DIYオフグリッドソーラー

オフグリッド電力を真剣に導入しようとお考えの方なら、オフグリッド太陽光発電システム (off-grid PV system) が系統連係システム(grid-tied system)よりほんの少し込み入ったものになると聞いても驚かれないでしょう。でも、実際はそれほど複雑ではありません。どちらのシステムもその構成のかなりの部分が共通ですが、オフグリッドシステムではさらに3つの要素が加わります:バッテリー、チャージコントローラー、それに発電機です。これらを組み入れるのと引き換えに、電力メーターと電力会社との揉め事という2つの気苦労から解放されます(電気料金から解放されるのは言うまでもありません)。

 

文:ジョエル・バーディック(Joe Burdick)とフィリップ・シュミット(Philip Schmidt) 

翻訳:市岡 秀俊

 

オフグリッド太陽光発電の基礎

 オフグリッドと系統連係それぞれの太陽光発電システムの基本的な違いを理解してもらうために、家族で行く長期キャンプのプランを立てる場合に例えて説明しましょう。まず一つ目のプランは車でキャンプ場に向かい、キャンプする場所のすぐ近くに駐車しておくというもの。基本的に昼も夜もアウトドアで過ごしますが、食べ物やビールやトイレットペーパーその他の必需品がなくなっても車に大量に詰め込んであるから、ちょっと歩けば簡単に手に入ります。

 二つ目は、バックパックに全部詰め込んで深い森へ分け入るワイルドなプラン。綿密に計画を立て、それに従ってみんな飲み食いを控えれば問題ないはずですが、食料が底をつき始めると消費を抑えなければなりません。さらに完全に食料がなくなると万事休す。車から遠く離れたところでキャンプをしていて歩いて取りに戻るのが大変だったり、そもそも車に余分な食料を積んでいなかったりしたら。。。

 さぁ、もうおわかりでしょう。オフグリッドの太陽光発電システムでは、ワイルドなキャンプみたいに、日ごとに何が必要かを念入りに検討しておくことが求められます。ただ、この比較でひとつ抜けているのが、オフグリッドのシナリオでは差し迫った状況下でエネルギーを補填するための発電機があることです。キャンプの例えに戻ると、発電機は釣り竿みたいなもので、急場をしのぐ手段も用意されている、と考えるとわかりやすいでしょう。

 これは供給と需要というシンプルな話で、オフグリッドシステムの規模を見積もる第一歩は、その家の電力需要量、つまり日々の電力負荷 (electrical loads) をしっかり把握しておくことです(電力負荷の計算の仕方は「負荷の見積もりと動作保証日数」をご参照)。

 では、オフグリッド太陽光発電システムの基本構成を見てみましょう。

 

オフグリッド太陽光発電システムの構成要素

 太陽電池パネルアレイ。太陽電池パネル (modules) やそれを支える構造は、オフグリッドも系統連携システムでも変わりませんが、オフグリッドの場合はストリング (strings) と呼ばれるパネルの直列接続構成がずっと小規模で、せいぜい3、4枚程度です(詳しくは「パネルアレイレイアウト」で触れます)。

 緊急遮断機能。オフグリッドシステムでは(マイクロインバーターではなく)ストリングインバーターを使います。これは緊急遮断機能要件 (rapid-shutdown requirements) [太陽光発電システムの安全稼働のために、北米の各州で規制化されている] に対応した専用システムが必要になるということです。そのために、緊急遮断制御スイッチが用いられることが多く、太陽電池パネルアレイにある、遮断機能を持つ太陽光発電用接続箱 [複数のパネルアレイやストリングからの入力を接続し電流・電圧の監視や保護・制御を行う] と通信します。これは標準的な系統連係ストリングインバーターシステムでも共通する構成です。

 チャージコントローラーとバッテリー。オフグリッドシステムでは、太陽電池パネルアレイで発電した直流電気はチャージコントローラーを介してバッテリーに接続されます。チャージコントローラーは電気の流れを調整し、バッテリーバンク [複数のバッテリーを直列・並列に組み合わせて高電圧化・大容量化した蓄電用バッテリー群] に合った適正な電圧まで降圧します(太陽光発電用バッテリーについては「オフグリッドバッテリーバンクに最良なバッテリー」で詳説しています)。チャージコントローラーは、安全に充電しバッテリーを長持ちさせるために欠かせません。バッテリーの電圧が下がり充電が必要になれば作動し、電圧が上がりフル充電が完了すれば自動的に停止します。

