メーソンリーヒーター

超高効率な暖炉で、薪、手間、時間、心配を減らして長く続く暖かさを生み出す。

 

堀水 理佳代

 

私の母は、頭の悪い人間を育てませんでしたが、とても怠け者な人間を育ててしまいました。なので、私が歳をとり、化石燃料ではなく木材で家を温めようと決めた時、ほとんどの自営農園者が選ぶ道へ私は進みませんでした。常に燃料を入れ続けなくてはいけない鋳鉄薪ストーブの代わりに、効率的、より少ない労働で済むメーソンリーヒーター [石やレンガを積んで作ったロケットストーブ] を家に設置しました。

 本質的に、メーソンリーヒーターは、一回に入れる薪が超高温で急速に燃え、その生成された熱が蓄積するように設計された、全て石やレンガで造られた暖炉です。そして、このヒーターはゆっくりと、通常1日かけて、蓄熱した熱を放射します。あなたはきっと別の名前で、このヒーターを聞いた事があるでしょう、ロシアの暖炉、ドイツのストーブ、フィンランドの暖炉、kachelöfenという名前までも。これらの名前は全てメーソンリーヒーターを示しています。

 秋と春の殆どの日、84平米の私の家を温めるには、メーソンリーの燃焼室に1回分の薪 、私の場合11kgを入れ、新聞紙と焚付けを燃やして薪に火をつけ、ドアを閉めて、ゆっくり座って、私のミニ・インフェルノを眺めるだけです。次の日まで、もう薪に触る必要はありません。冬はこれを2回しなくてはいけません、朝食前に一回分の燃料を入れ、そして寝る前にもう一度。家の中で何も燃えていないが煖房はついたままで、真夜中に暖かいベットから起きて薪を数本くべる必要がないと、安心し眠りにつくことができます。

 家から離れて働いていて、一日中家に帰らない人にとって、これはとても魅力的でしょう。燃料を煖房に入れる人が家にいなくても、家を温めることが出来て、長い一日が終わり家に戻ると、暖かくて快適な家が待っています。

 

どのような仕組みか

 私たちは普通、何かが燃えることで熱が発生することを期待します。 じゃあ、燃料を常に燃やすことなく、どうやって12時間以上住居を暖めるのですか? 簡単な答えは「蓄熱体を使って」です。

 私たちは毎日巨大な蓄熱体の上を歩いていて、それを「地球」と呼んでいます。太陽は地球の表面を暖め、そこから暖かい風が来ます。 世界の蓄熱能力が、私たちが地球に住むのを可能にしています。 同様の能力がメーソンリーヒーターに組み込まれています。 ほとんどのメーソンリーヒーターの重量は1〜5米トンです。それは2,000〜10,000ポンド (900〜4,500kg) の蓄熱する石やレンガの塊です!

 メーソンリーヒーターは火からの熱い排気を、石やレンガの塊の中の、うねり曲がった煙道に運び、その巨大な構造物を残す所なく温めます。暑い夏の太陽によって車庫への道のコンクリートや、泳げる自然の水場の周りの大きな岩が温まるように、その後、熱は長い間その塊の中に留まります。

 メーソンリーヒーターは、どっしりとした大きいものから、薄くて背の高い形まで、色々なデザイン、大きさがあります。しかしすべて、長い迷路状の煙道を利用しているという設計の要素で共通しています。そこが熱交換が行われる所です。火からの排気は、燃焼室から出て、最終的に煙突に上がる前に、時には下に、時には上に、時には左に、時には右に、時には前に、時には後ろに、と長い距離をぐるぐると回ります。 (スライドショーのイラストを参照)。

 すべての煙道は耐火性のある石工材料で作られていて、排気から熱を吸収し、巨大な蓄熱材を充電します。メーソンリーヒーター設計者としての私の目標は、熱交換のために適切な広さの表面積を組み込むことです。煙突に排気が届く前に、最大限の熱を取り込むたいのです。正しく行われれば、排気が煙突を登り家から出るのに必要なだけの熱が残るでしょう。

 その結果、熱効率の非常によい暖房になります。暖房の効率はどれくらい燃料を燃やして生み出された暖さがどれくらい家の中に留まり、心地よい温度にしてくれるかです。ヒーターの中の熱交換を最大に設計すると、暖房の効率も最大になるのです。

 火が消えて、熱の吸収がなくなると、石やレンガの塊に蓄積された熱はメーソンリーヒーターの外壁へと移動します。ヒータの外壁が暖かくなる程、より熱が生活空間に放射されます。それは、外側の表面を流れる空気も直接温めます。適切に設計された時、ヒーターは火が消えた後何時間にも渡って、外壁から熱を伝導、または放射し続けます。メーソンリーヒーター設計で、暖房の時間が決まります。通常は最低でも12時間です。したがって、冬の最も寒い日でも、1日に2回の焚付けで1日分の生活空間を温めるに十分です。

