手織りのコットンシャツをつくる

完全自家製の服の製作は、シンディーにとって、忘れられない経験になりました。Photo by Stephanie Conner

コットンを栽培し、処理し、紡ぎ、織り、裁縫をし、衣服を作るという、スローファッションのプロジェクトから閃きを得よう。

 

文:シンディ・コナー (Cindy Conner)

翻訳:大本 清子

 

庭は素晴らしい場所です。食べ物を自給できますし、さらに多くのものを生産できます。コッ トンや亜麻といった繊維植物の栽培は、野菜より難しいことはありません。衣服の材料とな る植物を育てることで、衣服が提供されるまでの過程を深く理解することになるでしょう。 私はコットンを使い、最初にベスト、次にシャツを種から服になるまで作り上げました。

 コットンは素晴らしい植物です。庭で素敵な眺めを見せてくれるだけではなく、紡いで糸や より糸にして、服を作るための繊維を生み出します。自分のコットンを作るには、長い栽培 期間や、肥沃な土壌、適度な湿度、そして高い温度(特に栽培後期には)が必要です。戸外 に移植する、6週間前から始めて、終霜のあとに庭に移植します。終霜の日が来ても、その 後の天気が季節外れで寒くなりそうなら、暖かかくなるまで待ってください。

 最初の開花を見るまで、2ヶ月以上待たなくてはいけないでしょう。最初、花の色は白やア イボリーで、その後ピンクに変化するでしょう。外の気温が低ければ低いほど、開花まで時 間がかかります。コットンは熱帯植物ですから、熟すのに熱が必要になります。晴れの日は、いつも暖かいとは限らないということを頭に留めておいてください(晴れの日の多い、寒い 気候に住んでいる場合、温室やトンネル栽培なら、開花を十分促進してくれるかもしれませ ん)。

 コットン生産者は、DD60s として知られる、熱単位で綿花の成熟を調べます。この熱単位 は、毎日の平均華氏気温(最高気温と最低気温を足して2で割る)から60を引いて算出した ものです。例えば、1日の最高気温が華氏90度で、最低気温が華氏60度の場合、15 DD60s と なります。DD60s が加算されていくほど、綿花はより早く成熟し、開花します。この熱単位 の詳しい説明は、テキサスA&M大学の「発展・成長モニタリング(Development and Growth Monitoring)」で見つけられます。

 私は、幅120cmの植え床で、2列か3列、もしくは4列の畝に、30cmおきに植えていきます。 私にはこのスペースがベストなのです。80cmおきがお勧めだと書いてあるのを見たことがあ りますが、私はスペースを広げて、収穫を落としたことがあります。もし商業用のコットン を栽培している州に住んでいる場合、ワタミゾウムシの予防のため、コットンを育てるには

許可を得る必要があるかもしれません。詳しいことは、地域の農業管理機構に問い合わせて

ください。

 収穫の時期になると、綿花はほとんどが種だということに気づくでしょう。私は1.1キロの 綿花を、7.5m²の植え床から収穫しましたが、種を取り出すと、コットンの繊維はわずか、 340gでした。アメリカの平均的な商用のコットン生産量は、9m²あたり、770gです。コット ンは一斉に熟すことはありません。熟す都度に収穫していけば、戸外のコットンが天候によっ て傷まないか、心配する必要はありません。商業用のコットン生産者は、一番高い位置の花 より上に、ほんの5つだけ熟したところで収穫し始めます。まだ熟してないコットンボール は大抵、小さいですし、一番最初にできたコットンボールは、一番最後にできたものを待っ ている間に、痛んでいます。栽培期間が短い地域に住んでいるなら、栽培期間を延ばすため に、ビニールハウスを使う必要があるかもしれません。あるいは、コットンボールが完成さ れる前に摘んで、暖かいところに保管するとよいでしょう。私は半分だけ開いたコットンボー ルを完全に開かすためにバスケットに入れ、薪ストーブの近くに置きます。

