大地に根ざしたプール|アースバッグ建築

マザーアースニューズ 自給 DIY 自然 アースバッグ

この簡単な自然建築の技術を学ぶことで、家族や地域の人々が楽しめる低コストのプールを作れる。

 

文と写真:モーガン・キャラウェイ(Morgan Caraway) 

翻訳: 沓名 輝政

 

 土を入れた袋、通称「アースバッグ(土嚢袋)」は、驚くほどさまざまなものを作ることができます。自然建築の 中でも最も汎用性の高いものの一つであるアースバッグは、従来の自然建築の手法では水気が多すぎるような用途に も使用できます。その代表的な例が、アースバッグプールです。

 私が携わった 2 つのプールプロジェクトをご紹介する前に、アースバッグ建築のメリットをご紹介します。

 

ゼロからのスタート

 アースバッグ構造は丈夫なので、昔から軍事要塞や洪水対策に使われてきました。「スーパーアドビ (superadobe)」と呼ばれる手法では、ポリプロピレン製のチューブを螺旋状に巻いて、各層の間に有刺鉄線を挟んだ 構造物を作ります。また、「ハイパーアドビ(hyperadobe)」と呼ばれる、ポリエステル製で網状の長いチューブを好 むビルダー(建設者)もいます。これは、詰めた土が層と層をまたいで混ざるので、層をつなぎ合わせることができま す。今回のプールでは、14 x 26 インチ(35 x 65cm)のポリプロピレン製の袋に、鉄筋を入れて安定させたものを積み 上げました。この長方形の袋は、厚さ 10~11 インチ(25~28cm)の均一な壁を作り、保護用の石膏でコーティングし た後の厚さは約 30cm になります。  無機質な土であれば、どのようなものでも詰めて使用できます。ポリプロピレン製の袋で物理的に支えられているの で、スーパーアドビやハイパーアドビのように砂と粘土の比率を決める必要がありません。伝統的なコブやストローベ イルの建築では、多くの藁が湿った泥に覆われます。この泥を十分に乾燥させなかったり、空気中の水分を吸収しす ぎたりすると、藁が腐ったりカビが生えたりします。これでは、空気の質や住む人の健康が脅かされてしまいます。し かし、一般的な土嚢袋であれば、有機物を使用しないため、そのような危険性はありません。また、チームで組み上 げる速さで壁ができるので、大人数であれば 1 日で 1 つのアースバッグ建築を設置することができます。  私たち夫婦は、2009 年に初めてアースバッグハウスを建てました。それ以来、アースシップにインスパイアされた 自分たちの家や、アースバッグのタイニーハウスなど、多くの土の構造物を手がけてきました。現在は「Sustainable Life School(サステナブル・ライフ・スクール)」を運営し、自然な建築方法を他の人に教えています。

 

湧き水のプール

 私は何年も前から、敷地内の自然の泉の下にプールを作りたいと思っていました。重力で水が移動するので、プール に水を入れるのは簡単だと思っていました(私はすべての建築物において、自然の力を利用するようにしています。私のタイニーハウスにも、重力で移動させる水や地中熱を利用した冷蔵設備があります)。 2018 年、ついに私の夢が実現しました。ここでは、妻のメアリー・ジェーンと私が、湧き水を利用したプールを作るために行った手順を紹介します。

 計画。私は小さいものを作ろうと思っていたのですが、メアリー・ジェーンはもっと大きいものを望んでいて、彼女が正しかったです。 プールの大きさに同意した後、調査を進めていくと、他にも決めなけれ ばならないことが出てきました。緩やかなカーブで深くしておくと、 プールライナーに藻が生えると滑りやすくなることを知りました。段差をつけた方が実用的だし、泳ぎ手のレベルに応じて水深を明確に分けられます。排水管用に 4 インチの長い PVC を購入し、たまにプールの水を抜く必要があるので、T 型ジョイントと排水栓も購入しました。排水管 は、プールを掃除するときに簡単に排水できるように、掘削の一番低い ところに設置することにしました。メアリー・ジェーンは、水生植物を 植えた沼があれば藻の発生を抑えられると知り、石とセメントで固めた土で沼を作ることにしました。

  掘削。私たちの家の土壌は多孔質なので、プールにはライナーが必要でした。プールの設置面積のほとんどは掘削 で作ることができたので、地元の人を雇って、彼のトラクターにバックホーを取り付けて掘ってもらいました。近代 的な道具や素材を自然建築に使うべきではないという純粋主義者には拍手を送りますが、私は化石燃料のエネルギー や合成素材を使うのは、持続可能性のためであると考えています。プールサイズの穴を手で掘るには、長い時間と大量 の汗が必要です。

 袋詰め。私たちは、学生や友人を対象としたワークショップと作業日を組み合わせて開催し、2 つのグループに分 けました。1 つのグループは袋を詰め、もう 1 つのグループは袋を配置 しました。掘削で大体のプールの形ができていましたが、場所によっては土嚢を 3 列に並べて高さを出す必要がありました。水の重さを支えるために、1/2 インチ径の短い鉄筋を土嚢の壁に打ち込み、土嚢の上に鉄筋が残らないようにしました。大きなカーブの部分では、40~60cm ごとに 60cm 長の鉄筋を入れていきました。なお、壁を支えるよう埋め戻すことでも、水側からの圧力に耐えるようにできます。。。

 

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