ポーポー・ミードづくり

採集した果実+発酵=ファンキーなお酒

 

ポーポーは、最も大きい米国原産の食用果実です。ポーポーは生でも食べられますし、プリン、スムージーやアイスクリームにもできます。

PHOTO BY ALAMY/YARVIN MARKET JOURNEYS.

 

 

 

文:アンドリュー・ムーア (Andrew Moore)

翻訳:藤井 さわ

 

私はポーポー男です。この果物を初めて口にした時から虜になっています。ポーポーは最も大きい米国原産の食用果実で、東部の木々に比類のない、マンゴとバナナのカスタードクリームのような舌触りと味がします。オクラホマ州東部から大西洋にかけて、また、ミシガン州南部からルイジアナ州にかけて、ポーポー(学名:アシミナ・トリロバAsimina triloba)は温暖な気候を彷徨う熱帯果物のようで、その味と同様に、魅力ある歴史があります。

 この7年間、アメリカ先住民の野草摘みから開拓民の食生活まで、私はポーポーの木と実について調べてきました。また、野生果物マニア、パーマカルチャー実践者、アマチュアの育種家やプロの科学者の間でポーポーが復活していることを書いてきました。その間、私は確実に一生分のポーポーを食べたでしょう。生でも食べましたし(一番おいしいと思う)、プリンやスムージー、とっても美味しいポーポー・アイスクリームもつくりました。森から、あるいは農家や園芸仲間からポーポーを集める内に、だんだん疑問が浮かびはじめました。全くこんなにポーポーを集めて私は一体どうするのだ?

 そこで、アメリカの伝説で見落としている点があることに気づきました。ポーポーのお酒です。南北戦争から20世紀にかけ、ポーポーのブランデー、ビール、そしてワインに関する記述が残されています。ウェスト・バージニア州のロイ・リー・ハーモン(Roy Lee Harmon)はかつて「ポーポーのブランデーは、他に類のない飲み物である。ブランデー・グラスに何杯か飲むと、ピンクの雲の上に浮かんで、美しい景色を見ながらアイスクリームを食べているような感覚になる。」と記しました。19861896年のケンタッキー州のある新聞では、「ポーポーが完熟を迎え、マウンテン・マンがポーポー・ビールの醸造で栄光を」と讃えています。この伝説を念頭に、私は地ワインをつくり、私自身の栄光を探し求めることを決意しました。私と同時代の人にも、既にポーポーの醸造を試している者がたくさんいます。ポーポーの実が熟す9月には毎年、オハイオ州だけでも十数もの酒屋が季節限定のポーポー・ビールをつくっています。ポーポーのワイン、ビールそしてミードとなると、ノースカロライナ州からケンタッキー州、ミズーリ州、インディアナ州にもあります。

 恐らくこの世の誰よりもたくさんのポーポーを食べており、ユニークなポーポー醸造酒をいろいろと試飲してきたとは言うものの、このプロジェクトを始めるまで私はミードづくりについて、ほとんど何の知識も持ち合わせていませんでした。発酵は、我々が信じ込まされていたよりはるかに容易であることは、発酵の復活が証明しています。勢いづいて私も始めました。何度か試し、また、何冊かの本、友人、インターネットを参考に、私はポーポー「サイザー」、つまりアップル・サイダーでつくるミード(蜂蜜ワイン)をつくることにしました。ミードは世界で最も古くからあるお酒で、必要な材料が少なくて済み、それほど正確でなくてよいことから、ビールではなく、こちらを選びました。また、地元の蜂蜜が使えるて点もよいと思いました。ただ、ポーポーを使ったミードづくりは容易ではない、と忠告を受けていました。まず、種と皮から果肉を外すには、大変時間がかかり、難しいときもあります。また、発酵した後の味は、ポーポーの臭みが強いこともわかりました。出来上がりは、果実の熟れ具合やその他にも多くの要因によって、ほんのりとトロピカルな風味から、カラメルや糖蜜の風味までと様々ですが、ポーポーの刺激が圧倒的です。

 

ポーポーを摘む...

 ポーポー・ミードをつくるにあたり、まず、ポーポーを探さなければなりません。米国東部にお住まいであれば探しに行くことを検討してください。ポーポーはたいてい小川や水路沿いに、アメリカの低地の水はけのよい堆積土に生えています。生い茂る木々、足程の大きさの葉っぱ、うっそうとした茂みの中に生えており、探す楽しみがあります。それでもポーポーの木が見つからなければ、いくつかのオンライン卸業者から生鮮果実あるいは冷凍果肉を取り寄せられます。あるいは、ポーポーを育てる人は増えていますので、地元の野菜直売所や生活協同組合で尋ねるのもよいでしょう。

 生の果実を食べることも愉しみたく、果肉も一緒に醸造したいと思いました。そこで、手に入る中で最も品質の良い果肉を使いました。実は締まってはいるが、盛りの花とトロピカル風なとても香りのよい、果肉の味、色、舌触りとも完璧な状態で冷凍されていると私が思ったものを。

