魚醤や肥料用の発酵魚 

マザーアースニューズ 健康 レシピ 食

自家製の魚醤(フィシュソース)で、台所にうま味のアクセントを追加し、菜園の土の栄養を増加しよう。

文:メレディス・リー (Meredith Leigh)

翻訳:北原 千絵

 

 魚醤には謎が凝縮されています。その香りから安定性、味の幅、由来、歴史まで、魚と純塩のシンプルな組み合わせは、他に類を見ない魅力的な味わいを持っています。暑い屋根の上で魚を酵素で分解させるという工夫をなるほどとは思えないかもしれませんが、よくよく調べてみると、アジア料理の定番である液体調味料は、作るのが非常に簡単で、どの味覚(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)があなたのキッチンで一番重要視されているかに関わらず、家庭では驚くほど汎用性が高いのです。魚醤の歴史、その特徴の背景にある科学、製造の近代化を見ることで、世界中の人々が手をかけた発酵の進化を知ることができます。

 

魚の歴史

 ガラム(魚醤)の最も初期の証拠は、紀元前 3 世紀の古代ギリシャ人にさかのぼります。カルタゴ人はまた、魚醤の初期の生産者であり、現代のチュニジアにある石灰岩から彫られた古いガラム工場では、最も古い生産の形跡を見つけることができます。

 この習慣が地中海から現在のガラムが見られる他の多くの地域に伝わったのか、あるいは貿易の助けを借りずに世界中の人々が自然発生的に同様の方法で魚を保存する方法を開発したのかについては、まだ推測の余地があります。ローマ帝国が支配し、地中海、ヨーロッパの多くの地域、中東に広がると、料理の伝統はそれに伴って広がっていきました。しかしこれではスカンジナビアの魚醤やインドネシアで見られるガラムの存在を説明できません。この魚醤 の古代史において言える一つ確かなことは、どこであれ魚が豊富だったところでは、ガラム(魚醤)は漁業資源の保存、そして風味と栄養を最大限に引き出すための主要な手段でした。

 

魚醤の科学

 魚醤とは、ゆっくりと加水分解された魚、またはタンパク質分解(消化)酵素の働きにより水で分解されたものです。これらの酵素は、魚の内臓や筋肉組織、魚に生息していた可能性のある微生物の酵素などに由来しています。すべての動物は、その肉の消化を助ける内因性(内部由来)の酵素を持っています。これらが役立つのは、動物が死に、自己分解のプロセス、つまり生物がそれ自体を消化するときです。

 由来に関わらず、どの魚醤にも共通する材料は、魚丸ごと、水、塩で構成されています。魚とその内臓や組織が酵素を供給し、塩は、魚が自己分解で消化される前に台無しにする可能性のある有害な微生物を排除することで安定性を提供しています。このように、世界中の魚醤の製造には、これらの基本的な素材へのアプローチがモザイク状に含まれており、それぞれの方法で、酵素と塩分のバランスを考慮しながら、それぞれの味覚や気候に合わせて製造されています。この 2 つの成分が温度と時間の点でどのような割合で配合されているかによって、風味、香り、安定性、全体的な個性など、いたるところでガラムの生き生きとした変化が生まれています。

 フィリピン、東南アジア、イタリアの約 50 種類の魚醤を分析したところ、塩分含有量は 1030 % の範囲であり、全体的なタンパク質含有量は大きく異なり、化学的・生物学的組成は似ているが魚醤ごとに異なることがわかりました。世界中のガラムのすべてのバリエーションを考えると、魚醤を一般化することは、言ってみれば全ての魚を広く一般化するようなものです。このように考えてみてください。私たちが「魚」と呼んでいる動物はたくさんいますが、魚類の中でも種や形、色などの特徴が途方もなく異なります。同様に、魚醤も基本的なレベルでは似ていますが、化学組成や風味は異なってきます。私たちが言えることは、その核心にあるのは、すべての魚醤は、程度の差こそあれ、生臭く、窒素が豊富で、プロバイオティクス(腸内の善玉菌の活動および増殖を促進する食品成分)に富んでいるということです(さまざまな魚醤の分析では、細菌 11 種、酵母 1 種、糸状菌 3 種を表す 39  種の微生物が発見されました)。

 

世界の魚醤 

 世界中の様々な魚醤のバリエーションは、その地域で手に入る魚、それを作る人々の好み、気候の影響によるものです。魚醤のバージョンは多くの国で見られ、それぞれの名前で識別できます。

インドネシア:ケチャップ・イカン

タイ:ナンプラー

フィリピン:パティス

日本:しょっつる

ベトナム:ニョクマム

マレーシア:ブドゥ (budu)

ミャンマー:ンガピ (ngapi)

フランス:ピサラ (pissala)

ギリシャ:ガロス (garos)

イラン:マヒャベ  (mahyaveh)

パキスタン:コロンボキュア (Colombocure)

中国:イェースー (yeesu)

韓国:エクジョッ

 

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