無駄なし不自由なし:鶏を丸ごとさばく方法

鶏を丸ごと消費する方法を学んで価格も企業依存もカットしよう。

 文:メレディス・リー (Meredith Leigh) 

翻訳:広松 佳苗

 

私が牧場で鶏を平飼いしていた頃、鶏を丸ごと売りたいと考えていました。結局鶏ごとに餌をやり、さばき、全て包装しなければなりませんでした。もし車の製造者が新しく作った十分に機能する車のフロントバンパーとエンジンしか売ることができなければ、経費の支払いに困難をきたすでしょう。これは消費者に直接販売している畜産農家のうち平均的な規模の農家に共通の問題です。消費者は製品を丸ごと求めているわけではありませんが採算を取るためには製品を丸ごと販売する必要があります。私はお金を稼ぐために皮・骨なしの胸肉を 1 ポンドあたり 20 ドルで売らなければなりませんでしたが、それでもお金を払おうと人々が列をなしていました。私たちはみんな素早く焼ける骨・皮なしの胸肉にあまりにも慣れてしまい、鶏足や背肉、手羽を農場の冷凍庫に置き去りにしてしまっています。

 私はもう鶏を売っていませんが、農業についての講演をして各地を回っており、より良い方法を探っています。私の考えでは、もしそれが農家の経営を継続させるものであるとしても、消費者が 1 食分の食事しかもたらさない 20 ドルの肉を農家市場から買って帰るのは解決策ではありません。この 1 羽の鶏の半分しか買われないという難問への答えは、どのように鶏全体を活用するかを解明することです。鶏を丸ごと使うとき、農家の加工や包装費への支払いはより少なくなり、労賃はより低く、在庫も少なくなります。そして 1 ポンド (454g) あたりより安い価格と、購入したものからより多くの食事を得られます。

 もしあなたが鶏を丸ごと調理するのに圧力鍋を用いたり燻製したり焼いたりしたくないのであれば、いつでも肉切り包丁を手に取って必要に応じて切り分けることができます。ここでは、自宅で丸ごとの鶏を切り分け、簡単に使うことができるようにし、お値段以上の価値をケッコー得られるいくつかの方法を取り上げます。

 

研ぎ、殺菌し、切る

 最初に、まな板と包丁が必要です。家禽は私たちが口にするどの肉よりも多くのバクテリアを含みますので、家禽の生肉専用にできる重いプラスチック製のまな板の購入を検討してください。木が肉汁を吸収し細菌の住処となるため木製まな板の使用は避けてください。もちろん、家禽用まな板で生野菜は切らないでください。使うたびに入念に洗ってください。

 包丁については 56 インチの柔らかくしなるボーニングナイフ(骨スキ包丁)を探してください。インターネット上やキッチン用品店で通常 20 ドルから 40 ドル程です。骨や関節の周りの作業をするときにしなる刃が助けとなるでしょう。包丁は確実に切れ味を良くしておいてください。

 家禽用まな板と包丁の用意ができたら、丸鶏に集中する時です。シンクに丸鶏を置き、包装を剥がしてください。もしモツや他の内臓が含まれていたら包装袋や胴の空洞から取り除き、冷たい水ですすぎ、出汁を取るために大きな鍋の中に入れてください。丸鶏の各部位から出汁をとることは鶏を全て使いきるために重要な方法です。鍋を冷たい水でほぼ一杯に満たし、コンロの上で強火にかけてください。丸鶏を切る際に取り除く部位は、あなたの料理の仕方次第ですが、全て鍋に加えてください。玉ねぎやセロリの切れ端を風味付けに加え、だし汁が茶色く風味豊かになるまで 23 時間とろ火で煮てください。

 丸鶏に戻り、内側と外側を冷たい水ですすいでください。丸鶏をチェックするのに時間をかけ、筆毛があれば全て取り除きますが、特に羽や尻尾の周りを重点的にしてください。余計な水を切るために優しく丸鶏を振り、清潔なまな板に移動してください。次に、シンク、蛇口、取っ手など丸鶏が触れた全てのものを殺菌してください。さあ、包丁を手に取る準備ができました。

