ハイキングコースを作る

あなたの土地に歩道を設置して、自然の中で平穏な休息を提供しながら、その土地の印象的な場所に容易に辿り着けるようにしよう。

 文:ジョナサン・オリバー (Jonathan Olivier)

翻訳:長谷川

 

国立公園や森林の奥深くにあったり、州の公有地に散らばったりしている幾千マイルもの歩道が、アメリカを縦横に結んでいます。しばしば、舗装されていない道は、他のどの道よりも野生に満ちた体験に連れて行ってくれます。

 私の人生にとって最も記憶に残っている瞬間は、僻地の山中でよく手入れされた歩道をうねうねと歩いている時でした。アパラチアン・トレイルでの数週間で新しい友人ができました。コロラドの僻地サン・ジュアン・マウンテン (San Juan Mountains) での週末で、猛烈に忙しくなってきたときに、ペースダウンすることの重要性を学びました。

 多くのアメリカ人にとっても、この種の公有地内の遊歩道は、アウトドアを探検するのに最適なものです。州政府および連邦政府、提携するトレイル・クラブは、日頃から世界的に有名なパシフィック・クレスト・トレイルから地方に点在する無名のトレイルに至るまでを設置し維持するためにたゆみない努力をしています。圧巻なのは、それらのほとんどに簡単に行けるということです。彼らが求めるのはごくわずかの登録料だけで、それ以外はすべて無料なのです。

 自分の土地を持っている人にとって、遊歩道を設置することは、土地の奥深さをこれまでにないほど探索する実用的な方法です。足を踏み入れやすく辿りやすい、はっきりとした散策ルートができるのも利点で、土地の印象的な部分を巡ることを可能にします。ゲストにも手入れの行き届いた小道で森を探索する機会を楽しんでもらえます。あなた自身の遊歩道を設置するために必要な手順を以下に示します。

 

あなたの土地を検分しよう

 遊歩道を設置する最初の一歩は、固有の樹木や美しい草原、野生動物を発見する可能性の高い地点など、あなたの所有する特別な場所を考えることです。これらの印象的な場所を辿る道を見つけましょう。良い始点と良い終点を考えてください。そうすれば、歩道が 2 つを結ぶ地点を想像できます。これらの点をふまえて土地の地図を描くと、回廊(通路)にできそうな箇所を計画するのに役立ちます。

 テネシー州のカンバーランド・トレイルで働いている作業チームの監督者であるシャウナ・ウィルソン (Shauna Wilson) は、遊歩道の始点と終点がわかったら、外に出て地形の調査を始めるのが最善だと言います。現地では、計画した始点と終点の間の最も簡単な小道を発見できます。ゆっくりと森を歩いて注意を払って欲しいのは、とくに低い地点と高い地点がないことです。そこに階段や排水などのインフラを設ける可能性があります。手描きの地図上で、インフラを設ける場所や地形に大きな変更を加える必要があると思われる場所にマークを付けます。

 「50 ルールを使用する必要があります」とウィルソンは言います。 「つまり、遊歩道の勾配 (%) 50 を超えないようにする必要があります」。そのためにあなたの都合が良いように地形を活用してください。丘の中腹をジグザグに移動し、多くの作業と多くの歩行を必要とするスイッチバックではなく、丘を緩やかに回りながら登ることを想像してください。

 頭の中に道を作ると、おそらくあなたの邪魔になっているたくさんの植物に気づくでしょう。遊歩道の回廊内にあるものの多くは、取り除くか短く刈る必要があります。公有地の歩道建設業者は、建設作業中に絶滅危惧植物が踏みつけられないように、植物学者と相談する必要があります。私有財産では必要ありませんが、樹木を伐採する前に同様の調査を行うことは、土地の生物多様性にとって有益です。お住まいの地域の植物相の知識がある近所の住民に相談したり、本にあたったりしてください。

 潜在的な小道がよりはっきりしてくると、それがどこにあるかを目印をつけ始めることができます。遊歩道がどこを通るか決まったら、木に目印テープを掛けて、大まかな小道をマークします。ウィルソンは、4.56 メートル毎に目印をつけることを勧めています。

