自然農園を営む技術を学ぶ、収穫物を地域に還元、まとめ買いで時間とお金の節約、資源の利用を最小限におさえるなど課題についての本をただ読むより、新しい作業小屋や菜園の温室、家畜小屋を建てたりしながら読んでみよう
Photo by Tasha Greer
翻訳:浅野 綾子
自営農園を営む新たな技術を身につける
指導者になってわかったことは、実際にやりながら学ぶ方が早いということ。自営農園の技術習得のほとんどは、実地研修を受けることが1番。学びながらプロジェクトの完成にたずさわることができます。自営農園を営む者が学んでおくべきいくつかの欠かせない課題として、代替エネルギーの調達や温室作り、菜園作業があります。あまりお金をかけず、効率的に自営農園にかかわる技術を向上させるにはどうしたらいいか、以下は私から読者のみなさんへの提案です。
本で学ぶ:本は、新しい技術を学ぶのに最も安上がりで効率的な方法です。課題とすることについての本をただ読むよりは、新しい作業小屋や菜園の温室(右手にある写真は私のものです)、家畜小屋を建てたりしながら読んでみましょう。作業をすすめながら、学んだことを実際にやってみるのです。間違えたり、細かなところでつまずいたら、インターネットで調べたり、新しい技術について納得できるまで違う本を見る時間をとりましょう。建築作業やガーデニングなど時間をかけて学ぶ技術の習得に本は役立ちますよ。
コミュニティカレッジの授業に参加する:コミュニティカッレジのほとんどが、家具製造やワイン作り、ビール醸造、温室の骨組み作り、溶接などの個人の生活を豊かにするクラスを提供しています。クラスの多くは200ドルもかからず、実践体験込み。作業場までの交通の便も含まれていますから、実践プロジェクトを完成させることもでき、自分用の道具をそろえる前に習い覚えた技術を使って楽しめます。
見習いになる:人類の歴史の大半において、高等教育は経済的に恵まれた人たちのものでした。それ以外の一般庶民は、実際に仕事をしながら学んだのです。この方法は、実践的な自営農園の技術を身につけていくのに今日においても威力を発揮する方法です。無報酬で、または安いバイト料でいいからといえば、小さな会社の多くは喜んで技術を教えてくれるでしょう。一方、見習いは責任をもって行うもの。だからこそ、技術の訓練は教える側だけでなく、あなたにも役立つのです。短い期間の見習いには、季節労働や季節のプロジェクトを考えてみましょう。剪定、果物やナッツの収穫加工、単発の建築プロジェクト、イベント準備、春に行う羊毛刈り、ハチミツ採取やハチの巣箱の越冬準備などがあります。
ワークショップの開催:ワークショップに出かけるのは、私にとって現実的ではありません。家畜がいるからです。そのかわり、自分の農園でワークショップを開くのがお気に入りです。昨年は、食肉専門家で「The Ethical Meat Handbook:(仮題:エシカルな肉の手引き)」の著書で受賞した(そしてマザーアアースニューズフェアの講演者でもある)メレディス・リー (Meredith Leigh) を迎えて、私たちの豚のと畜 <<個人的にこの言葉のほうが殺の字を使わないので好きです。>> を手伝ってもらい、食肉加工からソーセージ作り、肉のキュアリングまで教えてもらいました。似たようなワークショップに出かけて、その間自分たちの自営農園の世話を誰かに頼むことと比べたら、彼女に農園に来てもらう方がお金はかかりませんでした。その上、友人や家族と一緒にワークショップに参加できたんですよ。
人を集める:新しいことを学べるのと交換にそれぞれの得意なことを教えてもらえるよう、友だちみんなに声をかけて家に呼びましょう。定期的に開催するクラブの形でもかまいませんし、キャンプファイヤーを囲んでの食事やストーリーシェアリングをする特別な週末としてでも良いでしょう。参加者が新しい技術を学ぶだけではなく、コミュニティー作りにもなりますよ。
ターシャ・グリア
ノースカロライナ州ロウガップ
鶏小屋に変身
鶏の外敵がたくさんうろつく私たちの地域。そこに、犬のグレイシー、家猫のムーンシャドー、めんどり2匹にバンタム・コーチンのおんどり1匹と一緒に住んでいます。そんなわけで、洗濯機が古くなっていよいよ何かに使おうかという時、夜の鶏小屋にうってつけだろうと考えたわけです。
洗濯機の内側の部分を外して、取り外しのできる屋根と中敷の床用に合板を切りました。わらを敷き詰めたら、できあがり! 窓もついた安全な鶏アパートです。鶏たちの囲い場と小屋は、家のテラスの一角にある覆いをつけた場所に設置しているので、アパートから出ても大丈夫なんですよ。
