昔ながらの炉箒をつくる

忘れ去られているアメリカの箒づくりの技術を習得しましょう。

 

手づくりの箒で掃くと、折れた枝でつくられたその場しのぎの箒から装飾の施されている地方色豊かな工芸品まで、自然素材でつくられた箒の長い歴史につながります。

 

 

文と手順写真:ジョン・ホルツワート (John Holzwart)

翻訳:藤井 さわ

 

手作りの箒で掃くと、折れた枝で作られたその場しのぎの箒から装飾の施されている地方色豊かな工芸品まで、自然素材で作られた箒の長い歴史につながります。

 もう何年も箒作りをしていますが、箒の作り方を実演していて最もよく訊かれるのが、箒の毛には何の草を使っているのですか?ということです。答えは、ホウキモロコシで、ソルガム糖蜜のために栽培される品種です。ホウキモロコシ(学名 Sorghum bicolor、タカキビとも呼ばれる)は、一年草で、遠くからだとスイートコーンに見えます。しかし、よく観察すると、茎に穂軸がなく、先端に大きな穂がついているだけで、茎との間の節は膨らんでいます。その穂が箒作りに必要となります。他にも使える自然素材はありますが、本記事では昔ながらのモロコシでできた炉帚の作り方に絞ります。

 園芸の才があれば、自分でホウキモロコシを育て、箒作りの一環とすることができます(下記「ソルガムの育て方のすべて」を参照)。そうでなければ、Caddy Supply Companyといった卸業者に注文することも考えられます。その他の材料や道具はお近くの手芸用品店や金物店で見つかるでしょう。

材料

・ホウキモロコシ 900~1300g(穂を45本ほど)

・ナイロンの紐 18 番以上

・ワックス加工されたヘンプ紐 9kg

・木製の柄

 

道具

・ハサミ

・ナイフ

・ドリル

・紐を張るための器具

・大きい針

・編む時のクランプ

・ライター

 

はじめに

 炉箒をつくるには、内側に28本、外側に17本ほどのホウキモロコシの穂が必要になります。種は取り除いておきます。腕尺(肘から一番長い指の先端までの長さ)で穂の長さを一本一本測ります。穂先を指に向け、ホウキモロコシの節(穂と茎の間のところ)を肘にあてます。毛が指先より長ければ、取り置きます。素材が短いようであれば、別に小ブラシ用に使えます。内側用は5~8cm残すのみにして茎の大部分を切り取り、外層用は15cmの茎を残して後は切り落とします。外層用の茎を割き、素材を半分にします(上の写真をご参照)。出来上がった箒の見栄えをよくするには、真っすぐで傷のない穂を外側に使うとよいでしょう。次に切り終えた茎を最低15分は熱湯に浸します。

 ホウキモロコシを浸している間に柄を準備します。市販の木製丸棒の柄を注文することもできますが、私は素朴なのが好きなので、樹皮の残った棒切れを使います。柄の準備ができたら、それを炉箒の場合45cmの長さに切り、最低6か月は寝かせます。寝かせている間に縮んだり、割れたり、剥がれるようなことがあれば、その棒切れは除外します。棒切れの寝かしが終わり、構造上しっかりしていれば、箒に使う準備は整いました。片端を手斧かナイフで尖らせ、尖らせたところの真上にドリルで穴を開けます。ここはホウキモロコシを取り付けるために紐を固定する箇所となります。

 箒をまとめるには、ナイロン紐をお勧めします。というのも作業をするのに十分に頑丈で、魅力的な色もそろっているのです。水糸も使えますが、好みの色を見つけるのは難しいかも知れません。アウトドア用品店やキャンプ用品店では鴨おとり猟用のナイロン紐を取り扱っていますし、近所の手芸用品店にはマクラメ紐があり、これも上手くいきます。箒をまとめる作業に入る前に、箒をまとめる時に使う、紐を張るための器具に、紐を巻き付けなければなりません。どんな器具でもよいのです。私は「フット・スピナー」と勝手に名付けている、紐が床につかないように水平の棒に「足」をつけたものを作り、使っています(写真①②をご参照)。お手製のフット・スピナーは簡単に作ることができます。あるいは、シンプルな棒を使うこともできますが、その場合は箒に使う紐が床を引きずってしまうことになります。箒をつくっている間は常に姿勢に気を付け、スピナーとの間に必ず余裕を持たせましょう。うっかりして余裕を持たせることを忘れてしまうものですが、気付いたら前屈みになって足元で作業している、なんてことに!

