持続可能な薪の萌芽更新

種から木になるより少しの時間で薪の木を育てる。

 

 

文:ブレット・マックロウド (Brett McLeod)

翻訳:金広 まさみ

 

森林の持ち主が利用できる全林業技術のうち、萌芽更新 (coppicing) ほど十分使われていない方法はほぼないです。萌芽更新は木を定期的に刈り込んで、生きている切り株、つまり「親木」の休眠中の芽を通して新しい成長を刺激する再生方法です。この芽が別名「若枝」とも言われる新芽に次々と発展し、種から同じ量の薪に育つのにかかる時間の、およそ半分で薪にできます。

 管理技術として萌芽更新は、新石器時代にさかのぼり、豆の蔓の支柱と木舞から薪と柵の柱まで並ぶさまざまな目的に萌芽林が使われていました。16世紀に入っても、萌芽更新で手に入れる材木の経済的重要性がイギリスではとても高かったので、ヘンリー8世は草を食べる動物から守るため国中に、萌芽林の周りに柵を作るよう命令しました。

 

木の生長の不確定要素
 森林監督官として、木が特定の大きさになるにはどのくらいかかるかよく聞かれます。もしその場所について何かしら知っていれば、知識に基づいた推測ができます。しかしながら、たいてい、考慮する要素が多すぎて合理的な推定ができません。なぜなら環境上と遺伝上の両方の要素が成長速度に影響を及ぼすからです。環境上の要素は土壌の性質に加えて気候条件を含みます。主な遺伝上の特質には、活力、耐病性、光合成効率と品種を含まれます。ほとんど例外なく、ある種はあまり適さない環境においてさえ他より早く育ちます。例えばヤナギは、成長速度に関してほとんどいつもナラを追い越します。一方北の広葉樹林のブナは単一種が茂る森林となり、カエデやカバを打ち負かすことで知られています。

 

萌芽更新の生長の利点

 このように自然本来が多様であるため、産出高についての広い一般化を避けることが大事です。とは言え、多くの不確定要素にもかかわらず、萌芽更新の仕組みでは、種から育った木より優れた 2 つの明らかな利点を得られます。最初の利点は確立時間の縮小で、その意味は、種が芽を出すのを待つ必要がなく自ら定着し、十分に根を張り巡らせて育つこと。2番目の利点は、萌芽更新の樹木は複数の幹からなり、単一の幹と対比して、著しく多くの木材を育てる機会に恵まれることです。

 次の例は、種由来の木に対して萌芽更新の薪の産出を種由来の木とどのように積み上げて比べるか説明しています。この単純な事例研究の2つの木は、変異性を最小限にすべく同じ場所からです。

 最初に、樹齢40年のたぶん種から大きくなった一つの幹のアメリカブナの木を伐りました。胸高直径 [DBH:地表から1.4m位置での直径]  20cmで、1フェイスコード [face cord:積んだ薪を量る非公式な単位。前面が4x8フィートで奥行きは様々だが通例16フィート。]を産出しました。それから4つの幹のある樹齢18年の萌芽更新で成長したアメリカブナの木を伐りました。萌芽更新のアメリカブナもまた1フェースコードを産出しました。言い換えれば、萌芽更新は半分以下の時間で同量の薪の生産を促進します。

 

成長速度対潜在熱エネルギー

 薪生産のために萌芽更新の植林地を作っているなら、萌芽更新の種の成長速度と潜在熱エネルギーの間の正反対の関係を当てにできます。もし、推定した成長速度に関して4つの一般的な種を位置づけ、   

 熱潜在熱エネルギーに対する成長速度を比較するなら、通則としてゆっくり成長する木からの薪は、同じ量の薪に対して多くの英国熱量単位 (Btu) を含むのがわかります。(下の一覧表「木の種の成長速度対潜在熱エネルギー」を見てください。)どの種を萌芽更新するか決めようとする時や薪を買ったり、どの種がドル当たり最も多く熱を生むかという疑問に直面した時、この時間と引き換えに熱エネルギーを失うこと意識してください。

 

薪を萌芽更新する段階的な道しるべ

 製材その他の森の産物にするのに十分な大きさの丸太としての価値が少ない、見かけの悪い木を萌芽更新用に選びます。1年中何時でも萌芽更新できますが、休眠中や葉を落としている時に萌芽更新すると最も良い結果が得られます。

 低い切り株を伐ります。低い切り株は地面か地下の高さでの新しい発芽の成立を助長します。これは根の発達を促進し、木の安定性を増します。理想的な新しい萌芽更新の親木から出る芽は、地面からたった5~8cm上で、水を流すために少し傾斜しています(下の左の図を見てください)。もし以前に萌芽更新した若枝を伐るなら、以前切った同じ角度に沿って、若枝が多くの幹に分かれる点のすぐ上を伐りましょう。

 もし動物が食べがちな地域に住んでいるなら、若枝の周りに妨害物として枝を置きましょう。もう一つの取り組みは、食べる動物にとっておいしくない木の種に有利に働く萌芽更新システムを発展させることです。例えば動物はカエデやカシよりブナやカバをむしゃむしゃ食べなさそうです。

 4~8週間以内に、切り株からたくさんの新芽が出てJ字型の若枝を形作るのを見始めるでしょう(下の真ん中の図を見てください)。葉が落ちた後、小さく丈夫でない新芽を刈ります。平均で若枝1本につき4~6本新芽を残します(下の右の図を見てください)。

 最初の薪を生み出すのにかかる時間は、種、場所、若枝の大きさと望む薪の直径により変動します。私の傾向としては萌芽更新の薪の大部分を8~12年周期で収穫しています。より作業性の高い木を得るために私は、直径8~10cmの薪を産出します ― 割らなくていいほど十分小さい!    

 萌芽更新の薪生産の長所は、若い状態に保たれた萌芽更新の木は決して樹齢を重ねて枯れることがないことです。萌芽更新システムの長所はまた単純に薪を生産することを超えて広がります。若枝の周りの密集した新芽のかたまりは、鳥や小さい哺乳動物に不可欠の生息地を提供します。そして萌芽更新の森林は根が健全に張り巡らされていることに依存しているので、主として格子状の根のよく固定されたマットに発達可能な健全な根域がもたらす安定性のおかげで、この森林のしっかりした取り計らいはまた周囲の土地の侵食を防ぎます。他の用途として、萌芽更新は動物の飼料、籠の添え木、杭、曲げ木家具、道具の持ち手、もっと多くが考えられます。

 

ブレット・マックロウド (Brett McLeod) は「The Woodland Homestead」の著者で、ニューヨーク州のポール・スミスズ大学の森林自然資源 (Forestry and Natural Resources) の准教授。

 

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How to Coppice Trees for Sustainable Firewood

February / March 2018

By Brett McLeod

 

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