伝統的なチャバタ

マザーアースニューズ チャバタ パン レシピ

液種法で食卓へ、この多用途な天然酵母パンは、そのおおらかさに見合う、豊かな風味。

文:ウィリアム・ルーベル (William Rubel)

翻訳:松並 敦子

 

 チャバタは私の娘のお気に入りのパンです。娘はチャバタの魅力的な味と生地の歯ごたえがお気に入りのようですが、私も同じ理由でこのパンが好きです。さらに、家族のためのパンを焼いている私にとっては、大雑把に作れる点もチャバタが好きな理由の 1 つです。多くのイタリア料理に言えることですが、チャバタはきちんと整ったレシピ通りに作っても、多少アレンジを効かせても、忘れられない味を生み出してくれます。チャバタ作りの工程は融通が利くので、休暇中に作るのに理想的です。何か用事ができて、パンを予定通り焼き上げる時間がなくなっても、元種やパン生地を 1 日冷蔵庫に入れておいて、後で作ることができるのです。あるいは、あまり驚くほどのことではありませんが、生地をこねたり伸ばしたりする間隔を短くしたり長くしたりして、調理時間を増減させても大丈夫なのです。

 チャバタはざっくりまとめて 1 つの大きな塊で焼かれることがありますが、細長いなだらかなドーム型、またはカフェやパン屋でサンドイッチによく使われている四角いロールの形に作られることが多いです。1980 年代に、イタリアのパン職人がサンドイッチ用のパンとしてあちこちで見られたフランスのバゲットに対抗して開発したのが、このチャバタです。フランスパンの向こうを張っても勝ち目はほぼないにもかかわらず、チャバタはその風味と作り易さで知られるようになり、直ぐに世界中で認められるパンとしての地位を確立しました。

 チャバタを垂直に切ると、断面に大きな空気穴が見えますが、これがチャバタの特徴です。大きな空気穴は、湿った生地を焼いたためにできるのです。チャバタのレシピは水の重量含有率が高いので、生地は作り始めから最後までべたべたしています。生地を扱いやすくするために、最後の成形は小麦粉をしっかりまぶした台の上で行います。さらに、パンの上に小麦粉を振りかけるので、焼き立てのパンは少しほこりをかぶったように見えます。

 大きな穴、なだらかなドーム型、小麦粉のかかった表面がチャバタの見た目の特徴ですが、チャバタが世界で最も素晴らしいパンの 1 つと評価されるのは、その美味しさのおかげです。チャバタはちょっとした技から風味を引き出しています。小麦粉にイースト全てを一度に入れて、早く膨む、口当たりの柔らかい中間的な風味のパンを作るのではなく、チャバタは理想的には 18 20 時間かけて熟成させた「予備発酵種」と言われるイースト元種で作ります。発酵がゆっくり進むように、予備発酵は少量のイースト菌と冷水で始めます。時間をかけた発酵によって、スターターは焼きあがったパンに歯ごたえのある食感を高めるだけでなく、風味も生み出してくれます。このレシピは、同量の小麦粉と水にイースト菌を 2 3 つまみ入れて始めるポーリッシュ法(液種法)で行っています。

  

機器

  • 中型のミキシングボウル
  • ペストリーブラシ
  • 大型のミキシングボウル 2 つ、または、ボウル 1 つと 12 x 7 インチ (30 x 18 cm) のプラスチック容器
  • 水を入れたボウル、生地を扱う時にスパチュラと手を湿らすため。
  • 生地のスクレーパー(推奨)または硬質のスパチュラ
  • パーチメント紙 
  • ベーキングトレイまたはストーン

 

チャバタをむしゃむしゃ食べる 

 チャバタは個性的なパンで、さまざまな食べ方ができます。焼き立てのチャバタは、朝食にはバターとジャムを添えて、午前や午後ならコーヒーやお茶と一緒に頂くのが良いでしょう。乾燥して硬くなったチャバタを朝食のシリアルのように細かく砕いて、ミルク入りの濃いコーヒーに浸して食べるのが私の秘かな楽しみです。