 

放射熱

 メーソンリーヒーターの最もよい利点は、放射熱をほぼ全て発生することです。それが何を意味するかわからない場合は、静かで晴れた日に外に出て、目を閉じ、顔を太陽に向けてください。

 顔に感じる暖かさは、何億kmもの距離を旅してあなたの頬をバラ色に染める、太陽からの放射熱です。メーソンリーヒーターからの放射熱はそれとまったく同じ感じです。 それはあなたを部屋から追い出すような熱さでもありません、金属製の薪ストーブがサクランボのように赤く燃えている時のように。メーソンリーヒーターは、焼きたてのクッキーをくれるおばあちゃんのように、静かで、永続的で、優しい暖かさをもたらします。

 人の体は放射熱に非常に肯定的に反応します。 肌は、穏やかな放射熱に触れるとリラックスします。肌の血管も肯定的に反応し広がり、血液循環と暖かさを促進します。

 最近のほとんどの家庭は、まったく温められていません。 強制給排気式温風暖房機(や薪ストーブも)主に空気を温めるだけです。炉からの暖かい空気は、温められた空間にいる人々の熱損失を減らすブランケットとして役立ちます。温風暖房機で暖房する場合、あなたの家の温度はおそらく約20℃です。しかし、あなたの体の中心の温度は約37℃で、体表面温度は約27℃です。20℃の空気を使って27℃から38℃の体を加熱することはできません。それは氷を使って残り物のチリコンカルネを再加熱しようとするようなものです!

 メーソンリーヒーターに戻ると:機能しているメーソンリーヒーターは、通常あなたの体より暖かい49から93℃の表面温度を持っています。

 メーソンリーヒーターの適度な表面温度の利点の1つは、安全性と関係があります。あなたは93℃のメーソンリーヒーターの表面に短い時間触れることができ、火傷しません。 これは熱い金属製の薪ストーブで火ぶくれになることがあるのとは大きな違いです。 このように、メーソンリーヒーターは、子供が側にいても安全です。

 

メーソンリーへの賛辞

 マークトゥエインは1800年代にヨーロッパに渡り、メーソンリーヒーターの生まれた旧世界の寒い地域で、それを初めて経験しました。彼はヨーロッパや他の地域でヒーターを賞賛し、このように書いています:

 「一日中、そして夜中過ぎまで、部屋の隅々まで素晴らしく暖かく快適で、閉塞感、圧迫感がなく、頭痛もないだろう。アメリカの部屋は、蒸気、温水、または直火のどれで暖房されていようが、床の吹き出し口 [温風セントラルヒーターで各室にある温風の出る吹き出し口]や暖炉の側が最も暖かく、熱は部屋全体に均等に分散しない。しかしドイツの部屋はどの場所も同じように快適だ。ストーブの近くにいようがいまいが無関係。その表面は熱くならず、どこを手で触れても、火傷もしない。これらのことを考慮されたし。1回の燃焼で1日中暖かい。コストはほとんどゼロ。暑過ぎたり寒過ぎたりを繰り返さず、1日中同じ暖かさを提供する。自分の事に安心して集中出来る。火への懸念で不安にならずに済む。 体の求める心地よい夢がかなう日となる。」

 マークトウェインが言及した快適な利点だけではなく、メーソンリーヒーターはきれいに燃焼します。適切な量の酸素を含む乾いた木材は完全に燃焼し、実質的に煙を出しません。良く設計されたメーソンリーヒーターは、593℃を超える温度で約95%の燃料の燃焼を達成します。主な排気は二酸化炭素と水になります。

 このクリーン燃焼の効果は、燃焼熱を蓄熱できる設計と組み合わさって、あなたが想像するよりも燃やす薪が少ないという、さらなる利点をもたらします。私が186平米の家に住んでいたとき、同じ広さの家に住んでいた友人と記録を比較しました。(実際には、彼の家はより断熱されていましたが。)彼は鋳鉄製のウッドストーブで毎年家を暖めるのに8〜10コード [1コードは 3.62 m3 。4x4x8フィートの大きさで積んだ薪に相当。] の薪を使用し、一方、私はメーソンリーヒーターで4〜5コードの薪を使用しました。 色々な意味で、実証的な調査ではありませんでしたが、彼にとって大きな驚きだったのは確かです。かわいそうな彼は、1年間に十分な薪を割りますが、それは私の家で2年間暖房できる量なのです!