 直流ー交流インバーター。バッテリーに蓄電された直流はインバーターにより交流に変換され、様々な電化製品で利用できるようになります。オフグリッド太陽光発電システムで用いられるインバーターは「独立型インバーター」と呼ばれます。他方、系統連係システムで用いられるものは「系統連係型インバーター」です。マイクロインバーターはパネルごとに内部で交流に変換してしまうため、直流でバッテリーに充電する必要があるオフグリッドシステムでは使われませんが、交流系のシステムでは用いられることもあります(その構成を「マイクログリッド」と呼ぶことがあります)。いずれにしても、一戸建て住宅向けとしては、マイクロインバーターを用いたシステムは過剰に複雑なものになってしまいます。

 交流解列装置。交流に変換した後に関しては、オフグリッドシステムでは交流の解列 [送電網の系統から切り離すこと]を行う装置と家庭にあるメイン分電盤の接続が必要になります。いずれも系統連係システムで使われているものと同じです。電力会社の系統につなげないため、発電量メーターや電力会社のメーターはもちろん必要ありません。

 発電機。太陽光頼みのオフグリッド住宅のほとんどすべてが、バックアップ電源として発電機を備えています。バッテリーの蓄電電圧が上がらなかったり、晴れ間が少なかったり、あるいはその両方のために電気が不足する場合の保険になります。

 

負荷の見積もりと動作保証日数

 電力負荷とは、その家庭で日々消費している電力量の総和のことです。個々の電化製品の負荷は、それぞれのワット数と一日当たりの平均使用時間との掛け算で求められます。洗濯機など、毎日は使わない電化製品の場合は、一週間の使用時間から一日当たりの使用時間を割り出します。例えば、週に洗濯機を3.5時間使う場合、一日当たり0.5時間 (3.5÷7=0.5) となります。すべての電化製品の電力使用量を合計し、その家の一日当たりのキロワット時 (kWh) を求めます。毎日、少なくともこの数値以上の交流電力を太陽光発電システムで作り出すのが目標です。設計段階で、国立再生可能エネルギー研究所のオンライン太陽光発電ワット数見積もりツール (online PVWatts Calculator) を使って、この目標値に達するために必要な直流系システムの規模を決めると良いでしょう。

 左の表は、一般的な電化製品とそれぞれのおおよそのワット数、それに一日当たりの使用時間(年間を通しての平均値)を表しています。比較的消費電力の少ない電化製品を使っている家庭のケースです。ご存知かのことと思いますが、オフグリッド住宅向けの超エコな電化製品を専門に製造しているメーカーもあります。消費電力の大きい電化製品を1つ、例えば冷蔵庫や電気コンロなどをそのような超エコなものに変えてみると日々の電力負荷を劇的に下げることができます。

 電化製品に貼られている銘板に書かれたワット数を確認しましょう。ワット数の代わりに電流値が記されていれば、標準的な120ボルト機器の場合はその電流値に120を掛ける、あるいはドライヤーや電気ストーブなど高い電圧を要する240ボルト機器の場合には240を掛ければ、ワット数が求められます。例えば、扇風機に3アンペアと書かれていれば、ワット数は3アンペア×120ボルト=360ワットになるといった具合です [日本の場合は100ボルトまたは200ボルトなので、それぞれ100または200を掛けること]。

 ワット数はその電化製品の瞬間電力消費を表します。同様にその瞬間に必要な太陽電池パネルの出力電力量でもあります。ワット数を実際のエネルギー使用量に変換するには、時間の係数を掛ける必要があり、例えば、360ワットの扇風機を3時間回せば、エネルギー使用量は1,080ワット時になります。ワット時を1,000で割った数値がキロワット時 (kWh) です。1,080÷1,000=1.08kWhということです。家庭全体の電力負荷を表す際には、キロワット時で表した数値が用いられます。

 「動作保証日数 (Days of autonomy)」はオフグリッドシステムの設計においてとても重要な指標で、「晴れ間なしで何日やっていけるか?」という問いに対する答えです。あるいはこんな風に言い換えても良いでしょう:寒く暗い冬の時期に、天気予報で今後しばらくは雪や厚い雲に覆われるでしょうと告げられたら、何日バッテリーが持って欲しいですか?

