有償で人に依頼して自営農園を効率化

宅配や営業など、自分ではできない農場の仕事を有償で人に依頼すれば、作業の負担を減らして自営農園の運営をさらに効率化できる。

 

 

文:ジョエル・サラティン (Joel Salatin)

翻訳:浅野 綾子

 

高価な車を購入する代わりに、トレーラーがある友人や近所の人に家畜輸送のアルバイトを頼もう。Photo by Getty Images/Gerard Koudenburg

 

 DIYや自立は素晴らしいテーマ。ある程度までは、ですが。マザーの紙面上でこうしたテーマに異議を唱えるのは、異端児になるのも同然と承知しています。でも、最後まで聞いてほしいのです。

 社会運動はすべて、本来の目的から行き過ぎてしまうリスクがあります。遺伝的多様性が奪われることへの懸念は、在来種の作物や家畜以外は悪魔のようなものと捉えることにもなりかねません。肉をあまり食べないようにすることも、行き過ぎれば肉食を非難攻撃する厳格な菜食主義に陥いりかねません。端から端へ大きく揺り動く振り子は、決して真ん中で止まらないのです。乱暴に反対側に振れてしまう。でも、便利さを頑なに拒むなら、手に負えない自営農園自立主義の罠にあっけなくはまり、最後には消耗しきってしまいます。

 私が提案するのは中庸です。名づけて「相互依存 (mutual interdependence) 」。ビジネスコーチなら、これを「地域ベースの経済 (community-based economics) 」と呼ぶと思います。鶏の餌になぜ穀物を買うのか、なぜ豚を繁殖しないのか。こうした非難を露わにした質問に、自分たちの農場を擁護しなければならないことは何度もあります。こんな声も聞こえてきそうです。「ひよこは孵卵場からは絶対に買わない。自分で卵をかえさなければ本当に自立しているとはいえませんよ」 このお題の焼き直しはたくさんあります。「『ベターボーイ (Better Boy) 』のトマト?育てるのはエアルームのトマトに限るでしょ」 さらには、従業員も、パートナーもいらないと言うのです。全部自分でやりたいからという理由で。

 私が得意なことは、牛や鶏の放牧や森での作業、堆肥作り、話をすること。だから、得意なことを仕事にしています。自分の弱点を克服するよりも、自分の強みを活かし、互いに補い合える才能を持った人たちとチームを作った方が、得るものがはるかに多いのです。

 上手くできないことを把握するのは、得意なことを把握するのと同じくらい重要です。フラストレーションが溜まるつまらない仕事に1日を浪費すれば、2つのチャンスを逃してしまいます。1つ目は、自分たちで難なくできる他の仕事をするチャンス。時間をはるかに効率良く使える仕事です。2つ目は、私たちが好まないことを大喜びでやってくれる人に、その素質を表現してもらうチャンス。その人の才能を引き立てるチャンスです。

 多くの場合、協同作業への制約は、感情的であると同様、多分に経済的でもあります。お金を払って人にお願いする余裕はないと思ってしまう。だから、ぶつくさ言いながら、あっちでつまずき、こっちでつまずき、のろのろ作業をするのです。でも、お金を払って人に頼むことは、長い目でみて価値があります。良い仕事をしているグループに共通のことがあるとしたら、それは機能的なチームを作る技術なのです。

 私たちのほとんどは、手助けがあった方が仕事がはかどります。断固として独立独歩を貫くことが役に立つ時もあるかもしれませんが、ほとんどの仕事では、チームで協同作業をする方が楽しく、目標へも早く到達できます。自分たちですることと、他の人に任せることを判断することは、命運を分ける技術なのです。

 

以下に紹介するのは、効果的な農場運営にむけたポリフェースファームによる10の投資先です。

 

1. フロントエンドローダーの作業

 トラクターを使う時間が1年当たり500時間以上もないのなら、おそらく自分で所有する代わりに近所の人にアルバイトを頼む方が良いでしょう。農場をはじめたばかりの頃(現在は、フロントエンドローダーのトラクターを数台所有しています)、フロントエンドローダーを持っている近所の人に、1時間当たりたったの25ドルでアルバイトをお願いしていました。車両とドライバーの両方込みの金額でした。

 

2.大きな家畜のと蓄

 ある秋のこと、まだ農場をはじめて間もない頃でしたが、父と私は牛を6頭と蓄しました。節約になると思ったのです。でも、1日にできたのは2頭のみ。それに、と蓄した後は切り分けてもらうため、牛を肉屋まで車で運ばなければなりませんでした。往復で約50kmです。翌年は肉屋にお金を払って依頼しました。2人の男性がと蓄するのを見ていましたが、1頭あたりにかかった時間は15分。父は私を見て言いました。「とても太刀打ちできないね。」 以来、自分たちでと蓄したことはありません。

 

3.搾乳

 子供の頃、いつも2、3頭のガンジー牛 (Guernsey) の乳搾りをしていました。でも牛乳販売は違法でした。鶏肉の販売は許されていたので、牛を処分して鶏を飼育するようになりました。現在、若い男性1人にお金を支払い、雌牛2頭の搾乳を依頼しています。 今でも生乳が手に入りますが、自分たちでは搾乳していません。ただサービス料を支払うだけです。。。

 

 

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By Joel Salatin|  August/September 2018