 自宅でコットンの処理をする 衣服を、自分の庭から一般大衆のために提供する必要はありません(ただ自分が楽しむため に作れば良いのです)。コットンを育てる体験は素晴らしいものです。コットンボールから 繊維を取り出し、使用できる糸に紡ぐのです。もし衣服を作りたい場合(私はそうして欲し いと思っていますが)、僅かばかりの収穫しかできないなら、十分な量になるまで毎年、貯 めていけばよいです。辛抱強い人に素晴らしいことがやってくるのです。

 私は自分でコットンを育てていくことにしましたが、それよりも、すぐに紡ぎたいと思う人 は、環境の持続可能性を考慮して自然な色の付いたコットンを生産している企業を選んで手 に入れることもできます。またコットンはよく染まります(あなたが、染色を試してみたい なら)。私はこのプロジェクトを始めた時に収穫した、もともと緑と茶色だったコットンに、 一番興味を惹きつけられました。

 自家栽培のコットンは、特にスピンドルを使う場合には種付きのまま、紡がれることもよく あります。糸車は、紡ぎながら種を取り出すには早すぎるかもしれません。先に種を取り出 しておきたければ、手を使って簡単に取り出せます。私は綿繰り機(コットンジン)の代わ りとして、パスタマシーンを使ってみましたが、私の好みよりも、繊維が詰んでしまいまし た。また全ての種を取り出すこともできませんでした。種は手で取り出す方が良いと思いま した。

 紡ぎながら種を取り出そうと、紡ぐ前に種を取り出そうと、どちらかというと、私はふんわ りさせた繊維を紡ぎます。もし詰まって固くなってしまったら、紡ぐ前に、コットンカード を使って梳(す)いておきます。ペットブラシでも、同じようにうまくいきます。私も最初 は使っていました。ペットショップで見つけたもので、背中にボタンが付いていて、繊維を ブラシの毛先へ押し進められるようになっていました。とても便利です。どんな機具を使お うとも、ふんわりした繊維だとより簡単に、とても均一な糸を紡ぎだすことができます。

 

スピンドルか糸車か 

 コットンはとても繊維が短く、より糸をまとめるために、十分捻れるように速いスピードで 紡がなくてはいけません。もしスピンドルを使う場合は、ウールに使用されるようなスピン ドルよりも軽いものである必要もあります。私が最初の服、ベストを作った時、コットン・ スピニングで買った、重さが約15gの金属製のタクリ・スピンドルを使いました。というの も、繊維は本当に短いので、本当に軽いスピンドルの助けが必要なのです。私が買ったタク リには、糸紡ぎ用に作られた、小さなお皿が付いてましたが、私はいつも一人用の木製のサ ラダボールを使うのが好きです。こっちの方が大きくて、私の膝の上であまり滑らないから です。

 私は2番目に作った服、シャツのためにたくさんの糸が必要でした。そこで、ブックチャル カで練習したくなりました。私はノースカロライナのアッシュビルで行われた、マザーアースニューズ・フェアのニュー・ワード・テキスタイルで、購入しました。チャルカは糸車の 一種で、インド製で、コットンを紡ぐためにデザインされています。ブックチャルカは、木 製の箱に入れらていて、本の様に折り畳むことができます。私はスピンドルを使うことは上 手くなっていましたが、チャルカの使い方を学ぶためには、ある程度の集中を必要としまし た。コツが分かるようになると、チャルカで、スピンドルよりも早く糸を作ることができる ようになりました。

 スピンドルやチャルカで作った、糸やより糸のことを、シングルズと言います。シングルズ で布地は作れますが、2つのシングルズのより糸を一緒にして縒(よ)って作る、2重の縒り

糸は、より強くなります。この縒り糸を作るには、紡いだシングルズを、それぞれボビンに 巻き、2本の糸の先を合わせ、シングルズを紡いだのと逆方向に、縒ります。もしシングルズ

を時計方向へ縒ったのなら、反時計周りに縒ります。

 

手作りの服 

 私はコットンの手紡ぎの旅を始めた早いうちに、アドバイスや助けが欲しくて、地元の繊維 のグループに入りましたが、それ以来、このグループは非常に大きな助けになっています。 2年に1度開催されるグループの交換会で、私は手紡ぎのより糸を織って布にするために、小型の機(はた)織り機を買いました。この機織り機は幅が30cm ありますが、24cm の布しか 織れません。