今では鶏はみな大きくなりましたが、これまでのところ外敵にやられたことはありません。毎晩、手作りした傾斜台を鶏たちが上ったらアパートのドアを閉め、おんどりが鳴きはじめる翌朝にドアを開けてやります。
サンドラ・ウォーターズ
カリフォルニア州バーント・ランチ
ジーンズのリサイクル
ジーンズの製造は環境にあまりやさしくありませんよね。だからできるだけ多くの使いみちがあればと思っています。小さなラグ作りは、古くなったジーンズとタオル使いにもってこいです。こうしたラグをたくさん作るには家族の分だけでは足りませんが、使い古したジーンズをよく捨てるからと喜んで分けてくれる知り合いをみつけました。ガレージセールやリサイクルショップもお宝の見つけ場所です。小さなラグの型紙は、マヤ・ドネンフェルド (Maya Donenfeld) の「Reinvention: Sewing with Rescued Materials(仮題:もう1度使えるーいらなくなった布で縫う)」の本にあるものを使用。デニムのはぎれをつなぎあわせるキルト作りに似た作り方です。私はデニムのはぎれを使い古したタオルで裏打ちして補強しています。さもなければごみ処理場行きの使い古した布使いに、とても良い方法ですよ。
カレン・ドーソン
カリフォルニア州キンズバーグ
スープストック用に料理くずを冷凍
冷凍庫に小さなゴミ袋を入れています。食事作りの時に、野菜の切れはし、ハーブの茎、ガラ、肉の小片などすべて袋に入れます。鶏がらスープをつくる時、冷凍した袋の中身を鶏がらと一緒に大きな鍋にいれます。無駄なく使えて、香り豊かなスープに驚きのベースになりますよ。
リズ・クラーク
ニュー・ブランズウィック州ジェムセグ、カナダ
ふるい分け不要のミミズコンポスト作り
息子がふるい分け不要のミミズコンポスト容器を作ってくれました。腐食耐性のある木材を使い、底には金属の屋根材がしいてあります。少し傾斜がついていますから、19リットルのバケツで液肥が流れるようにできを受けられます。高さを出すのに足がついているので私には使いやすく、金属の屋根がちょうつがいでついています。
堆肥のふるい分けをしなくてすむように、息子が容器の真中に金網の仕切りをつけてくれました。容器の片側に生ごみをいれ、ミミズ堆肥がかなりたまったら、もう片方から生ごみを入れはじめます。はじめは、ひとすくいほど掘ってミミズを一握りか二握り投入します。残りのミミズは、金網をくぐって生ごみへ。ミミズ堆肥がたまっている方は、ミミズがいなくなる仕組みです。
私のところでは、ミミズは葉っぱや細かくした紙、台所の生ごみなどを食べます。容器から出た液肥は、野菜の定植時や果樹へのごちそうに使います。
ローラ・ジョンソン
ジョージア州ファイエットビル
ビンテージのガラス容器をきれいに
最近、地元のリサイクルショップで、ビンテージの大きくて素敵なガラスキャニスターを4ドルで買いました。年季が入って汚れもつき、くもっていたガラス。私が使いはじめるには、入念なクリーニングをしてきれいにしておく必要がありました。以下に紹介するのは、ガラスクリーニングの方法です。お手元の使い込んだ古いビンテージ物のガラスが、まるで新品のように輝きを取り戻します。これは、花びんからランプまで、あらゆる種類のガラス製品に私が使っている方法です。
1. キッチンカウンターに、ハンドタオルを広げる。
2. ハンドタオルの上に、ガラス容器をおく。
3. 小さな器に、レモンの絞り汁と重曹で濃いペーストをつくる。ペースト状になるまで、それぞれ少量ずつ足していく。
4. 小さな布切れを使い、洗っていない乾いたガラス容器全体を、このペーストでみがいていく。これで、積もり積もったどんな汚れや薄い膜もきれいになる。容器の中も外もみがくこと。すみずみまで磨くのに、やわらかい歯ブラシを使っても良い。
5. 温水か熱いお湯で、磨いたガラスをすみずみまで洗い流す。
6. プラスチックの洗いおけに、熱いお湯を満たして皿洗い用の石鹸をいれる。
7. 洗い流したガラス容器を石鹸水の中にいれ、布切れでやさしく洗う。洗い終えたら、熱いお湯で流し、自然乾燥する。
メリッサ・マクドナルド
ニューヨーク州ユーティカ
卵のからで堆肥作り
堆肥の山に足す生ごみを残らず集めるのに、プラスチックのコーヒー容器をキッチンにおいています。卵の殻は堆肥作りの材料に良く合うとわかっているのですが、殻は簡単には分解されないんですよね。そこで今使っているのは、小さな口を折りたたむサンドイッチ袋。卵の殻をつぶして袋に直接いれ、殻を十分粉々にして、かけらをキッチンのコーヒー容器に入れるのです。散らかしませんし、手間もかかりません。粉々になった殻は、堆肥の山に直接足したり、そのまま自家菜園にもっていくこともあります。