 私の娘はチャバタのガーリックパンが好きですが、私はクルトンにするのが好きです。また、しっかりした食感のチャバタを詰め物にすることも好きな私は、クリスマスの七面鳥の詰め物にするためにいつもチャバタを焼きます。さらに、薄く切ったチャバタをオーブンで乾燥させて、チーズやサラミのクラッカーとして利用しますし、バターで揚げた薄切りのチャバタはスープによく合います。

 焼いたチャバタにニンニクをこすりつけて、トマトを載せれば、完璧なブルスケッタの出来上が りです。乾燥したチャバタをすりおろせば、パン粉にもなります。もちろん、チャバタはいろいろなスタイルのサンドイッチにも使えます。

 

伝統的なチャバタのレシピ 

 伝統的なチャバタパンを作るには時間がかかります。私が推奨するようにポーリッシュ種を 18 20 時間寝かせて熟成させると、パンが完成するまでに合計で 24 時間以上かかります。ポーリッシュ種を寝かせる時間は、台所の温度に左右されますが、全工程で 19 30 時間ほどかかると思っておいてください。イーストは温度に敏感なので、種を 18 ℃ の台所で寝かせておけば 27 ℃ の台所で寝かせるより長く時間がかかります。ポーリッシュ種は涼しい環境で発酵させるものですが、パン生地は暖かい方が良くなります。出来上がり量:大きなパン 1 斤。細長いパン 2 斤分、あるいはロールパン 4 8 個。

 

ポーリッシュ種

  • 無漂白の小麦粉(できればパン用の小麦粉)・・・300ml (150g)
  • 冷水・・・120ml プラス大さじ 2(合計 150g
  • ドライイースト・・・3 つまみ (0.3g)

 

パン生地 

  • 温水・・・240ml(約250g
  • 無漂白の小麦粉(できればパン用の小麦粉)・・・600ml 350g 強)
  • 塩・・・小さじ 2 (10g)
  • ドライイースト・・・小さじ 2 強(6g
  • 好みでオリーブオイル・・・大さじ 2 (30g)
  • 料理油
  • 振りかけるための小麦粉少々

 注釈:精度を高めるには、デジタルキッチンスケールで材料を量る。チャバタ生地は小麦粉に対して水の含有率が高いことが特徴だが、容量を測るだけでは不正確になるので、本当のチャバタを作るには、材料の重さを量る必要がある。

 

作り方:

  ポーリッシュ種を作る。中くらいの大きさのミキシングボウルに小麦粉、水、イーストを入れて混ぜる。覆いをかぶせ、室温で 12 20 時間、できれば少なくとも 18 時間は寝かせる。長い時間寝かせれば寝かせるほど、焼き上がったパンの風味は豊かになる。ポーリッシュ種の発酵状態は、匂いと味で判断する。ポーリッシュ種の発酵が始まると、広がって泡の塊となり、甘くて複雑な香りを放ち始める。

  パン生地を作る。ペストリーブラシで大きなミキシングボウルまたはパン発酵器に食用油を塗り、用意しておく。

 ポーリッシュ種に温水を加える。手を使ってボウルについたポーリッシュ種をはがす。ポーリッシュ種を油を塗っていない大きなミキシングボウルに移し、小麦粉、塩、イースト、好みでオリーブオイルを加える。手または生パンフック(電動ミキサーでパン生地などをこねるのに使うフックの形をした金具)で混ぜる。混ぜ合わせたら、油が塗られたミキシングボウルか発酵器に生地を移す。覆いをかけ、泡がぷくぷく出て 2 倍に膨らむまで、発酵モードの約 27 ℃ に設定したオーブンの中なら約 2 時間、もう少し涼しい台所でなら 4 時間以上寝かせる。

  最初の伸ばしと折り曲げ。この工程で、べとべとした水分の多いパン生地の中にグルテンを作り出していく。動画で確認したい方は、ユーチューブの「stretch and fold Peter Reinhart(ピーター・ラインハートの伸ばして折り曲げる)」を参照のこと。

