先住民のトウモロコシ

マザーアースニューズ 自給 DIY 農 伝承

先住民文化にルーツをもつパワフルなトウモロコシ 10 品種の栽培に挑戦して、自家採種で未来の世代に種を残そう。

 

文と写真:エイミーローズ・フォル (Amyrose Foll) 

翻訳:浅野 綾子

 

 地域にあるお気に入りの店に行って、便利だけれどそれほどやる気が出るわけでもない F1 品種のスイートコーンを買う前に、今年の菜園ではちょっと意 外なものを育てることを考えてみませんか。まさかと思うかもしれませんが、ほとんどの人がよく「先住民のトウモロコ シ」として一括りにするものには、実は素晴らしく多様な品種があります。そして全部食べられます。ここアメリカでは、記憶喪失もどきに陥ってしまって いるようです。嘘偽りなく、すべてのトウモロコシは先住民のトウモロコシで す。シンプルに美しいトウモロコシは、コロンブス交換[コロンブスによるアメリ カ大陸到達以降、他の大陸との間で、食料となる植物など様々な交流があったことを指す]によって、世界中の食事を変えました。人間 の同胞であるトウモロコシがスポットライトを浴びるのは当然です。人間の食べ物にこれほどまでに貢献してくれた のですから。

 生物多様性。世界の人口に占める割合は 5 パーセントに及びませんが、先住民の人々は世界中の生物多様性の 80 パーセントを守っています。極端な気候を経験している今、私たちの祖先が汗を流して代々種を採ってきたこうした古 い品種の多くに、気候危機への解決策が隠れているかもしれません。これらの作物の中には、水が少ない環境や、短いライフサイクルに適応しているものもあります。今の農業を進化させて気候に合うように変えるにはどうしたらよい か。こうした作物がその答えである可能性は高いかもしれません。

  文化の保存。トウモロコシの根、そしてこの大地は、数えきれない世代の人間の骨粉や血に混じり合ってきまし た。主流品種ではありませんが、現代のすべての商業用トウモロコシの生みの親である、こうした品種を保護するの は必要不可欠です。種の 1 粒 1 粒に、生育を繰り返した幾多の季節、後世に残すことが望まれた特徴があらわれてい ます。これらの種は、豊かな実りをもたらして後に続く世代が生き残ることを確実にするものとして、私たちの祖先が 慎重に選抜したものです。種を播き続けましょう。毎年育てて種を採り、在来トウモロコシの多様性が失われること を防ぎましょう。

  気候レジリエンス。変わりゆく気候は動植物だけでなく、私たち人間にも影響があります。人間は自然の中で進 化してきました。人間を自然から切り離すことはできません。どれだけ規模の大きな、もしくは人の過密な大都市圏に住んでいたとしても、切り離すことは できません。気候は生きものすべてを結 びつける食物網の基礎ですから、確実に 維持しなければなりません。めずらしい 品種には、人が新たな気候パターンを乗 り切るのに役立つ特質があるかもしれません。

 

Nia Skamonikikonal(わたしのトウモロコシ畑)

 私のお気に入りのトウモロコシ 10 品種をご紹介しましょう。それぞれに独特で、聖なるインディアンの三姉妹の菜 園で有名な、あの三姉妹のひとりにあげられる特別な作物です。私は学者でもなく科学者でもありませんが、私の創 造主と祖先は、来る世代のために祖先の知識をまもる権能を私にゆだねました。私はこの知識を維持し、ゆっくりと 未来に渡していくつもりです。そうすれば、代々受け継がれてきたこの種とその物語が、私たちの子どもや孫たちを養 い、強くしてくれるでしょう。この 20 年間畑を耕して、私は思っていた以上に、菜園から学ぶことができました。菜 園は忍耐と不屈の精神を教えてくれます。私たちの所に来た人たちが、菜園での作業を通して生活できるようにしてく れます。毎年種を採ることで、私たちはその物語の一部になります。祖先が汗を流して働いていなければ、今日私たち の手の中にある種は存在していなかったでしょう。  種は未来の世代への贈り物です。生物多様性を通してこの知恵の遺産をまもるために、私たちは力をあわせなければなりません。

 「アベナキローズ (Abenaki Rose)」このトウモロコシは先祖伝来のフリントコーン。私の心に触れるトウモロ コシで、祖先から自分に渡された特別な知恵のようなものです。このトウモロコシは私の中で種を播くこと、種を採ること、そして種を無償で譲って他の人たちを養うことについての考えを変えたチェンジエージェント[変革推進者]に なりました。「Abenaki Rose」 のようなフリントコーンは、かつてはドーンランド (Dawnland: ニューイングラン ド、ニューファンドランド、ケベック、セントローレンス海路周辺の地域)の食糧でした。フリントコーンはこの地域 における先住民の主な食糧で、1800 年代を通して農家の食糧貯蔵室ではよく見られるものでした。フリントコーンの コーンミール[ひき割りトウモロコシ]は、ピクォート族やナラガンセット族の伝統的なホーケーキ(別名「ジャーニーケーキ: journey cakes」)を作るのに最適な材料です。私はこのトウモロコシの不規則にならぶ聖なるバラの輪や、この典型的なアベナキ族のエアルーム・トウモロコシが持つ面白い模様が大好きです。

 「ピマ・ホワイト(Pima White)」または「ピマ(Pima)」この活力あふれる品種は、ピマ族(Akimel O’odham)とハパゴ族(Tohono O’odham)の人々からのまさに贈り物といえるでしょう。ピマ族とハパゴ族が農業に すぐれた才能を持っていた証でもあります。控えめなフラワーコーン[軟粒種:軟質澱粉が主成分で柔らかく、他の品種よりも容 易に細かなコーンミールに挽ける]またはフラワーフリントコーン[自然授粉によりフラワーコーンとフリントコーン(硬粒種)の両方の 性質を持つにいたったもの]は、倹約家で少量の水で育ちます。60 日位でグリーンコーン・ステージ(乳熟期[受粉から 2~3 週間経過して、穀粒がミルクのような状態になる段階])に達します。。。

 

* 今号の記事全文は6月中のご注文でご利用いただけます。こちらからどうぞ

* 今号の和訳抜粋サンプルはこちらからどうぞ

* 和訳全文は1年おきに発行される和訳電子版のバックナンバーでお楽しみください