パトリシア・コスタース
アイオワ州ロック・バレー
黄麻布でニンジンの芽だし
ニンジンの芽だしをよくするのに黄麻布が最適だとわかりました。黄麻布をかぶせても光は種まで届きます。種を動かすことなく湿気を保つことも簡単。黄麻布は、種まきした上にかぶせる前に、十分水につけておきます。
種を動かさないようにしてかぶせるには2人でした方がよいかもしれません。私は角をマルチシート押さえで留め、1日1回は水やりし、布目から緑の葉が出てくるのを待って黄麻布をはずします。
セリア・デ・フランク
カリフォルニア州ビッグ・ベアー・シティ
ミニマリストのビン詰め
時々、少量をビン詰めしたい時があります。大きな湯煎鍋を使いたくなくて、広口びん1個だけをビン詰めする上手いやり方を思いつきました。アスパラガス用の高さのある細い深鍋を使うんです。1個の広口びんが収まり、中の金属バスケットがびん支えになります。あとは説明書のとおりに準備して、いつものびん詰めの手順で作るだけ。簡単ですよ!
トレイシー・チャレフ
バーモント州ジョンソン
わかちあいの菜園温室
最近、農場をやめて地方のコミュニティに引越しました。以前は収穫物を売りにファーマーズマーケットに行っていましたが、今はボランティアに専念したいと思っています。自分たちで育てた野菜のほとんどを地域にある教会の青年部やフードバンクを通して寄付しています。地域の病院や図書館、ウェルネスセンターに花も寄付しているんですよ。
新しい住まいで最もやりたいことの1つは温室を建てることだったので、縦横約300x370cmの温室キットを購入しました。基礎づくりと下水溝を設置するのに、縦横約370x550cm、深さ約30cmの地面を掘削。それから石灰岩を敷き詰めました。
枠にはめ込む窓用パネルの補強にはシリコンを使うことに決めました。その後、約0.6ヘクタールの菜園になるよう温室を 300cm 拡張。家畜用のフェンスと、支柱用に 4x6 材を使用しました。温室を組み立てたあとでヒマラヤスギの木材を使ってベンチも作り、換気扇も取り付けたんですよ。かかった費用は全部で約1,000ドルでした。
デニス・ジョンソン
カンザス州マウンドリッジ
買い物を活かすまとめ買い
特定の食べ物をまとめ買いすれば、頑張っている生産者を応援する機会をつくることになる一方で、時間や包装材、買い物の時間を節約するのにも役立ちます。私たちは、ほとんどの食べ物を自営農園で自給していますが、小麦粉や砂糖、塩、乾燥パスタ、ナッツのような台所の必需品は他から買わなければならないんです。
こうした必需品はまとめ買いすれば、普段買い物に出なくてすみますし、包装材の利用を減らすこともできます。食べ物に支払うお金を、卸業者にではなく、もっと生産者の手にわたるようにもできるのです。以下に、自営農園での暮らしを背景にしたまとめ買いと大量の食べ物を管理するヒント、考慮すべき点を書いてみました。
自分が何を、どれだけ、どの季節に食べるのかを知っておくことで、まとめ買いを最大限効果的に活かせますよ。私たちの場合、春の終わりから夏にかけて、くだものや発酵飲料の保存に、砂糖をいつもより多めに手元においておくことが多いです。夏の終わりから秋、発酵食品や肉の保存に重宝するのは塩。お酢は、1年を通して酢漬けに使えます。
いろいろな食べ物の保存期間は、消費パターンと合わせて大事なポイントです。私たちは玄米を12㎏弱買いはじめましたが、かなりの量を食べるのにもかかわらず、食べ終わる前にだめになったような臭いがしがちでした。捨てる食べ物を増やしてしまうなら、まとめ買いは持続可能なやり方でも実用的でもありませんよね。
一般的に、食べ物は加工度が高ければ(そして健康度は低くなります)、保存できる期間も長くなります。精製された小麦粉や砂糖、よく売られているパスタを考えればわかるでしょう。一方、玄米や全粒粉、ナッツは、適切に保管されなかったり、保存が長くなりすぎれば駄目になってしまうことがあるのです。
管理と保管:適切に保管すれば、まとめ買いの食料品は本当に長くもちますし、品質も維持できます。私たちが主に使っているのは、フタがしっかりと閉まるレストラン仕様の容器。レストラン向けの卸販売店で購入します。一般的なプラスチック容器よりも値段は高いですが、はるかに丈夫で長持ちします。フタがしっかりと閉まることは重要です。というのも、バクガのような害虫は、小さな隙間から入り込んで大量の食材をだめにしてしまうことがあるのです。