 

1つだけではない丸鶏解体の方法

 丸鶏を解体する一般的な方法いくつか紹介します。これらの方法は丸鶏に加えて鴨、ガチョウやホロホロ鳥にも使うことができます。骨の構造に多少の違いがあることを除けば体の作りはとても似ています。

 最初に、ソリレス [腰骨のくぼみについている肉で美味とされる] を探します。暗い色をした小さな肉片で、食べ損ねたくない部分です。もしあなたの解体が上手ければ、もも肉と一緒に引き剥がせます。ソリレスに到達するには、胸を下にしてまな板に置き、両脚を揃えます。丸鶏の背中を通る背骨に垂直で、ちょうど両膝の上端を通る線を思い浮かべてください(写真 1)。包丁を使い、この線に沿って骨まで背中に刃を入れてください。そうしたら、皮を持ち上げ 2 片の筋肉(ソリレス)を探します。背骨のどちら側にも 1 つずつあります。指を使うか注意深く包丁で切って骨盤にあるソリレスのついた所からソリレスをすくい取ります。 背骨のどちら側にも切り込みを入れて、ソリレスを背骨から切り離します。背中から外れて、もも肉にぶら下げたままにしておきましょう。後でまた続きをします(写真 2)。

 それでは、丸鶏を裏返し片方の羽を持って持ち上げてください。胴体の重みで伸びて肩と胸の間の関節の位置がわかります。この関節で羽を外します。私の講習会で気付いたことですが、この関節は、多くの人が予想するよりも深くて首に近い場所にあります。羽を持って丸鶏を持ち上げながら包丁を手に取り、うわ腕の球(肩と羽が交差する点にある)の周りを切り、羽を切り離してください(写真 3)。これをもう一方の羽でも繰り返してください。お好みで羽の先端に最も近い関節を通るようにまっすぐに切ることで羽の先を取り除いて、だし汁鍋へ入れることもできます。

 脚を切り離すためには、背中を下にして丸鶏を置き、胸からももまで伸びる皮を包丁で切ります。皮を開くと筋肉と関節をより明確に見ることができます。皮を取り離さず、包丁で綺麗に開き、脇へよけてください(写真 4)。そうしたら、丸鶏を持ち上げ、両ももをつかんで外側へ押し開き、下方へ、調理台に向けて折り曲げると、大腿骨が骨盤からポコッと飛び出します。包丁を使って骨盤から大腿骨が飛び出たところを通るように切ってください。この切り込みを入れる時、途中で必ず丸鶏を回して向きを変え、さきほど外しておいたソリレスが脚と共に取り除かれるように切り込みを調節してください(写真 5)。

 解体のこの時点で、2 つの手羽と 2 つのレッグ(ドラムスティックとサイ)の 4 片の肉となります。[「レッグ」「ドラムスティック」「サイ」は米国の食肉規格の部位。レッグは骨付きもも肉。レッグを中央の関節で切断すると、下部がドラムスティック(骨付き下もも)、上部がサイ(骨付き上もも)となります。]

 

5 つ落とし

 標準的な 5 つ落としからは 2 つの手羽、2 つのレッグと1 つのむね肉を得ることができます。残りの肉片はだし汁鍋に入れましょう。

 5 つ落としにするには、両側を骨から引き離すことで、むね肉全体、両側を傷つかないように切り出します。胸肉を傷つかないように切り出すことで胸肉全体に詰め物ができ、巻いて美味しく見事な夕飯を作れます。

 丸鶏の側面、肉付きのいい胸肉から肉の少ない胴体の背面に変わるのを感じられるちょうど その部分から包丁で切り始めます。肉を持ち上げて外しやすくするため、探りを入れるように何箇所か切り込みを入れますが、中心にある竜骨突起にかけて、続けて反対側まで、むね肉がそっくりそのまま外れるまで入れます。

