手打ち鍛冶の高品質な自営農園用具

ドブキンス夫妻は高度な耐久性の菜園用具を手作りし、オザークにある鍛冶ショップで販売。

 

 

鍛冶職人ウィル・ドブキンス (Will Dobkins) は、昔ながらの製法で、手を使って用具を製造・修理・復元。ウィルと妻のメリッサ (Melissa) は、製造段階に入る前にそれぞれの用具を自家菜園でテストする。

Photo by Homestead Iron

文:アマンダ・ソレル

 

ウィル・ドブキンスの曽祖父が、名匠の職人技を目指して低品質に甘んじることなく鋤の刃を研磨し始めてから1世紀、ドブキンスは、同じ精神をもって超一流の農具を作り続けています。新旧両方の技術を組み合わせて、自営農園用具を製造、修理、復元するドブキンス。店の屋号はホームステッドアイアン (Homestead Iron) で、オザークにあります。彼が製造するすべての道具は、手打ちで鍛造され、非常に精密な作りで確かな耐久性があります。このインタビューでは、ドブキンスが、彼独自の鍛冶ビジネスの立ち上げと維持継続について答えます。

 

 製造販売しているものを教えてください。製造販売の決め手になることは何でしょうか。

 妻のメリッサと私は、高級自営農園用具に特化した鍛冶ショップを経営しています。私たちが扱う用具は、時を越えて受け継がれてきた古くからの型式です。製造段階に入る前に、手作りした用具を自分たちの家庭菜園で試してみます。デザインを決める前に作る試作品は大体3つか4つ。何を作るか決めるには、お客さんからのフィードバックと、私たちの個人的な経験を頼りにしますね。

 自分たちが作る手打ち鍛造用具には、金床の段階で同じものがないことがほとんどです。多めに製造する時は、必要最小限の電動工具を使いますね。電動ハンマーや電動プレスは、作業を早く長く続けることを可能にしますが、熟練の代わりにはなりません。鍛造の仕方や素材の扱い方について確固とした基礎がなければ、電動ハンマーは製品を早々に駄目にしてしまうでしょう。

 

 いつ、どのようにして鍛冶を習得したのですか。

 熱気に満ちた工場で育ったんですよ。曽祖父は、地域を巡回する牧師であり、写真家であり鍛冶職人でもありました。父は、溶接工、それに機械工でもありました。趣味として鍛冶作業もしていましたね。鍛冶に興味を持ったのは15才頃。アメリカ南北戦争の再現イベントグループに参加していた時でした。それがきっかけで、自分の道具一式の金属刃を作ることになったんですね。すぐに、他のグループメンバーのためにピケットピン [馬をとめる綱用の杭] や、飾り気のないフォークやナイフを作るようになっていました。何年も経って、航空メンテナンスの仕事が見つかりにくくなった時、鍛造製品の仕事に就きました。それが、鍛冶へのかつての情熱に再び火をつけたんです。それからはずっとこの仕事ですね。

 

 この仕事へ転向する間、他に仕事を見つける必要はありましたか?

 いいえ。ただまっしぐらでした。自宅と鍛冶の店を買うのに貯めていたお金を切り崩しました。ローンはありませんでしたが、初めの2~3年はかつかつでしたね。生活していくために外で働く代わりに、本腰を入れたんです。大きな菜園を作り、たくさんのビン詰めを作って、鹿も狩りました。物がなくても生活していくことが上手くなりました。

 一生懸命働いて、そこそこ成功もしています。とは言え、質素に生活していることで、小さな利益をビジネス拡大の費用へと戻すことができています。

 

 ウェブサイトで、あなたは「人生を生きる」と書いています。これはどのような意味か説明して頂けますか?

 私たちは、自分たちの田舎での(僻地と言う人もいるかもしれませんが)暮らしを楽しんでいるんです。穏やかで四季のある気候に惹かれてオザークを選びました。限りないアウトドアの楽しみがあり、土地の値段も私たちの手が届くものでした。ひそかに、自分たちの小さな4ヘクタールの土地で、100パーセントの自給自足を目指して格闘しています。食べ物を栽培したり、集めたり、狩猟するべく努めています。現実は、生活していくのにまだいくらかのお金が必要ですね。自営農園用具のビジネスが育つにつれ、販売促進の出張でいつも忙しくなり、毎日家畜の世話をすることができないのです。これから自宅周りに適当なフェンスを入手しなければと思っています。そうすれば2、3頭の家畜を飼えますから。今のところ、時間が許す限り自営農園的ライフスタイルで生活しています。とはいっても、ビジネスが優先ですが。

 

 あなたに影響を与えているのは?

 1番はお客様ですね。出かけて行ってお客様に直接会い、自分たちが作った道具をどうやって使っているのかを聞くのが大好きです。何が具合が良く、何がそうでないのかを聞くんです。ショーから戻る度に、新しい製品や従来の製品の改善点について、何点かアイデアが湧きますね。

 2番目は、ホスツール (Hoss Tools) のグレッグ・キー (Greg Key) です。グレッグは、良き友人でもあり、助言者でもあります。農作業ツールビジネスにおける、彼の洞察力と経験には値がつけられません。

 

 ビジネスを経営する上で、1番大きな課題になっていることは何ですか?

 時間とお金です。経営指示を出すには両方が必要です。素晴らしい製品を作っているとしても、誰にも気づいてもらえないのなら素晴らしい製品の在庫の山に座っているのも同じこと。自分たちの場合でいえば、私たちは製造者でもあり小売業者でもあります。この2つは、全く異なる2足のわらじです。以前の仕事の経験から、製造の方は簡単でした。小売業者であるということは、全く別の次元です。上手く行った販売計画もあれば、そうでもなかったものもあります。販売計画はすべて、ある意味で賭けが必要です。やるべきことが同時並行でたくさんある時、賭けをするのは大変なことです。

 

 起業に興味がある人にどんなアドバイスがありますか?

 まだ供給が不十分なニッチな市場を探すことと、臨機応変になること!手作りの鍛造ツールへの反応はすごいです。でも、他の製品群はそうでもない。だから、狙いを変えないといけませんでした。

 大好きなことをすること、でも、自分の製品への需要と労働の見返りとして欲しいものについて現実的になることです。

 おそらく多くの読者が私たちと同じようではないかと思います。田舎暮らしを望み、在宅ビジネスを成功させるべく片足をテクノロジーの世界に踏み入れる。私たちの場合、住まいの場所では衛星インターネットしか使えません。後から考えると、これはオンラインビジネスを経営するには不十分で[ビジネスチャンスを逃すという]大きな犠牲をともなう選択です。嵐の日には、衛星の信号が受信できません。当然家の中でウェブサイトの仕事をしたい時です。回線容量に限界があることは、多くの安いマーケティング方法を活用できないということなんです。

 

 過去何度かマザーアースニューズフェアで出店されています。読者からの声で1番良くあるものは?

 マザーアースニューズフェアは、私たちの生活の糧。ターゲット層に直接売り込むことができるチャンスを与えてくれます。他の多くのイベントにも出店していますが、上手く行くことは限られていますね。マザーの読者は、高品質のツールと大型量販店で買えるものとの違いをわかっています。かけた労力、時間、金銭などに見合った報酬をもらうということを理解しているのです。

 

アマンダ・ソレル (Amanda Sorell) は、マザーアースニューズの編集者。シアトル在住。緑あふれる室内用植木のコレクションとネコと一緒に生活。オレゴン州でのマザーアースニューズフェアーでアマンダを見つけよう。

 

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Feb/Mar 2018

By Amanda Sorell

 

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