自営農場のクーガー[ピューマ]

マザーアースニューズ エネルギー 食

観察者の目を持ち用心していれば、自分と家畜とペットの安全を守りながら農場まわりに住むクーガーと共存できる

 文:クリスティーナ・セレシャンコ(Kristina Seleshanko

翻訳:浅野 綾子

 

 長い間夢見ていた田舎の土地に引っ越してきた当初、もっとも楽しみにしていたことのひとつは自然の中を歩くこと。ほとんど毎日子供たちと犬を集めては森の中を歩き回りました。とはいえそれも不穏なことが起きた、ある午後までのことでした。

 子どもたちは池でカエルをつかまえていて、私はサーモンベリー[北米西沿岸産のキイチゴの 1 種]をつまんで食べていたところ、突然、飼い犬が唸り声をあげはじめました。飼い犬の首の後ろの毛は逆立ち、私には見えない何かをじっと見ています。空気をかいで、もう一度唸り声をあげました。そして、私がそれまで見たことがなかった、そしてその時を最後に見ることがなかったことをし始めました。首につながれた鎖をひっぱりはじめ、私を家に戻る方向にひっぱりはじめたのです。その間中、ずっと吠えたり、唸り声をあげたりしていました。飼い犬は私にはわからない何かがわかるのだと判断し、子供たちを集め、家へと戻ったのです。

 夫はこの話を聞いて、飼い犬が不可解な動作をした現場に歩いて行き、何が飼い犬を動揺させたのか手がかりを見つけられるか見てみました。あることを発見して夫の身体は凍りつきました。クーガーのつめの跡が木に残っていて、さらには険しい土手の奥まった場所にクーガーの巣穴があったのです。私たちはこの地域にクーガーがいることは知っていましたが、その時はじめて家や家畜のすぐそばにいるのだと知りました。

 「マウンテンライオン」、「ピューマ」、「パンサー」、「ヤマネコ」など、クーガーには 80 以上の名前があります。どのように呼ぶにしても、クーガーは北アメリカで最大のネコ科動物のひとつで、大人のクーガーの体重はおおむね 2790 キログラム程度です。(最も重いクーガーの記録はなんと 276 ポンド(125 kg)だったそうですよ!)立ち上がることもでき、その場合、肩の高さで約 6090 センチメートルになります。身体の全長は 2.4 メートルです。

クーガーは最上位捕食者で、およそ 50200 平方マイル(128412 平方キロメートル)の大きさの縄張りで狩りをします。ではこの大きなクーガーは人間にとってどの程度危険なのでしょうか。どうすれば家畜をクーガーから守れるのでしょうか。

 

クーガーがいる兆候

 マウンテンライオン財団(Mountain Lion Foundation)の CEO デブラ・チェイス(Debra Chase)のような専門家は、 クーガーは通常人間を恐れ、人間が獲物になるとは判断しないと言います。しかし、時折人間はクーガーを驚かせてしまいます。走ったり自転車を漕いだりするような素早い動きは、人間を獲物のように見せ、時としてクーガーの攻撃を招きます。子どもは小さく、動きも素早いため、より狙われやすいかもしれません。それでも、クーガーが人間を襲うことは普通は起こりません。家畜やペットの方がクーガーの獲物になりやすいのです。郊外であっても、クーガーが、たとえばニワトリや子犬を襲った前例もあります(稀ではありますが)。

 クーガーが敷地にいるサインとしては足跡もあります。ケビン・ハンセン(Kevin Hansen)の本 『CougarThe American Lion(クーガー:アメリカライオン)』によれば、クーガーの足跡は、体重が均等にかかるので通常ははっきりついているそうです。大人のクーガーの足跡は直径が 810 センチメートルで、爪痕はありません。クーガーの肉球にはかかとの後ろに 3 つの丸いふくらみがあり、M 字型の跡が残ります。クーガーが歩くときは、後足で前足の跡を踏み、つま先は左または右の斜め方向を向きます。対照的にイヌ科の動物の足跡はかかとの場所は丸いへこみが 2 つしかありません。普通、かかとの端が細長く地面にめり込みます。イヌ科の動物の足跡には爪痕がはっきりと残り、足跡が右か左に斜めに向くことはありません。

 クーガーの糞も見るかもしれません。両端が丸まったかたまりがいくつか連なっているような形で、いつもではありませんが時に端が「しっぽ」のようになっています。大人のクーガーの糞では、両端が丸まったかたまりひとつが直径約 2.53.8 センチメートルです。糞の中に骨や毛が見えることが多いです。

 クーガーが爪でひっかいた跡は、私たちの敷地内で見たようなものだと、地上およそ 1.22.4 メートルの高さで、木の下に向かって数フィート[12 メートル] の長さにわたってついています。熊も爪でひっかくことがあることを覚えておいてください。熊の場合はクーガーよりも木の樹皮をはがす量が多く、爪のサイズもたいていはクーガーよりも大きいです。シカやワビチ、ヘラジカも同じように木に爪痕を残すことがあります。

 さらに、クーガーの鳴き声を聞くことがあるかもしれません。しかしいつもハリウッド映画で聞くような鳴き声だとは思わないでください。たしかにクーガーの鳴き声は誰かが叫んでいるように聞こえる場合もありますが、それよりもずっと捉えにくい鳴き声もたくさんあるのです。実際、鳥の鳴き声と間違えられることも多いです。クーガーと確認された鳴き声をオンラインで聞いておけば、クーガーの鳴き声と日常的に聞かれる野生動物の音とを区別するのに役立つかもしれません。

 最後に、動物の死体が一部食べられて、泥や枝、葉っぱがかけられている場合ですが、これはクーガーが狩りをして獲物を食べに戻ってくるサインです。

 

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