 動作保証日数はバッテリーバンクの容量で決まります。何日間でも自由に決めて構いませんが、標準的な目標は3日間です。ただし、曇天が長引く場合のバックアップとして発電機を備えているという前提です。3日間という目標値は、ほとんどのオフグリッド住宅において、費用対効果の面で絶妙だと思います。もっと日数を増やしても全く構いませんが、その分、バッテリー容量を大きくする必要があり、お金がかかります。バッテリーバンクの規模を決める際には、目標に決めた動作保証日数を使って算出します。

 

パネルアレイレイアウト

 太陽電池パネルアレイ(発電モジュールとその支持構造を含む)の設計は、系統連係システムでもオフグリッドシステムでも変わりません。正確には、パネルや支持構造の物理レイアウトの仕方は全く同じで、電気レイアウトが異なります。

 系統連係ストリングインバーターシステムでは、直列接続したストリングの長さは最終的にはストリングインバーターの直流入力の開放電圧 (Voc) の最大値で制限されます。一般的にはストリング当たり8から12枚というところです。オフグリッドシステムでは、チャージコントローラーで直列可能数が決まり、チャージコントローラーの多くは3または4枚を超える直列接続には対応していません。例えば、全部で12枚のパネルがあるとすると、3枚のパネルを直列接続したストリングを4組並列接続するのが典型的なレイアウトになります。最近のチャージコントローラーの多くは、4枚まで直列接続できます(12枚からなるアレイの場合、4枚直列のストリングを3組並列に接続可能)。中には、定格で最大600ボルトの開放電圧を持ち、より多くのパネルを直列接続できるものもあります。

 パネル枚数に合った定格のチャージコントローラーを選びましょう。また、パネルの物理レイアウトと電気レイアウトは必ずしも一致しないことに注意すること。例えば、12枚のパネルからなるアレイの場合、3枚ずつ直列接続されたストリングが4組分結線されていたとしても、見た目の上では6枚ずつ2列に配置されることもあり得ます。

 

チャージコントローラー

 オフグリッド太陽光発電システムでは、パネルのストリングが出力する電圧はバッテリー電圧よりずっと高くなるため、チャージコントローラーが欠かせません。チャージコントローラーは(主に想定されるのは)アレイからの高い電圧を入力とし、バッテリーにとって適正なより低い電圧を出力します。さらに、バッテリーの状態に応じて絶えず充電量と充電レートを調整してくれます。

 チャージコントローラーには多くの種類があり、コストも機能も多岐に渡ります。オフグリッド太陽光発電システムにお勧めできるのは、最大出力追従制御 (MPPT) 機能があるものだけです。これは、先ほど述べたような出力電圧(バッテリーの充電電圧)よりも高い入力電圧(アレイの出力電圧)に対応しています。これ以外のものは、固定電圧のチャージコントローラーで、アレイの出力電圧がバッテリー電圧に等しくなければなりません。このタイプはごく小規模な太陽光発電システムに限定的に用いられ、住宅規模のシステムには向いていません。

 チャージコントローラーのMPPT機能は、インバーターにあるMPPT(および直流最適化機能)によく似ています。この場合、チャージコントローラー(インバーターではなく)は絶えずパネルからの電圧と電流を監視し、電力 [電圧と電流の積] が最大になるようにそれぞれのレベルを調整します。快晴にはほど遠い頼りない日差しや、異常な高温や低温、それにバッテリー電圧の低下などが発生した場合には、急激な調整が必要になることがあります。MPPT対応チャージコントローラーなら、曇りがちの天候でも優れた働きをしてくれ、パネルの一部が日陰になったり、日射量や気温が極端な悪条件になったりしても、効率の良い充電が可能です。

 

発電機

 ほとんどのオフグリッド太陽光発電システムは、冬や曇天が続くなど、日照量が少なく家庭の電力量を賄いきれない場合のために、バックアップ電源として発電機を備えています。発電機はまた、複数のバッテリーを均一化したり、バッテリーからの電力の使われ過ぎを防ぐために電力供給を補助したりするためにも役立ちます。

 発電機を選ぶ際には、バッテリーバンクの規模や家庭の電力負荷やインバーターの交流出力電圧など、いくつものポイントがあります。120ボルトの負荷しかなければ、120ボルト出力のみ対応した発電機を選べば良いですが、240ボルトの電化製品も使われているなら、120ボルトと240ボルトの両方の出力電圧を持つ発電機が必要です。この場合、発電機の出力定格をしっかり確認して、120ボルトと240ボルトの実際の出力について理解しておくことが大切です。120または240ボルトの独立型インバーターでも見られることですが、120ボルトで利用する際の出力容量が小さくなるものがあります。発電機は、太陽光発電用インバーターのフル充電容量と充電中に使われる負荷の合計を少し超える程度の発電容量を持つものが良いでしょう。

 

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By Joe Burdick and Philip Schmidt 

June/July 2017