 メーソンリーヒーターを多用途化して、コンロとオーブン(またはその両方)を組み込んだものもあります。コンロでは、通常、煙道ガスは、石やレンガを組み上げた塊に移動する前に、鋳鉄製のコンロの表面と接触し、その後、塊が残りの熱を捉えます。焼き料理のオーブンを選ぶのは、生活空間を暖房するのと同じ燃料を利用して食べ物を調理するという方法です。 天井の低いオーブンは、ベーキングの世界では独特です。それは、対流、伝導、輻射熱で同時に食品を調理します。

 メーソンリーヒーターを使用する大きな利点の1つは、燃料に使用される木の種類にかかわらず、効果的で能率的であるということです。通常信じられていることとは対照的に、暖房に使用する針葉樹は広葉樹よりも必ずしも悪い選択ではありません。実際、すべての木材種の乾燥燃料1ポンドあたりの加熱能力はほぼ同じです。針葉樹は、燃料が非常に速く燃えるので、典型的な金属ストーブを持つ人にとっては深刻な問題です。樹液の多い針葉樹の火を抑えようとすると、クレオソートと煙がたくさん発生します。これはメーソンリーヒーターにとって問題ではなく、すべての燃料が素早く高温で適切な量の酸素でクリーンに燃焼します。

 

選択肢を評価する

 手間が少なく、薪が少ない。穏やかで、持続する暖かさ。常に燃料を入れる必要がない。子供が火傷する事もほとんどないでしょう。そしてどれほど美しいか言いましたっけ?ああ、誰がメーソンリーヒーターを望まないでしょう?(まあ、必要以上に働きたいのならば別ですが。)しかし、メーソンリーヒーター注文する前に、考慮すべき事項がいくつかあります。

 まず、メーソンリーヒーターは驚くほど重いです。しっかりした基礎が必要となります。その為の最も一般的な方法は、土台とコンクリートブロックの基礎を、地下もしくは床下から一階まで建築することです。その構造の上にコンクリート床を注ぎ、その上にメーソンリーヒーターを造ることができます。

 また、メーソンリーヒーターは通常、前面、背面、側面、上部、場合によっては底面のすべての面から熱を放射するように設計されています。そのため、最適な設置場所の一つは、外側の壁ではなく、生活空間の中心です。多くの人々が、メーソンリーヒーターを部屋の仕切りにし、ダイニングルームとリビングルームの間、またはファミリールームとキッチンの間に置きます。壁のないオープンなフロアプランは、輻射熱が家の中を妨げなく確実に回ります。 これらは必須の条件ではなく、最高に上手く行く場合の話です。

 中央の場所はまた、換気の観点からも機能的です。効果的で、効率的で、トラブルフリーのメーソンリーヒーターには、信頼できる排気の良い煙突が必要です。それを実現する理想的な方法は、できるだけ家の中の暖かい空間に煙突を置くことです。これは自ずと家の中心部分となり、煙突は結局尾根に近い場所 ー 家の中で最も高い部分 ー から家の外に出ます。これはまた、屋根からの水漏れを最小限に防ぎます。屋根の下側から出る煙突は、雨水の流れの下流にあるため、汚れや破片を捉えがちで、防水の為の隙間を埋める保護材を時間の経過ともに傷める可能性があります。

 そして最後に、このすべての利点、美しさ、機は決して安くはありません。メーソンリーヒーターは、木の暖房の世界のキャデラックであり、それを証明する値札が付いてきます。メーソンリーヒーターを造ってもらう為に専門家を雇うなら、新しい車を買うのと同じくらい支払う計画をして下さい、約10,000から30,000ドル— もしくは、大規模なもの、完全カスタムなもの、そして世界に一つのデザインのものにはそれ以上かかるでしょう。

 とても高額に聞こえるでしょう。しかし、これは全て石かレンガ造りで造られた一生もの、次世代に残る家庭器具です。あなたがヒータを楽しみ、次の世代が受け継ぐ時も最大限の能率で働くでしょう。設置後数十年の間、あなたが努力することなく、ヒーターは多くの熱放射の快適さを与え続けるでしょう。 私は人々に、彼らがしていること、実際のところ、車やトラックに同じ高額のお金を費やし、そして数年後に別の車を買っていることを気づかせたいです。メーソンリーヒーターは、あなたが長い間運転し回した後も、そのすべての価値を失うことはありません。 これは岩のように硬い投資です — 洒落ですよ。

 

たのしい暮らしをつくる

マザーアースニューズ

購読登録はこちらからどうぞ

 

Masonry Heaters: Warm Your Home with a Gentle Giant

By Ken Matesz

February/March 2018

 

バックナンバーの購入はこちらからどうぞ