 私の最初の自家栽培と手紡ぎによるコットン・プロジェクトでは、ベストを作りましたが、 これは主に緑のコットンを使って作りました。私はよく着る、市販のキルト風のベストから 型紙を作り、それから 24cm幅の布を使った型紙をデザインしました。24cm幅では、前身頃と後身頃には、十分でないので、足りない分を補うために、脇の面を追加しました。また、 ボタンも必要でしたが、ボタンホールのために、苦労して完成させた布に、穴を開けたくあ りませんでした。そこで茶色のコットンのより糸を編んでループを作り、手作りの貝ボタン に対する位置に、縫い付けました。

 私がシャツ用の布作りを開始した時、私は紡ぐ前に、服の色味をしっかり調整できるよう、 緑と2種類の茶色の繊維を慎重により分けました。私の植え床で掛け合わされた、元来は緑

と茶色だったコットンは、薄茶色になったので(下の「色付きコットン」を見てください。 私は3色のコットンを使える様になりました。そしてまた、紡ぐ前に種を全て取り出しまし

た。私のブックチャルカは、紡ぎながら種を取り出していくのが難しいほど、早く作業がで きます。

 このプロジェクトで一番難しいところは、どれだけの繊維が必要かを見積もるところです。 ベストを作るのに、2重の縒り糸がどれだけ必要かを計算しました。しかし今、私はスピン

ドルの代わりに糸車を使っていて、糸紡ぎの経験が豊富です。私の糸は細く1cm の布を織る のに、より多くの糸を必要とし、また色付きのコットンの在庫も限られています。しっかり 記録を付け、サンプルの布を織ることで、2.5cmの布に、未処理のシングルズが40m必要であ ると見積もりました。このコットンは2回煮ます。1回目は紡いでシングルズにした後です。 2回目は縒った後です。私は約12.5%の収縮を予想しました。全てが縒られた後、2重の縒り 糸が、プロジェクトを完了するのに、どれくらい必要かを計算しなくてはいけません。私の 計算では、実際に2重の縒り糸が、17mから20m必要となりました。そこで20 mと見積もりました。私は十分な繊維があることを確実にするために、余裕をもたせた見積 もりを採用し、また保険として、数年前に作った白いコットンも加えました。

 私は茶、緑、白のコットンを別々に紡ぎ、それから茶と緑、茶と白を縒りました。ベストを 作った時と同じ、30cmの小型の機織り機を使い、24cm幅の布を織りました。前身頃と後身 頃で2枚ずつの布と、両脇にそれぞれ0.5枚。袖は、それぞれ2.5枚作りました。できるだけ布 を節約したかったので、首回りの一部を除いて、織った布をその形のまま使ったデザインの シャツにしました。ベストを作った時とちょうど同じ様に、2.5cmごとに、薄茶色の8本の縦 糸を使い、コットンの色が際立つようにしました。横糸も自家栽培の2重の縒り糸で作った ものです。

 私は4枚の長さが77cmの布を前身頃と後身頃用に織りました。色違いの部分は継ぎ合わせず に、織りながら色を変えていきました。織りながら長さを計っていき、それぞれの布の同じ 位置で茶色と緑色の横糸を茶色と白色の横糸に代えたので、布同士を縫い合わせる時は、た だ揃えるだけで済みました。脇用の布はそれぞれ56cmの長さに織りました。両袖とも長方 形の布にして、長さは36cmで、そのうち27cmは茶色と白色のより糸で織り、9cmは茶色と緑 で、胴部分と同じ色分けにしました。2.5cmのヘムを取り、うち1cmは内側に折り返し、端 を中に入れて縫い付けました。これまでの寸法は最終的なものではありません。(機織り機 で引っ張られた布を織り機から外す時も縮みます。織る際は長さの収縮を考えておかなくて はなりません。)これは約8%に達しました。。。(つづきは掲載号を購入してお楽しみください。)

 

シンディー・コナー (Cindy Conner) は、パーマ・カルチャーの指導者で、ホームプレース・アース有限責任 会社の業務を担当しています。会社を通じて、持続的成長の実践や、他の技術について教え ています。近著は「種のコレクション (Seed Libraries)」です。

 

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