まとめ買いの食料品を一時的に冷凍することで、すでに中にいるかもしれない害虫の卵や幼虫が殺せます。例えばナッツのような、多量で全部を食べ終わる前に駄目にしてしまうかもしれない食料も冷凍します。よくするのは、1回に1容器取り出して解凍できるよう小さな容器に小分けにすることです。
購入先:地域によっては、業務用の量を仕入れできる食料品なら、食料品店や健康食品店でまとめ買いできることがあります。たいてい割引があるでしょう。ノーブランドの食料品の多くをこの方法で注文しています。砂糖や塩、レーズン、パスタなどです。
一方で、まとめ買いの良いところは、誠実な生産者や生活協同組合から直接購入できることです。応援したい生産者に直接お金を送ることができるのです。
地元で買うのにふさわしい食料品(旬のフルーツのような)は地元で購入しますが、応援に値する貴重な食べ物を生産しているなら、国内の他の地域や国外の生産者からも、私たちは喜んで購入します。直接生産者に大量注文するなら、大きな荷物の受け取りが確実にできるようにしておきましょう。雨の中に置き去りにされた小麦粒の大袋なんて誰も欲しがりませんから。
エリック・ロイター
ミズーリ州コロンビア
大きくて味のよいトロンボンチーノかぼちゃを育てて
トロンボンチーノはイタリアのカボチャで、明るい黄緑色、まろやかな味わいながら旨みがあり、ズッキーニよりもかたいです。つるに残しておけば冬のカボチャとして収穫できるそうで、味はおそらくバターナッツに似たようなものではと思います。思い立って種苗店で種を買い、金網のフェンスに沿って鉢植えしました。つるが地面を這っても、あわよくばフェンスをつたっても問題のない菜園内の使われていない広い場所です。
わかったことは、このカボチャは大豊産のおばけだということ。馬のように元気です。スカシバガの幼虫にもやられず、地面に触れればどこにでも根を張ります。害虫や病気は見当たりませんでした。このカボチャはひたすら伸びます。横に這って、フェンスを上って、越えて、なんとお隣の敷地にまで入ってしまうのです。
収穫は、20から25cmほどの小さなうちがおすすめです。この方法のとおりに遅れず収穫できなくても、心配はご無用。私も収穫しそこなった大きなカボチャをいつも見つけています。60cm強のものやそれ以上になっても実は柔らかですよ。ここサンディエゴの酷暑も、収穫量に影響はない様子。ただ水やりをするだけで育ち続けるのです。
リサ・ゴールドバーグ
カリフォルニア州エルカホン
ボトルや広口びんに手書きラベル
ボトルや広口びんの製品、企業は今ずいぶんとたくさんの情報を書いていますよね。字もどんどん小さくなっています。香辛料や薬のびんを読むだけなのに、その度「老眼鏡」をかけるのは疲れてしまって、道具箱にマスキングテープやフリーザーテープを1巻常備するようになりました。こうすれば、大きな文字でボトルや広口びんにラベル書きできます。見た目はよくないかもしれませんが、ずいぶんと時間も節約できますし、いらいらも抑えられます。農的暮らしには大切なことです。薬のボトルには特にお役立ち。ラベルに用量を直に書けますから、真夜中にもメガネを探す必要がないんです。
デボラ・コールダウッド
ニューヨーク州プラッツバーグ
防虫・防獣フェンス
夫と私は、自給用と小さなCSA(地域支援型農業)のメンバーへ販売するために、都会で小さな菜園をしています。コストを抑えられないかと、菜園でできる斬新なリサイクル方法を探しています。今春、私たちが頭を抱えたのはリスとウサギによるスイスチャードの食害と、イラクサギンウワバによるアブラナ野菜の食害。つぶした赤とうがらしを撒いたり、他にも安上がりな方法をためしましたが駄目でした。そこで、古い溶接ワイヤーフェンスを再利用し、適当な長さに切ってアーチ型 <輪も良いですが、円筒を想像してしまいました。四隅を石で固定しているので、アーチ型に曲げたと判断できます。>にしました。友人からもらったチュール生地を輪にかぶせ、食害をうけた植床に設置。落ちていた大きな石で角を固定しました。このアーチ型が効いて、野菜が収穫できる大きさになるまで害虫・害獣にやられずにすみました。
エミリー・イオール=ウォルターズ
ミズーリ州カンザスシティ
たのしい暮らしをつくるマザーアースニューズ
Country Lore: April/May 2018
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