小規模な種子・ナッツオイルの生産

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新鮮で風味豊で香り高いオイルは、あらゆる料理に利用できる。

文:ベヴィン・コーエン (Bevin Cohen)

翻訳:大橋 麗美 校正:沓名 輝政

 

植物由来のオイルは、種子やナッツ、時には果実から抽出され、紀元前6000年頃から人類の食生活に欠かせないものです。約8000年前のものと考えられているイスラエル北部の遺跡から、考古学者たちはオリーブオイルを生産した痕跡を発見しています。北米では、インディアナ大学の考古学者が、4000年以上前の台所跡からヒッコリーナッツからオイルを抽出した痕跡を発見しています。これらの油は、当時の人々の健康と幸福のために極めて重要なものでした。種子油やナッツ油に含まれる食物性脂肪は、ビタミンの適切な吸収を助け、脳や神経に不可欠な働きをするなど、体にとって基本的な役割を担っています。

 オリーブの実が絞られて、その風味豊かで貴重な精油を解き放ってから8000年、食用、薬用、宗教用など、オイルの用途はそれほど大きく変わっていませんが、製造方法は大きく進化してきました。最も古い技術は「水を使う抽出法」です。種や実の殻を剥き、砕いて水を加え、沸騰させる方法です。油分は表面に浮いてくるので、それをすくい取って保存します。これは、時間がかかり、生産量も少ない方法です。最初の機械式圧搾機は、紀元前2000年頃、インドでゴマ油を抽出するために開発されました。ガニ(ghani)と呼ばれるこの初期の機械は、大きな乳鉢と乳棒に似ており、通常牛の力で動かされました。近代の原動機付きの圧搾機は、今日も商業上使用されており、インドでは最も一般的です。

 この技術のバリエーションとして、油糧種子に直接圧力をかける「エクスペラー搾油機(expeller press)」があります。この機械は、水平な円筒の中に回転するスクリューがあり、回転させると種やナッツにかかる圧力が徐々に高くなる仕組みになっています。普及していて電動式と手動式があり、操作も簡単で効率も良いので、家庭用の搾油器としておすすめです。

 近所のスーパーでは、さまざまな種類の種子やナッツのオイルが売られていますが、なぜ自分で搾油するのに時間と労力をかけなければならないのでしょうか?一番の理由は、風味です。オイルは本来、脂肪ですから、時間が経つと分解され、腐ってしまいます。機械的に抽出されたオイルとは異なり、市販のオイルのほとんどはヘキサンを使った溶剤抽出法です。この化学的な抽出法は収量が多く、収益性も高いが、精製、脱色、脱臭、脱ガムなどの工程が多く含まれます。その結果、オイルの保存期間は非常に長くなりますが、風味、色、香りが損なわれてしまいます。精製されたオイルは便利ですが、小 規模なコールドプレスオイルのような品質を提供するものではありません。

 適切な器具があれば、自宅で簡単に栽培し、採取し、高品質のオイルを搾油することができます。ここでは、私のお気に入りの油糧作物をいくつかご紹介します。

 

シンプルなひまわり油 

 鮮やかな黄金色の油糧種子であるヒマワリは、簡単に栽培できる一年草で、小さな黒い殻の種子から24%~47%のオイルが得られます。この品種は、鳥の餌としても売られているヒマワリの品種と同じものです。現在、油の生産に特化した品種を含む多くのハイブリッドひまわりが市場に出回っていますが、最も一般的な品種でも風味豊かで有用な油を生産することができます。その名の通り、日当たりのよい場所で最もよく育ちます。水はけのよい良く耕した土を好み、霜の心配がなくなってから植え付けるとよいでしょう。

 ひまわりは、葉が黄色くなり始め、花の頭の裏側が茶色掛かった黄色になるまで、畑で熟成させます。花から約15cm下の茎を切り、カゴに収穫します。手や布巾でこすって容易に種を取り除き、種を容器に集めます。網でふるい、または扇風機で殻を吹き飛ばして取り除きます。7~10日ほど乾燥させたら、搾油の準備完了です。搾油するまで、気密性の高い容器に保存しておきます。

種を丸ごと、殻ごと、または砕いた状態で圧搾機にかけます。出来上がったオイルは深い黄金色で、マイルドでナッツのような風味があり、サラダのドレッシングやマリネに最適です。また、ビタミンEを多く含むので、スキンケア製品にも重宝されています。

 

かぼちゃオイルがもたらす風味 

 典型的なオレンジ色のカボチャは、学名 Cucurbita pepo という品種の数あるうちの1つです。この品種には、ほとんどの夏カボチャと、その名の通り、冬に使用するために最も一般的に貯蔵される冬カボチャがいくつか含まれています。ウリ科には学名 C. maxima、学名 C. moschata や他の品種のように栽培品種化されたカボチャの種もあり、食用とされ、油を搾ることができます。ただし、C. pepo には特に油糧種子として使用するために開発された品種があります。カボチャを油として搾油するようになったのは、中央・東ヨーロッパが最初です。1870年頃、オーストリア南東部のスティリアンカボチャ農家が、ランダムな遺伝子変異を発見し、殻のない種子を生産するカボチャを作出しました。この種は油の抽出に適しており、その油は風味や品質が優れていることがわかりました。それ以来、殻なし種を持つカボチャは数多く開発され、いずれもロースト、スナック、オイル生産に最適な品種です。。。

 

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