野生の食物を採取する

マザーアースニューズ ハーブ 農

食べられる植物の区別、摘み取り、下ごしらえ、保存の手引きを活用しよう。

 

文:レダ・メレディス (Leda Meredith)

翻訳:浅野 綾子

 

食料採集をはじめたのは 1960 年代でした。私が 3 才の時、祖母が私をサンフランシスコのゴールデンゲートパークにつれていきました。そこで祖母は私にどうやってタンポポを見分けるのかを教えてくれました。家に袋いっぱいの葉のロゼット(葉はすべて細長い一本の根っこにつながる)[「rosettes」とは根元の葉が地面に放射状に広がってバラ (rose) の花の形を呈するもの] を持って帰り、祖母がどうやってギリシャ風に料理するかを見せてくれました。祖母は、食料採集(まちがいなく祖母はこの言葉の存在を知らなかったと思います)が日常の風景だった、ギリシャの小さな島で育ちました。

 ホルタ(ギリシャ語であらゆる食べられる草を指す)を探す時、いつもは厳しい祖母の目が喜びでキラキラしていたので、自然と興味がわきました。こうした植物が私の「おばあちゃん (yia-yia) 」に運んでくれる喜びを一緒に味わいたいと思ったのです。祖母が亡くなってずっと後になっても、食べられる野草について学んだり食べたりすることを続けました。いまだに植物フィールドガイドは素晴らしい読み物だと思っています。その後、30 代おわりから 40 代にかけて自分のプロダンサーとしてのキャリアが終わりを迎え、新しい職業を選ばなければならなくなった時、初めに思い浮かんだのが野草でした。祖母とあの公園で過ごした日から、植物にまつわることが私の大好きな趣味になっていました。それで、もっとエネルギーを注いでこの興味を追求してみようと決めたのです。

 でも、どんな野草でもいいから勉強したいと思ったわけではありません。私の興味のほとんどは食べられるか、薬として使える野草にありました。食べられる野草へのこの興味は、食べられる野性のキノコに対する興味などへとつながりました。50 代初めになるまでに、食べられる野草のフィールドガイドや、野草の料理本をすでに執筆していました。この記事を読んでくださっている方が食料採集をはじめたばかりか、すでにベテランの採集家の方かはわかりませんが、これからご紹介する 3 つの植物について役立つ情報をお伝えできることはうれしい限りです。 

アメリカスミレサイシン(学名:Viola sororia)

 日陰を好むスミレの目を引く花は、早春にみると嬉しいものです。食べられる紫の花が目を引くかもしれませんが、まろやかでレタスの香りのする葉も食べるのに適しており、花よりも収穫期が長いです。春や夏はサラダに、秋や冬はスープのとろみづけや咳止めに使いましょう。

 見つける&見分ける。スミレは日当たりの良いところでも育ちますが、たいていは半日陰の場所で育っているのが見つかります。水分が多い土を好み、落葉樹の下で繁殖します。落葉樹の下では、早春の太陽の光のほとんどが、まだ葉のついていない枝の間からさしこみます。季節がすすむと、下でスミレが育っている木に葉が生えて、スミレに熱い夏の太陽光が当たるのをさえぎってくれます。

 スミレの葉の見分け方を学びましょう。そうすれば、花が咲いていない時でも見分けることができます。ハート形の葉はロゼット状に広がります。葉の先端は鋭く、葉の縁には先のとがった歯状突起がついています。花がない時、経験の浅い食料収集家は時にスミレをニンニクガラシ (garlic mustard) と間違えることがあります。ニンニクガラシはスミレと同じように日陰で掘り返した土の状態を好み、根元にハート形の葉がロゼット状についています。でも、スミレの葉の先端はとがっていて、同様に葉の縁に歯状突起がついていますが、ニンニクガラシの根元の葉の縁は波型で丸みを帯びています。葉の緑の色合いも異なり、葉脈の模様も異なります。(スミレの葉を裏返してみましょう。特に大きな葉では葉脈が浮き上がったようになっています。)でも実際のところ、必要なのは鼻をつかうことだけです。ニンニクガラシの葉はニンニクやからし菜の香りがしますが、スミレの葉にはほとんど香りはありません。

 スミレの生えたばかりの葉は、巻物の両側が巻いているように、葉が巻いています。採集するのには理想的な時期です。早春に野性のスミレがはじめてつける花は、サラダに映える目を引く美しさ。この花は普通紫色で中が少し白いのですが、ほとんど白一色の花も時々あります。この花には種がつかず、直径は約 2cm で 10cm 前後の葉のついていない細い茎につきます。この花には 5 枚の花弁がついていて、両側の花弁の根元には白い毛がついています。

 夏には、自家受粉する、おそらく気づかれることがないような花びらのない花をつけます。この花は小さな丸い種をはじき出す、3 つの部屋に分かれた蒴果 [種の入った袋] になります。スミレの根っこは食べられず、こぶが多くて分岐している、どことなく平べったい形の根茎です。

 採集。早春の花期の間に、随時、野生のスミレの紫色または紫と白の花を採集しましょう。花についている長くて細い茎も美味しいですから、一緒につみとりましょう。このスミレの目立つ花には種がつきませんから、採集しても根絶やしにしてしまうことはありません。どのような場所に生えていても、スミレは丈夫で繁殖力が強く、他の植物を侵害するといっても良いほどです。ですから、どの部分を採集しても再生するかどうかの問題はありません。

 スミレの葉は、春から夏にかけてが美味しいです。株が大きくなったら、小さめで、葉が部分的に丸まっているものを採集しましょう。というのも、大きい葉はかたくて筋ばっていることがあるからです。スミレは、地中に残した食べられない根から再生する、多年生植物です。

 下ごしらえ。スミレの葉・花・花茎は、生でサラダにするといずれもまろやかで美味しいです。花茎は葉や花とは若干違った甘い香りがあるので、3 つの部分はそれぞれ違う食材として扱いましょう。葉は苦くなることはありませんが、成長した葉の葉脈はかたくて筋ばっていることがあります。若い葉は生で、成長した葉は乾燥するか、焼いてカリっとさせましょう。

 調理したばかりのスミレの葉は、少々ねばりがあります。おいしくなさそうに聞こえるかもしれませんが、ベジタリアンバーガーに入れるとつなぎになり、スープやシチューのとろみづけにも使えます。

 保存。花を保存するには砂糖漬けにしましょう。砂糖漬けにしたらデザートの飾りに使ってみましょう。スミレの花を使ってきれいな色のシロップも作れます。葉を乾燥させて冬の食材用に保存しておくこともできます。粉にしてスープに入れれば、乾燥させたスミレの葉はとろみづけにうってつけです。咳や、咳が出る風邪の症状を和らげるお茶として効果があるともよく言われています。

 

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