少ない水で菜園づくり|ウィック灌漑

マザーアースニューズ 自然 自給 DIY

鉢植えや露地植えの植物に水やりをするために、芯を使ったシステムを設置すると、手をかけずに効率よく水やりができる。

文: デビッド・A・ベインブリッジ(David A. Bainbridge)

翻訳校正:沓名 輝政

 

ウィック(散水芯)灌漑は、あまり知られていない効率的な灌漑方法です。私がこの概念を知ったのは、何年も前にインドの論文を読んだときでした。その論文では、素焼きの壺を埋める灌漑に芯を併用していました。その後、実験室で水の使用量を測定したり、バカンスで家をあける間に植物に水を与えたり、温室内の植物に安定した水を供給したりするために、さまざまな芯のシステムが使用されていることを知りました。しかし、農場や家庭菜園でウィック灌漑を使用する研究は見つからなかったので、試しに使ってみました。この30年間、私は多くの実験とフィールドテストを行い、ウィックシステムの設計と使用方法を理解することができました。

 ウィック灌漑は、水を吸う布やロープを使って、貯水槽やパイプから植物の根に水を運びます。芯は、毛細管現象によって上昇して一山越えて、ゆっくり流れるものと、重力によって水が芯を伝って流れ落ち、速く流れるものがあり、また、両方のシステムを組み合わせたものもあります。本稿では、どちらの方式が植物に適しているかを詳しく説明します。

 

毛細管の芯(Capillary Wick)

 毛細管式の芯では、水は芯材内の小さな経路を通って上昇します。私が行ったあるテストでは、7/16インチのナイロンロープ(washed solid-braid nylon rope)の中の水は、100分で25cm、20時間で55cm上昇しました。

 毛細管現象による灌漑では、一般的に芯の一端を植物の横の貯水槽に、もう一端を土の中に入れます。つまり、芯を貯水槽から上に出して、下に曲げて土の中に入れます。また、植物の下にある貯水槽から芯を上にあげて、鉢に開けた穴に通す方法もあります。

 カリフォルニア大学リバーサイド校で、私はパロ・ヴェルデ[学名: Parkinsonia florida]の苗木で、その下にある貯水槽から毛細管現象を利用する研究を行いました。その苗木は、バケツに入った#16[平均粒子サイズ1,092μm]の純粋な珪砂で育てました。1ヶ月後、苗木はまだ成長し続け、1日に大さじ2杯以下の水の消費で水不足の兆候は見られませんでした。

 

重力で流す芯

 重力式の芯は、毛細管式の芯と同様に機能しますが、流れは下向きです(例えば、植物の横の地面に貯水槽を置き、貯水槽の底から芯を出し、地中の根まで流す)。

新しい7/16インチのナイロンロープ(編み込み時に使用の潤滑油を取り除くために溶剤と熱湯で一回洗浄)を使ったテストでは、プラスチックチューブ内にピッタリはまるロープの流速は毎秒0.6mlで、対して毛細管の流速は1時間当たりで1mlでした。重力式ナイロン芯に入れた水は、わずか15分で垂直な芯の下3.6mまで流れました。このような長い重力式の芯を使えば、植物が深く根を張るよう促され、3~4.5mの深さの地下水と接触させられるようになるかもしれません。

 ソノラ砂漠でのフィールドテストでは、5ガロン(19L)の貯水槽の近くにホースバンドを設置して水流を調整し、乾燥した気候での重力式の芯を用いた灌漑の価値を実証しました。30ガロン(114L)以下の水量で、テストしたすべての植物が3年後も元気で生きていたのです。同じ期間に360ガロン(1,370L)を超える水を使用した場合と比較すると、その差は歴然としています。

 

芯の据付

 鉢植えや露地植えの植物に芯を使った灌漑システムを作るには、まず、芯、芯がぴったりと入る透明な樹脂製チューブ、貯水槽などの基本的な材料を集めましょう。重力式の芯の場合は、ホースバンドと、樹脂製チューブを貯水槽に取り付けるためのネジと接続するホース用継手も必要です。もし、お近くのホームセンターにない場合は、ネットで注文することもできます。また、ドリル、ホース用継手に合ったサイズのスペードビット、ポリウレタン接着剤も必要です。

 私は7/16インチまたは1/2インチのナイロンロープが好きですが、ポリエステルやその他の繊維のテープやロープでもかまいません。インドでは伝統的に綿の芯が使われてきましたが、ナイロンやポリエステルの編み込みロープの方がカビたり詰まったりしにくいようです。ポリプロピレンや多くの混合繊維のロープは使えません。ロープは洗剤や石鹸で洗い、よくすすいでから使ってください。洗濯機で洗う場合は、ロープが絡まないようにメッシュバッグを使うか、枕カバーの中に入れて縛ってください。食紅で着色した水の入った容器に芯を垂らし、毛細管現象の吸い上げ、重力での流れ、芯材へ染み込む速さなどを簡単に調べることができます。水の上昇速度を調べることで、どの芯が適しているかを判断できます。水は芯を通って急速に上昇するはずです。 

貯水槽には、古い炭酸飲料のボトルや水差し、5ガロン(19L)バケツなど、リサイクルされた容器が有効です。ポリプロピレン製の容器は何年も使えますが、ポリエチレン製の容器は1シーズンしか使えないかもしれません。風の強いところでは、貯水槽が飛ばされないように杭を打ったり、縛ったりする必要があるかもしれません。。。

 

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