先住民族に根付く気候対応農法(Climate Farming)

マザーアースニューズ 自然 自給 DIY

アメリカ先住民が実践してきた伝統的な土地管理技術が、より回復力の高い未来への道を切り開いている。

文:ジェフ・マイヤー(Jeff Meyer)

写真:チャールズ・グッディン(Charles Goodin)とミカエル・メイナード(Mikael Maynard) 

翻訳:沓名 輝政

 

 「大人になったら農家になりたいと思っていました」と語るのは、カリフォルニア大学バークレー校准教授のエリザベス・フーバー。「でも(90年代のことでしたが)進路指導の先生は、それはよくないとおっしゃいました。だから私は、農家の人たちと一緒にいて、農家のことを書く教授になるために、とても長い間、大学に通っていたのよ」

 フーバーはモホーク族の血を引いており、ネイティブアメリカンの環境衛生と食料主権の専門家でもあります。彼女は、ネイティブアメリカンは農業と複雑な関係にあることが多いと指摘します。「先住民族のコミュニティの多くは、何世代にもわたって農業を営んできましたが、その後、環境だけでなく関係者にも悪影響を及ぼす方法を押し付ける権力者に邪魔されるようになりました」と彼女は言います。「慣行農法は、気候に悪影響を与えるだけでなく、人にも悪影響を与えます。近くに住むコミュニティや下流の人々にとっても、水路を破壊したり、デッドゾーンを作ったりと、数え上げればきりがありません」

 ジョニー・アップルシード・オーガニックでは、従来の農場を二酸化炭素を排出しないオアシスに変えることに情熱を注いでいます。気候対応農法の原則はこれまでになく重要なものですが、新しいものではありません。実際、私たちが今日の農場で実践していることの多くは、北米にヨーロッパ人が入植する以前の先住民族の農業にルーツがあります。

 

北アメリカの農業知識の基礎

 コーネル大学統合植物科学部名誉准教授のジェーン・マウント・プレザントは「先住民は何かにつけて評価されることが少なく、原始的で後進的だと思われがちです」と言います。

 現在の持続可能な農業や有機農業の手法の多くがネイティブ・アメリカンの手法に由来することを考えると、マウント・プレザントの言葉には違和感があります。マウント・プレザントは、タスカローラ族の血を引く、先住民族の農業の専門家です。ジョージア州フォークストン近郊にあるオーガニック・ビレッジのクライメイト・ファームで採用しているいくつかの原則の起源について、彼女は語ってくれました。

 「先住民族は、現在直面している深刻な問題に対処するための重要な知識の基盤を持っていることを認識することが重要です」とマウント・プレザントは言います。「私たちが直面している問題や課題を改善するために役立つ、伝統的な農地の扱い方や、土壌や作物、植物の管理方法があるのです」

 ここでは、北米の先住民族の実践から発展した気候対応農法をいくつかご紹介します。

 

表土の撹乱を最小限に抑える(不耕起または最小限の耕起栽培)

 実は、現代の気候対応農法の基本理念のひとつは、コロンブス以前の先住民の農業が成功した理由でもあります。北米で農業を営んでいた先住民は、もともと不耕起農法を行っていたことをご存知でしょうか。

 しかし、そのような呼び方はしなかっただろうとマウント・プレザントは説明します。ネイティブ・アメリカンが食物を育てる唯一の方法だったからです。それは、ヨーロッパが植民地化する前の西方地域には、役畜化された動物がいなかったからです。役畜もなければ、鋤もなし。しかし、いずれにしても、耕すことは、コロンブス以前の北米の先住民の農業には有利ではなかったでしょう。同時期にヨーロッパ人が(鋤を使って)栽培していた小麦やライ麦のような種の小さい作物には耕すことが有効でしたが、ネイティブ・アメリカンの主食となる作物には耕すことのメリットはありませんでした。例えばトウモロコシは、種子のサイズが大きいため、荒れた環境でも発芽して地表に出てくる能力が非常に高いとマウント・プレザントは言います。

 ネイティブアメリカンの多くは、耕す代わりに手工具で作物を植え、管理していました。このことはデメリットではなく、北米の先住民族の農業が持続可能で収穫量が多かった最大の理由であり、植民地化されたアメリカ先住民族にヨーロッパの農法が押し付けられた後には、その成果が損なわれたのです。

 ジョニー・アップルシード・オーガニックでは、気候対応農法の主要な原則として、最小限の耕起を行っています。必要以上に耕さないことで、重要な栄養素を奪ってしまう鋤を使った農法に比べて、土壌の肥沃度を長期間維持することができます。

 

層状に隣接して複数の種を植える

 害虫の駆除や土壌の質の向上のために、複数の種類の植物を1つの場所に植える「ポリカルチャー」は、コロンブス以前の先住民族の農業で確立された方法であり「気候農法」には欠かせないものの1つです。。。

 

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