 

毛を取り付ける

 事前に浸しておいた穂を一本ずつ組んで、箒の中心を作っていきます。ドリルで開けた柄の穴に紐を通し、しっかりと結びます。紐をかなり強く引っ張らないとホウキモロコシはしっかり固定しません。節の毛のついている方にちょうど紐がのるように穂を一本配置します。紐を強く引っ張りながら、柄を中心に次の穂を加えます。一層目が終わったらその上に二層目を組んでいきます。その際、忘れずに紐は張っておき、箒の中心部をしっかりとさせてください。穂が残っても心配ご無用です!箒の材料が足りないよりは余る方がいいのですから。

 次に外側の層を組んでいきます。その前に、柄に向かって細くなるように前の二層分の穂を切り揃えます(写真①をご参照)。紐を切らないように気を付けてください。紐を柄まで巻き上げていき、ホウキモロコシの外側の層を足していきます。割った外側の層として取っておいた茎の柔らかな内面が、内側の層と合わさるよう茎を配置します。そうすることで滑らかな面が外に向きます。これまでの層と同様に、穂を一本ずつ配置していきますが、追加する時に、必ず紐がしっかり張っていることを確認してください。紐が素材を圧迫していなければなりません(写真②をご参照)。ホウキモロコシの外側の層を箒全体に取り付けたら、少なくとも箒全体を8周するように紐を巻き、ホウキモロコシの穂に幅広の帯を作ります。上手にできていれば、幅広の帯は、ヴィクトリア朝のコルセットのように、素材が柄に圧迫された状態となります(写真③をご参照)。

 次のステップはオプションで、穂の装飾編みです。箒をずっと魅力的にしてくれると私は思います。このステップは省いても構いません。その場合は茎に沿って紐を巻いていき、下部に帯状に巻いたのと同じように、最上部に帯状に巻けばよいのです。しかし、私が今まで教えてきた方々の大半と同様、茎を編みたければ、まずは茎の本数を数えて奇数となることを確認してください。もし偶数であったとしても、一番太い茎をただナイフか親指の爪で割けば茎は一本増えます。奇数分の茎が用意できたら、一本ずつ、まず上から、次は下からと交互に紐を巻いていき、茎の束に巻きつけていきます。茎の上部1cm強が残るように、もう一度紐の帯を作ります。巻きつけた紐の末端をこの帯に固定させなければならないので、もう一本短い紐を別に切っておき、2回巻いたら、巻きつけている紐の上にループ状にのせます(写真④をご参照)。最後まで巻き、親指で紐を固定します。親指より5~8cm先のところで紐を切り、作っておいたループに端をくぐらせ、空いたループの端(帯の下にぶら下がっている)を使って今ある巻きの下に作業中の紐を引っ張ります。これは通常ブラインドノットと呼ばれ、ほつれないようにロープの端を結ぶ方法です。

 ほつれと言えば、箒からほつれた紐が垂れ下がっているでしょう。先を3mm程長く切り、ライターで焼き焦がします。箒は寝ぐせのついた髪の毛のようです!ここで、ワックスのついたヘンプ紐が必要になります。ヘンプ紐にはいろいろな色があります。ワックスが箒の形を保つのに役立つのです。

 

編みと仕上げ

 毛をクランプに挟んで整え、締めます(写真⑤をご参照)。こうしておくと編んでいる間に毛がずれてくることはありません。私は糸巻きをウエストのところで持ち、へそのあたりまで3回引っ張り出します。紐を切り、半分に折って、箒を一周させます。その時、箒全体にひばり結びができるように両端をループにくぐらせて引っ張ります。下の帯状に紐を巻き付けたところから18cm程のところになります(写真⑥をご参照)。結び目はしっかり固定させますが、箒の形を崩す程きつくはしません。編む時に毛がきれいに平らである方がいいですから。

 次に針に紐を通して 2 本取りにします。私は鍛冶屋の友人が箒作りにと作ってくれた20cm弱の針を使って箒を編みますが、帆布用の大針で大丈夫です。ひばり結びを固定させるために、箒の横側の、紐が一緒になるところから編み始めます。次にロックステッチに進みます。これにはいろいろな方法がありますが、私はひばり結びにしてできたループに上から、そして下から、紐の両端を通します。針を裏側の水平な紐の上に出てくる角度にして箒の前側にある水平な紐の下をくぐらせます。紐を引き、裏側からも同様にするとステッチひとつの出来上がりです。次に前側の水平な紐の下を通るように針を向け、裏側の水平な紐の上、箒の面に沿って少し先に出します。下上ステッチを、裏から前へと繰り返し、ふたつ目をステッチします。これを箒の端まで続けます。順序を変えたり、ステッチの幅を変えると見栄えが悪くなるので、同じようにステッチしていきましょう(写真⑦をご参照)。

