の室内は白く塗り、でも水の入った容器は暗い色で塗ってください。研究論文によると暗い青色や赤色は、ほぼ同じ量の熱を吸収し、青や赤の可視光線を反射しますが、これは野菜を育てる上で有益です。

 蓄熱材を間取り図に組入れる。標準的な200Lのドラム缶の直径は60cmです。栽培スペースが小さすぎたという結果に陥らないよう、温室の間取りの設計をする際は蓄熱材の置き場所とスペースも考慮に入れてください。

 

太陽熱利用の蓄熱材のサイズを決める

 平均的な温室で温度変化を安定化させるために、どれくらいの量の水が必要なのでしょうか。多くのデザイン変数が意味することは、温室によって要求される水の量が異なるということです。一般的な目安としては、気温を制御するのに蓄熱材を主として使うなら、窓の面積1㎡当たり、80Lから200<<7.57/0.0929=81.5, 18.9/0.0929=203>>Lの水になります。寒い地域なら200L、暖かい地域なら80Lです。温室の面積ではなく、窓の面積です。窓の材質は、温室内の熱の変化の良い指針だからです。コンクリートの場合、水の約半分の熱容量なので、同じ効果を期待するなら倍の量が必要になります。

 気候、デザイン、使われる蓄熱材、蓄熱材が入っている容器、蓄熱材をどこで使うか等、蓄熱材の容量を決めるには本当に多くの因子があるので、これは非常に一般的な助言です。でもこのルールに従えば、どんな気候であっても温室が凍ることはありません。蓄熱材の実例が最も多いのは、寒くて晴れの日の多い気候で、コロラド州やワイオミング州などです。しかし蓄熱材は、曇りの多い気候でもうまく使われています。

 

良い点と悪い点

 主な欠点は、住宅の温室では栽培用に利用できるスペースを、かなり取られてしまうということです。カナダやアメリカ北東部の寒くて曇りの多い地域では、その効果が抑えられてしまいます。アメリカ南部の1日の激しい気温の変化が見られない、暖かい地域では効果的ではありません。また蓄熱材は、非常に満遍に熱を伝えることはなく、蓄熱材の周りに直接、ひとまとまりの暖かい空気を作り出すことになります。栽培地域に合わせて栽培計画を修正したり、送風機を使って温室内の熱を行き渡らせるようにすればよいでしょう。

 蓄熱材には本当にたくさんの長所があります。安価(水の場合)で、他の有益な役割も果たせます(レンガの場合)。設置が簡単で手入れが不要なので、DIYに興味がある人には良いです。一番重要なのは電気がいらないことです。年間を通し、電気のない所にあるパッシブソーラー温室が、うまくいくよう助けてくれます。

 

リンジー・シラー (Lindsey Schiller) とマック・プリンク (Marc Plinke) は研究とデザイン、エネルギー効率の良い温室を作るために、セレス・グリーンハウス・ソリューションズ (Ceres Greenhouse Solutions) を共同設立しました。この記事は彼らの本「年間を通した太陽光の温室 (The Year-Round Solar Greenhouse)」(New Society Publishers 出版)から抜粋しています。

 

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Autumn’s Inexpensive DIY Greenhouse

By Autumn Hansen | February/March 2018