ティンバーフレームで建てる 鶏小屋

読者のマーロン・クリーベルが、いかに廃材と伝統技法を使い、家族で新しい鶏小屋を建てたかをシェア。

文と写真:マーロン・クリーベル (Mahlon Kriebel)

翻訳:山下 香子

 

ワシントン州で暮らす私と妻のモニカは、先日、自宅のガレージで電灯の下に段ボール箱が置いてあるのに気づいた。中をのぞくと、ぎゅうぎゅう詰めになったひよこが18羽。これには驚いた。孫娘のケイティとその夫のニコウからのプレゼントだった。私たち夫婦が子どもの頃に鶏の世話をしていたことがあるのをふたりは知っていたので、私たちがまた新鮮な卵を食べられるようになったら喜ぶだろうと思って、ひよこを買ってくれたのだった。ガレージの外壁に差し掛け[片流れになった屋根を母屋につけて増設する建築]の鶏小屋を作りましょうかとニコウが言ってくれたが、場所はいくらでもあるので独立型の鶏小屋を作ることになった。ケイティが、子どもの頃に見知っていた鶏小屋の記憶を基にして壁の設計を考え、見取り図を描いたところ、鶏小屋と言うよりは3メートル四方のオーストリア風の山小屋を建てることになった。140年前の自作農場植民者は何かを建てるとなったら、きっと土地にあるものを材料にしただろうと思ったので、私たちもできるだけそうすることを目指した[理由は後述]。ふたりは省エネ型にすることにこだわり、冬の暖房には500ワットの電球をひとつ使うのみにした。では、この鶏小屋を建てた手順を紹介しよう。

 [1]  私の父、祖父、そして曽祖父が原野からこつこつと集めて来た石が、農場の境界を示す古いフェンスに沿って、いくつもの山となって積まれている。ニコウとケイティは小屋の基礎を作るのにこれらの石を使うことにした。石の山の多くは農場を横断した向こう側に積まれていたので、小屋を建てる場所にふたりで3トンもの石を運ぶのに1週間かかった。凍上対策として、基礎を作る地面に、まず、溝を掘った。凍上とは寒気によって土壌が凍結して盛り上がることだ。溝は深さ90センチメートル、幅45センチメートル。凍上によって基礎を破損させないためにはこれだけの深さが必要だ。ふたりが掘り出した土は体積が1530リットル(2立方ヤード)、重さは3600キログラムを超えていた。

 [2]  溝の底には玄武岩の砕石砂利を敷くことにし、地元の建材会社から約765リットル(1立方ヤード)購入した。これで溝に8センチの厚みの砂利底ができる。その上に、モルタルで固めたりせずに石だけで層を重ねていく空積み工法で基礎を築く。石を積んだ上に防腐処理済みのフォーバイシックス(4インチ×6インチ)の角材を土台として据えた。

 [3]  本物のハーフティンバー様式 [木材の骨組みを内外に露出させて、その間を煉瓦、石、漆喰などで埋めて壁にする建築様式](ドイツ語でファッハヴェルク)の鶏小屋を作るためにニコウは古い梁(はり)を何本か、手に入れた。1880年代に建てられた納屋が雪の重みで倒壊して、梁などが廃材になっていたのだ。その納屋で使われていた20ペニー釘 [約10センチの釘] も譲ってもらい、壁をつくる角材をつなぎ合わせるのに利用した。壁の骨組みができた後、人力で設置した。ニコウとケイティは垂木(たるき)を切って取り付け、亜鉛めっきされた10ペニー釘 [約7.6センチの釘] を使って、地元製材のワンバイエイト(1インチ×8インチ)のモミの野地板を垂木に張った。

 [4]  次に行ったのは木舞の骨組みに泥土を塗りつけて壁を作る作業だ。田舎道沿いに流れる溝にイエローウィロー [yellow willow 柳の一種 学名:Salix lutea] の群落があるのを見つけた私たちはトラック3台分の大枝を持ち帰ったのだが、建材として使える小枝の長さは1500メートルあまりにもなった。ニコウは水平に架けた梁に30センチくらいの間隔で直径2、3センチの穴を手作業で開けて、柳の枝を垂直に通した。これは、直径1センチ強のしなやかな枝を編み込むための枠組みになる。編み枝細工ができあがるとニコウとケイティは電線管を壁に通して設置した。次は壁に塗る資材の調達だ。孫夫婦はうちの切り通し道を農用トラクターで掘り返して粘土質の土を採取し、去年収穫した小麦の藁と混ぜ合わせた。鶏小屋の壁は厚さを15センチ強にする計画だったので、3000リットル近くの粘土を必要とした。麦藁を粘土に混ぜて塗り壁材を作るにあたって、コンクリートミキサーに2袋分の小石(1袋10ポンド/約4.5キログラム)と粘土を入れ、ミキサー内で土がゲル状にならないように少しずつ水と藁を加えた。できた塗り壁材をイエローウィローの格子に押し付けるようにして、編み枝細工の内側と外側どちらにも塗りつけた。仕上げに木製の鏝(こて)で壁を平らにならし、角材についた泥をきれいに拭き取った。

 [5]  ケイティとニコウは機械を使わず、手作業で杉の木塊を割ってこけら板を作りたいと言って譲らなかった。幸運にも、ふたりは自宅から30キロメートルほどしか離れていないところに長年放棄されたままになっていた丸太置き場を見つけた。そこには丸太の端を60センチから1メートル近くの厚さで輪切りにした杉の木塊が寄せ集められていた。鶏小屋の屋根は片面が縦約3メートル70センチ、横約4メートル30センチにする計画だ。ケイティたちは、何度もその丸太置き場に通って、こけら板にするための厚切り木材を拾い集めて来た。そして、私の曽祖父のフラウ [樽板やこけら板を作るために木塊を繊維に沿って割る鉈(なた)。歯が柄に直角についている。] を縦横8センチくらいの頭部のついたオーク材のスレッジハンマーで打ちつけて、木塊をこけら板に割り分けた。それを一枚一枚、私の祖父の引き削り鉋(かんな)で削って、見た目良く仕上げていた。私たちは、よくよく考えた末、屋根には防水効果のあるタール紙を敷いた上にこけら板を設置することにした。

 [6]  壁が乾くまで6週間おいた後、ニコウとケイティは土壁に石膏を施し、その上にペンキを塗った。石膏と角材の継ぎ目は現代的なコーキング材でふさいだ。戸と窓枠にはダグラスファー(red fir トガサワラ属の常緑針葉樹 和名:米松 学名:Pseudotsuga menziesii)を使い、廃品回収で手に入れたドアの蝶つがいと窓ガラスを取り付けた。

 建築工程を最初から最後まで見守っていた鶏たちは新しい家にすぐになじんで暮らしている。 

 

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Build a Timber Frame Chicken Coop 

By Mahlon Kriebel