 

6 つ落とし

 6 つ落としにすることで 2 枚のむね肉、2 本の手羽、2 本のレッグが得られます。 つ落としのように、鶏ガラはだし汁鍋に入れましょう。

 むね肉を 2 枚に切り出します。包丁を使い丸鶏の中央、首から胸の先端までを竜骨がある最高位を辿りながら垂直に切ります(写真 6)。指でむね肉を一つずつめくり、包丁でむね肉を竜骨から丁寧に持ち上げます(写真 7)。手で持ち上たまま、竜骨の近くを何度か探りながら切り込みを入れてください。

 

8 つ落とし

 8 つ落としを完成させるには上記の手順に従い、サイをドラムスティックから切り離してください。

 関節を見つけるために脚をつまんで膝のところで折り曲げてください。丸鶏の脂肪が多ければ膝関節のある場所に脂肪質の継ぎ目が見えるでしょう。この部分を切ります。関節の位置を突き止めたら、ちょうどそこを通るように刃を入れられ、ドラムスティックからサイを綺麗に分けることができるでしょう(写真 8)。

 あとひとつだけ学ぶと良いであろう技は脱骨です。切り分けた肉はどれでも、ただ切り込みを入れると骨にあたるので、骨のできるだけ近くに沿って刃を入れます。骨はだし汁鍋に入れます。

 覚えておいてください。練習が全てです。鶏を丸ごと解体する最初の 23 回は鶏の体の仕組み、骨や筋肉の構造に馴染みがないため迷いを感じるかもしれません。しかし挑戦し続けることで自信をつけ、ゆくゆくは鴨胸肉の詰め物やガランティーヌ [肉に詰め物を巻き込んだ料理] を上手に作れるようになるでしょう。丸鶏の解体を学ぶことでより自立でき、農家にとっての頭痛の種である下処理と在庫の問題に歯止めをかけることができるでしょう。

 

スパッチコック(平たく開く方法): これがホントの腰抜けチキン

 鶏を丸ごと料理したければ、「スパッチコック」を検討してみてください。この技術は丸鶏から背骨を取り除くことで平らに置き、より均等に焼くことができるようにするものです。スパッチコックで丸鶏を開くには、胸を下にしてまな板に置きます。尾が自分の方に来るように丸鶏の向きを変え、首を持ちます。背骨に対して包丁が 45 度になるように持ち、背骨の片側から始めて両側を切り裂きます。包丁が背骨に対して平行だとこの作業がより難しくなります。これを包丁で行うより簡単な方法は確実に骨を砕くことのできる家禽用ハサミを用意することです。これを使えば背骨のいずれの側も真っ直ぐ切ることができます(この方法では骨盤を切断することになります)。この切断を包丁かハサミで終えたら、端に尾のついた背骨が手に入るはずです。これをだし汁鍋に入れます。

 次に、普段使いのキャセロール皿に丸鶏を胸側を上にして置き、できるだけしわを伸ばすように広げます。もしお皿の中で丸鶏が完全に平らになるようにしたいのであれば、竜骨突起が砕けるまで胸を押してください。調味バター(ニンニクとレモンを混ぜ込んだもの)かヨーグルト又はバターミルクを丸鶏に塗り込みます。味付けには塩コショウとハー ブを加えてください。丸鶏を 230℃ で約 15 分焼き、190℃ に温度を下げてむね肉の内部の温度が 70℃ くらいになるまで焼きます。オーブンから取り出し、食べ始める前に 10 分から 15 分ほど休ませます。

 

 

メレディス・リー (Meredith Leigh) は、農家、食肉解体職人、シェフ、良い職を追求する著述家として働いている。彼女は「The Ethical Meat Handbook」と「Pure Charcuterie」の著者。もっと学ぶには www.MereLeighFood.com をご参照。

 

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How to Cut Up a Whole Chicken

June/July 2019 

By Meredith Leigh