 

遊歩道の基本

 すべての目印がついたら、工事を始めましょう。その一歩は、林床を覆う落葉をかき集めて単に脇に寄せて、作業するのに十分な裸地をきれいにします。

 「2 番目のステップは、地面のスポンジ状の有機層である粗腐植duff: 林に堆積した枯れ葉などが腐ったもの]を除去することです」とウィルソンは言います。 「粗腐食がところどころに残っていると、最終的に水たまりになる低地ができます。それが完了すると、実際の遊歩道の表面を削ることを開始できる無機質土壌が残ります」。

 カンバーランド・トレイルの場合は 12 インチから 36 インチ (3090 cm) までの範囲ですが、遊歩道の幅は好きなだけ広げることができます。踏面が広くなるほど、建設中に地面を掘る必要があります。逆に「遊歩道を狭くすればするほど、次の暖かい季節に植生がより早く侵入します」とウィルソンは言います。

 ウィルソンは、根掘りぐわ(マトック)を使用して無機質土壌を掘ることを勧めています。急な山腹の粘土を含め、最も硬い粘土でもすばやく作業できます。歩きやすいように道の表面を水平に近づけてください。 「土を掘り、根と岩を取り除いた後、土を戻して平らにし、快適な歩行面を作ります」とウィルソンは言います。

 しかし、コンチネンタル・ディヴァイド・トレイル連合(Continental Divide Trail Coalition)の野外プログラム・コーディネイターのゲイブ・エテンゴフ(Gabe Etengoff)によれば、平らな箇所では水が溜まるのを防ぐために歩行面を嵩上げしておく方が良いとのことです。「歩行面に砂利を使うことをすすめます。これによって歩行面が安定し、足下が水溜まりになりません。あるいは、土砂を加えて勾配をつけてもいいでしょう」。

 

排水路づくり

 歩行面に水で覆われないように、わずかな勾配をつけることを計画しましょう。水準器を使うか、目測で理想の勾配をつくりましょう。「もし遊歩道の両側に有機物が積まれていれば、水はどこへも行かずに中央部分に溜まってし まう。理想的には、遊歩道の両脇に傾斜をつけ、斜面を下る側の有機物が取り除かれていれば、水は溜まることなく流れ去るでしょう」とエテンゴフは言います。

 エテンゴフは続けて、適切な勾配は侵食を制限します。侵食は時間の経過とともに遊歩道が劣化する主な理由です。 「雨が降り始め、遊歩道に水溜まりができて、流れ落ちない場合は、遊歩道内に流れ込み、浸食を引き起こす経路になってしまいます」。

 通常、勾配がつけられた遊歩道は排水溝その他のインフラの必要性を回避するのに十分です。ただし豪雨は、地形が急であるか水が溜まるのに十分なほど低い場合には、侵食を引き起こします。これを抑えるために、ウィルソンは波状勾配の窪み (rolling grade dip) を設けることを勧めています。 「それは遊歩道の減速バンプのようなものです」と彼女は言います。 「遊歩道の急な部分に波状勾配の窪みをつくることができます。これにより、遊歩道に沿って流れ続けて浸食するのではなく、水が歩道の脇に流出しやすくなります」。

 もう一つの方法は、より自然環境に手を加える手法ですが、止水する棒を設置することです。多くの場合、4 x 4 [厚さ・幅ともに 10 cmの角材]または 6 x 6 [厚さ・幅ともに 15 cmの角材]を使い、地面を斜めに掘って固定し、遊歩道全体に設けます。また、これは水が歩道の脇に流れ出るのを助けますが、歩行者はそれを乗り越えなければなりません。

 遊歩道が小川を横断する方法は簡素であることが最良の選択肢であると、エテンゴフは言います。つまり、すべきなのは、石づたいに渡ることで、そうしないと足を濡らすことになります。橋は水量の多い川ではより良い選択肢です。ただし繰り返しますが、エテンゴフは頑丈な丸太を用いて通過できるようにするなど、簡素であることを強調しています。