 作業台に軽くオイルを塗り、水を入れたボウルを横に置いておく。作業台の上でミキシングボウルか発酵器を逆さまにして、生地を作業台に落とす。容器から出した生地は、作業台の上に広がる。作業台にくっついた生地をはがすため、必要に応じてスクレーパーと手を水につけておく。生地がどんな形に広がっても、4 つの辺があるとイメージする。迷いのない素早い動きでスクレーパーを生地の片側の下に入れ、端を持ち上げて伸ばし、反対側に折り曲げる。この作業を 4 つの辺全てに行う。たいてい、この最初の伸ばしと折り曲げ工程は少しぐちゃぐちゃになるが、続けて行うこと。 辺の伸ばしと折り曲げ作業が終わったら、両手で生地をつかみ、素早く裏返す。私はこの動作をもう一度繰り返すことを好むが、裏返しの繰り返しは、最初の伸ばしと折り曲げ工程だけに限る。生地をボールに戻し、覆いをかける。30 分間寝かせる。

  伸ばしと折り曲げの繰り返し。30 分間隔で、伸ばしと折り曲げの工程をさらに 3 回繰り返す。伸ばしと折り曲げ工程が終わるたびに、生地をボウルか容器に戻し、覆いをかぶせる。工程を繰り返すにつれ、生地はどんどん硬くなっていく。伸ばしと折り曲げの工程の間隔は変えることができる。間隔を短くする人もいれば、長くする人もいる。私は 30 分間隔を好むが、それはこの間に生地が膨らみ、風味が増すからだ。伸ばしと折り曲げ行程の回数を書き留めておき、各工程後にはボウルか容器に必ず覆いをかぶせること。

  成形前の発酵。最後の伸ばしと折り曲げ工程を終えたら、生地を入れたボウルに覆いをかけ、ほぼ 2 倍の大きさに膨らむまで、1 2 時間寝かせる。この時間は、部屋の温度によって変わる。

  成形。作業台にたっぷりと打ち粉をして、生地がまだボウルに入っている間に、粉を振りかけておく。打ち粉をした作業台の上に、生地を置く。生地の上にも小麦粉を振りかけ、生地を上から押して、大きな空気穴の空気をやさしく抜いていく。スクレーパーか手で、生地を普通のノート程度の大きさ(約 22 × 28 cm)の長方形に成形する。生地をやさしく押したり伸ばしたりして。

 一般的なチャバタには次のような形がある:

 特に決まった形のない大きな塊のパン。この方法は一番手間がかからないが、形はでこぼこして定まらない。私が気に入っている地元のパン屋は、チャバタをこの形にしている。

 長いローフパン。スクレーパーを使い、長方形になるよう長く切り分け、2 つの細長いパンにする。生地がべたべたしているので、切り分けたら、それぞれを直ちに少なくとも 2.5 cm は離しておかないと、再びくっついてしまう。

 ロールパン。長いローフを切り、それぞれを好みの同じサイズに分ける。チャバタのロールは四角っぽいことが多い。

 希望する形にできたら、スクレーパーか手を使って生地の外側を少し持ち上げ、生地がくっついている底の下に、ぐるりと一周小麦粉をつける。

  最終発酵。天板にベーキングシートを敷く、あるいはベーキングストーンを使うなら、ベーキングシートをカウンターに敷き、焼く準備ができたら、予熱したストーンにベーキングシートと生地を移す。生地の成形ができたら、素早く作業台から生地を持ち上げ、ベーキングシートの上に置く。覆いをかけて、15 分間寝かせると、再び膨らみ始める。チャバタ生地は大雑把に扱っても大丈夫で、この段階であまり生地が膨らんでいないように見えても、オーブンの中で膨らみ続けてくれる。

  焼き上げ。オーブンを約 220 ℃ に予熱し、金属の天板か予熱しておいたベーキングストーンの上でチャバタを 35 分間、あるいはパン中心部の温度が 88 99 ℃ に達するまで焼く。焼き上がったパンはワイヤーラックに移し、スライスするまで 1 時間以上冷ましておく。 

 

 

ウィリアム・ルーベル (William Rubel) 11 歳の時からパン作りをしていて、趣味は即興でパンを焼くこと。野外でオーブンをよく使い、伝統的なレシピを試している。彼は「Bread:A Global History(「パン:世界史」)の著者であり、世界有数のパン歴史家。

 

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