 列の編み終わりに、針を箒に通します。紐をちょきんと切り、次の列を編み始めます。私はいつも、箒の列と列との間に指2本分、約 4cm 弱の間隔を空けながら3回編んでいます。

 仕上げに箒の先を平らに切り揃え、持ち手の上部にドリルで穴を開けます。皮紐かジュート紐を穴に通し、作りたての箒を吊るし、不使用時の箒の美しさを楽しみます。こうすることで箒の寿命も延びます。毛で立たせるようにして置いておくと曲がってしまい、しまいには駄目になってしまいます。箒に気を掛けることで、長持ちします。それでは、掃き掃除を楽しんでください!

 

ソルガムの育て方のすべて

 最も用途の広いイネ科の一つであるソルガム(学名 Sorghum bicolor)は、穀物として、あるいは工芸用に育てたり、ソルガムシロップに加工したりできます。用途に応じたソルガム品種を選ばなければなりませんが、どの品種もトウモロコシのように容易に育てられます。

 ソルガムは、夏がかなり暑く、昼間の気温がいつも32℃に達するようなところで最もよく育ちます。トウモロコシよりも干ばつや洪水に耐える力があるため、ソルガムには温暖な気候の砂地が特に適しています。

 ホウキモロコシはソルガムの一種で、頑丈なわらに種をつけるので、箒にするのにぴったりです。飾りのような上部は、ドライフラワーアレンジメントにも使えます。ホウキモロコシ品種は、種の色が黒、赤、オレンジ、白などいろいろあります。ニワトリや他の動物はその種を喜んで食べ、砕くと非常に食べやすいものです。

 植え方。ソルガムを急いで植える必要はありません。というのも発芽して成長するには温かい土が必要だからです。温暖な気候のところでも、ソルガムは通常5月下旬から6月上旬に植えます。用意したいだけ多くの土を準備し、植え付ける前に必ず有機肥料を苗床や畝に混ぜ込んでおきます。トウモロコシと違い、ソルガムは自花受粉するため、受粉のために株間を広く空けておく必要はありません。深さ1cm程にして種を蒔き、10cmの株間を空け、苗が10cm程の高さになったら株間を20cm間隔になるよう間引きます。

 育て方。ソルガムの苗が自力で優位に成長することができるようになるまで、雑草の管理をします。植えてから6週間したら、ソルガムに有機の高窒素液体肥料をたっぷりやり、活性化させます。多くのタカキビ品種はほんの1.5m位にまでしか育ちませんが、サトウモロコシとホウキモロコシは2m超にまで成長します。

 収穫と保存の仕方。ソルガムの粒は、トウモロコシのように穀粒に傷をつけてミルク状の汁が流れ出る、未熟な「ミルク」期を経ます。サトウモロコシは、ミルク期が終わって2週間後に収穫しますが、タカキビやホウキモロコシは種が十分に熟し、光沢のある堅い皮を付けたものを収穫します。

 ホウキモロコシの種が堅くなり、枯れ始めたら、飾りあるいは工作する目的に応じて好きな長さに切ります。穂を数本ずつにまとめて乾かします。

 殖やし方。夏に、元気のよい株を種育成用として選び、夏の間は適当な肥料や水やりをすることに気を付けます。秋の乾燥している時期に、最も大きく育った種を選別し、植えるために保存しておきます。

— バーバラ・プレザント(Barbara Pleasant)

 

資材

ホウキモロコシと資材

Caddy Supply Company

www.CaddySupply.com

Johnny’s Selected Seeds

www.JohnnySeeds.com

Baker Creek Heirlook Seeds

www.RareSeeds.com

 

コミュニティー

Yahooの箒作りグループ http://goo.gl/A9q8oW にて、数多くのヒントが得られます。

 

 

リトル・ジョン・ホルツウォート("Little John” Holzwart)は、Plant Based Services LLCを経営している。米国内で箒作りを教えている。www.BroomsByLittleJohn.com で彼の仕事やスケジュールをご覧ください。

 

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February / March 2018

By Brett McLeod

 

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