 遊歩道を分岐させる場合、歩きやすいように印象的な場所や行き先を示す標識を追加しましょう。遊歩道完了後の最高のメンテナンス方法は、定期的にその上を歩くことです。これにより、地面が固く保たれ、植生が道の上で成長しないことが保証されます。時々、剪定鋏やノコギリを使用して、枝や倒木を取り除いてください。大嵐の後は遊歩道を歩いて、メンテナンスが必要な箇所を調べてください。

 アメリカの公有地を散策する遊歩道は依然として訪れる価値があるものの、あなた自身の遊歩道では森の中にあなただけのプライベートな休息があります。そこには、混雑も入場料もありません。

 

遊歩道づくりのための道具

 根掘りグワ(マトック)。つるはしと同様に、根掘りグワは切断や掘削のためやテコの力で引き抜くのに使われます。 2 つの刃(1 つはツルハシ、もう 1 つは斧)は多機能です。 長さ 11.2 m の持ち手で容易に振り下ろすことができます。根掘りグワは、根を切り刻み、芝を掘るのに最適です。また、固く締められた土を掘ることもできます。

  マクロード。この道具は両端に刃があり、刃が付いた熊手と、よく磨かれた平らな鍬が長い持ち手の先に付いています。この道具は、1905 年に米国森林局のレンジャーである マルコム・マクロードによって設計されたもので、通常消防士が林野で防火線を引くために使用します。遊歩道をつくる者にとっては、新しく切り開く道の堆積物を取り除いた後、敷き戻して歩行面を平らにするために使えます。

 剪定鋏。剪定鋏は、近くの木から伸びて遊歩道の回廊にかかる長くて細い枝を取り除くことができます。植生を寄せ付けないための細かい作業用の道具として最もよく使用されますが、大きな木を取り除くのには効果的ではありません。

 太枝切鋏。太枝切鋏の長い握り柄を使うと遊歩道の近くの大きな枝を剪定したり、小さな木を切ったりできます。バイパス式とアンヴィル式の 2 種類があります。アンヴィル式は、湾曲した鋭利な刃が 1 つだけあり、粗い切断面になります。バイパス式は鋭利な刃が 1 つだけなのは同じですが、鋏のように機能するのでよりきれいな切断面になります。

 折りたたみ式ノコギリ。木を切断する必要があるが、チェーンソーには小さ過ぎる場合は、手動のノコギリが適しています。その鋭利な刃は、小さな木を素早く切ります。

 チェーンソー。チェーンソーは、遊歩道を塞ぐ大きな倒木を細かく切断して、取り除くことができる最良の選択肢です。ただし、チェーンソーを使用するときは注意してください。チャップス(保護ズボン)や安全メガネなどの適切な安全装置を必ず使用してください。

 金テコ (pry bar)バールとしても知られているこの 7 kg ある鋼棒は、地面から大きな岩を取り除くために使用されます。岩の下に鋭利な先端を差し込んで、こじ開けることで、岩を地面から引き出して遊歩道の脇に押しやることができます。

 消防斧 (pulaski) 1911 年に米国森林局のエド・プラスキーによって発明されたこの道具は、林野火災の消防士の間で広く使用されています。1 つの頭に斧と鍬の刃が付いています。一方の端で木材を切り刻むことができますが、他方の端は硬い土を砕いて根を取り除くのに最適です。

 安全器具。遊歩道づくりの安全を確保するための器具には、ヘルメット、メガネ、手袋、耳栓が含まれます。非常に多くの道具、特に機械化された道具を使用すると、怪我をする可能性があります。常に予防策と適切な安全装置を用いると、異常が発生する可能性が低くなります。 

 

ジョナサン・オリビエ (Jonathan Olivier) は、主に環境について、また人間と自然界との相互作用について書いているフリージャーナリスト。彼の記事は、「Outside」、「Backpacker」、「Mother Earth News」、およびその他の国の出版物に掲載されている。

 

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By Jonathan Olivier|  April/May 2020