 ワインづくりをしている仲間の中に、悪臭の元となる可能性のある野生酵母を死滅させるためにポーポーの果肉に火を通す者がいることを知りましたが、私は生のポーポーの味が好きなので、果肉に火を通したくありませんでした。そこで、私は野生の酵母と賭けに出ることにしました。野生酵母が何を産み出すかは予想がつかず、悪名高いポーポーの麝香のような香りの元になるかもしれません。それでも、私はリスクを取ってでも、この果物の特質を探究したかったのです。禁酒法時代にオハイオ・バレーにいた祖先が、「自家醸造酒の中で最も強烈な刺激のある酒」と1921年に報告されたビールを醸造した時も同じだったのではないかと思いました。

 

ポーポーを壺に入れる

 サイザーをつくるにあたり、いくつかの道具が必要でした。3ガロン(11.4L) のガラスのカーボイ(大型瓶)を街角のイタリア料理食材専門店で調達しました。別のお店で、エアロックを購入しましたが、1ガロン (3.8L) バケツのおまけ付きでした。チーズクロスを台所の引き出しから取り出し、手彫りの木のスプーンをつかみ、サイフォンは借りました。こういったいつもの道具で、準備は整いました。

 サンドール・キャッツ(Sandor Katz)の「Wild Fermentation(野生の発酵)」の第一版に載っている、柿サイザーの作り方を見て、これだ!と思いました。材料を混ぜ、蓋をし、待つのみの、レシピのシンプルさが気に入りました。また、ポーポーを醸造させるのに、米国原産である他の果物の醸造方法を当てはめるのも妥当だと考えました。蜂蜜には、アメリカ・サイカチ花を選びました。この種類にしたのは、単純にアメリカ・サイカチもポーポーもアメリカ東部原産の木であり、いうなれば仲間だからです。また、アメリカ・サイカチの蜂蜜は、バニラのような味がすると言われており、温暖と熱帯との出会い、と特徴に奥行きが出ます。

 

ポーポー・ミードのレシピ

材料:

・ポーポーの果肉 4カップ

・蜂蜜 450g

・アップル・サイダー 1.9L

・水 1.9L

 

 初めて冷凍果肉を使い一壺のポーポー・ミードをつくった時の作り方を紹介します。まず、ポーポーの果肉を室温で解凍しました。次に、勢いよくかき混ぜてアップル・サイダーに蜂蜜を溶かしました(無添加のサイダーだったため、冷蔵庫で発酵が始まっていました。)それから、ポーポーの果肉を加え、さらに混ぜました。最後に、水を加え、壺にチーズクロスをかぶせました。

 次の日、チーズクロスを持ち上げたところ、二酸化炭素の泡で上面に押し上げられた、果肉の分厚い泡が浮き上がっていました。そこで、次の週は混合物(醸造用語ではマスト)を1日2回かき混ぜました攪拌させることで、カビを防ぎ、確実に最良の味を浸出させます。混合物は時折、自然に優しい泡を出していましたが、かき混ぜて活性化させると、マストは元気に発泡するだけでなく、シューッと音も立てます。私は発泡するところやシューッとするのを観察したり、まだ若いお酒の香りを嗅ぐのを愉しみました。

 一週間程すると、発泡はかなり落ち着きました。そこで次にミードをカーボイにサイフォンで移しました。作った量が少なかっため、後ほどミードを最初のカーボイからもう少し小さい、発酵を終えるのに程よい容量の1ガロンの瓶にサイフォンを使って移しました。その際、途中で若いお酒も飲めるよう、別に確保しておきました。出来上がり量:おおよそ1ガロン。

 

ポーポー・ミードづくりの実験結果速報

 少し濁ってはいましたが、出来上がったミードは、熟れたポーポーに似た薄い黄橙色をしていて、私の望んでいたポーポー・ミードそのものでした。

 見た目が大事とはいえ、当然ながら、どんなミードも味にかかっています。他の人がどう思うかを知りたく、2か月後、10年ミードづくりの経験があり、しかもポーポー・ミードをつくったことのある友達を招きました。一緒にテイスティングしたところ、レモンの酸味に続き、しっかりとポーポーの後味がしました。肝心なのは、二人とも、ファンキーでありながらも単純に美味しいポーポー・ミードだと思ったのです。

 時が経てば、私のポーポー・サイザーは液体の濁りがなくなり、澄んでくるでしょう。友達から、時と共に味はなじんでくるけれども、今味わうことのできているはっきりとしたポーポーの後味は薄れてくるよ、という助言を貰いました。これを念頭に、時間をかけて味をなじませ、澄んで、飲み仲間に見た目のもう少し受け入れられるものも何本かつくっておくことにします。この原稿を書いている早春のいまは、濁ったポーポー・ミードを楽しんでいます。裏庭のポーポーの木が目を覚まし、たくさんの実をつけるよ!と花のつぼみが膨らんでいます。

 

参考資料

ポーポーの木を販売している苗床店:

Sheffield’s Seed Company

Stark Bros.

Nash Nurseries

Willis Orchards

 

ケンタッキー州立大学のポーポー・プログラムでは、育て方の情報を提供しています。

 

アンドリュー・ムーア(Andrew Moore)は、ポーポー好きで、ペンシルベニア州在住の物書きであり、園芸家です。著書「Pawpaw: In Search of America’s Forgotten Fruit(ポーポー:アメリカで忘れ去られた果物を探し求めて)」

 

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Pawpaw Mead Making

By Andrew Moore

August/September 2017