ソーラーで電気柵に給電する

簡単設置で抜群に多用途な電気柵で、家畜を牧場に保つパワーが得られる。たとえオフグリッドでも。

 

 

この魅力的なスコットランド・ハイランドの牡牛は、電気柵のワイヤーをチェックしていますが、電気ショックから数秒離れたところにいるのに気付いていません。Photo by Adobe Stock/Trombax.

文:ジェフリー・R・ヤゴ (Jeffrey R. Yago)

翻訳:堀水 理佳代

 

電気柵は、基本的な手動工具で、過去に柵の設置をしたことがなくてもインストールすることができます。 また、ソーラー電気柵エナジャイザーを追加することで、公共電力網(グリッド)への接続の必要性を排除して、設置をさらに簡単にします。

 それだけでなく、ソーラーで充電した畜電池を使用した電気柵エナジャイザーを使うと、あなたの土地に配置する際いろいろな応用が利き、必要な場所にグリッド接続の考慮なしでユニットを設置できます。

 公共の電力がダウンした時に、気ままな動物について心配する必要はありません。すでにある木製または金属製の柵に簡単に追加したり、一緒に使用することもできます。ソーラー電気柵は、120ボルトの交流 (AC) で動作する電気柵エナジャイザーを設置する場合に比べて、特に遠隔地や、非常に大規模な電気柵システムにおいて柵の側に公共の電力網が通っていない場所で、魅力的な解決策を提供する可能性があります。

 

基本

 従来の公共電力と比べたソーラーパワーの長所を強調しすぎる前に、電気柵の基本を見直してみましょう。柵の種類、高さ、強度、材質、ワイヤーの間隔の選択は、あなたが、どんな動物を塀の中に入れるのか、またはどんな動物に塀の外にいて欲しいのかによります。

 適切に設置された電気柵は、通電されたワイヤーと接触した動物(または人!)に深刻な害を及ぼすことはありません。ほとんどの電気柵は、いくつかの軽い絶縁体の間に張られたわずか数本の裸線から構成されていますが、実は、柵はその強度ではなく、動物が柵への恐怖を学ぶことにより、動物を中に閉じ込めています。

 初めて電気柵と接触をすると、ほとんどの動物は直ちに後退します。 しかし、通電されたワイヤーの間隔が離れすぎていると、動物は、ワイヤーに触れずに、頭を柵の反対側に出せる可能性があります。 首に刺さるような痛みを感じると、驚いた動物は後退する代わりに、飛び出して、間違いなく新しい柵も引きずって行ってしまうでしょう! このため、塀の中に入れる動物に合わせて、正しくワイヤーの間隔と柵のデザインをする必要があります。

 いくつかの電気柵システムは、明るい色の平らなテープまたはロープに織り込まれたワイヤーを使用します。 このタイプの電気柵の材料は、近づくと何が起きるかを動物が認識しやすくし、したがって、動物が全くそばに寄らないようになるのです。 馬や牛などのより大きな動物にとって、幅の広い電気柵テープを使用すると、裸線よりも見やすくなるため、扱いやすくなります。

 新しい電気柵として、通電された網があります。この非金属性のネットに織り込まれているのは、互いに電気接続された小さな金属の撚線です。この柵用の資材は、小動物、例えば、ヤギ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウサギ、さらにはネコおよびイヌ用の柵に最適で、ワイヤー間隔の広い電気柵より上手く働きます。

 

ソーラー電気柵エナジャイザー 

 電気柵は通常、1秒間に1高電圧パルスまたはそれ未満のパルスを導電体に供給するために、エナジャイザーが必要です。市場において使用されている評価基準がほとんどないため、エナジャイザーの比較はとても複雑です。出力をボルトで表示しているものもあれば、ジュール(国際エネルギー測定単位)を使用しているものもあります。ブランドによっては、どれだけの土地の広さを囲う柵を通電できるのかを宣伝していますが、他のブランドでは柵の直線距離でパワー出力を宣伝しています。

 電気柵エナジャイザーを測定する最良の方法は、1パルス当たりどれくらい多くのジュールエネルギーを供給できるかです。1ジュールは1ワット秒の電力出力、より正確には1ワットの電力を1秒間生成するのに必要な仕事量に相当します。私が地元で見つけた最大の既製の電気柵エナジャイザーは、6ジュールの定格を持ち、100マイル (160km) までの電気柵ワイヤを通電できると宣伝されていました。このユニットが故障すると、100マイルの電気柵ワイヤーが全て使えなくなります。 しかし、複数の小さなエナジャイザーを使用すれば、どんな障害が個々に発生しても、その領域の柵1つのみが通電されていないことになります。

 これらの定格は、必ずしも柵の長さではなく、使用されるワイヤの全長に適用されることをお忘れなく。したがって、100マイルの電気柵ワイヤーに電力を供給できる6ジュールのエナジャイザーは、20マイル (32km) の長さの5ワイヤー柵に十分な電力を供給します(または25マイル (40km) の長さの4つのワイヤー柵など)。0.5から1ジュールの出力を持つソーラーエナジャイザーは、ほとんどの小規模な自作農家のニーズを容易に満たすことができ、全長数マイルの電気柵ワイヤーに、つまり、最大50エーカー (20ha) の牧草地を囲むのに十分な電力を供給します。

 ほとんどの内蔵型ソーラーエナジャイザーは、小さなソーラーパネルが調節可能な設置部品の上に取り付けられ、メンテナンスフリーのバッテリーを搭載した防水ケースで構成されています。 もっと容量の大きいソーラーエナジャイザーは、エナジャイザーと分離して設置される、より大きなソーラーパネルとバッテリーを必要とするでしょう。 分かれたバッテリーとソーラーパネルは融通が効き、ソーラーパネルを近くの木々の影から遠ざける必要がある場合や、立ち上げた支柱にパネルを取り付ける場合に特に便利です。

 外付けの12Vバッテリで駆動される電気柵エナジャイザーは、小さいバッテリーとソーラーパネルを内蔵したエナジャイザーの価格の半分です。この節約は、別の外部バッテリー、ソーラーチャージコントローラ、およびソーラーパネルを購入する追加コストを相殺してくれます。このアプローチでは、より幅広いソーラーパネルの選択が可能になるだけでなく、大型のバッテリーは、日照時間が少ない日々が長く続いた時、何週間も独立して作動してくれます。

 より高価なソーラーエナジャイザーは、デジタルディスプレイやメーター、出力レベル選択、システムトラブルアラーム、雷保護の強化、バッテリー充電を節約する夜間の低出力などのオプション機能を提供します。大型のソーラーエナジャイザーは木製の棒に取り付けるように設計されており、柵とグラウンドロッドの間にジャンパー線を接続する必要があります。 一時的な電気柵の用途向けの、小型で自給式のソーラーエナジャイザーは、地面に直接設置できるように設計されており、固定式の取り付けを必要としません。

 ソーラー電気柵エナジャイザーは、電力を連続的に通電するのではなく、パルス状に入れたり、切ったりしているため、バッテリの電力損失が少ないです。 このサイクルは、電源回路が12ボルトバッテリーの電圧を、5,000ボルト以上に上昇させる時間を可能にし、その後短いパルスで放電させます。ソーラパワーの電気柵エナジャイザーを使用する3つの欠点は、太陽光をたくさん受ける場所にソーラパネルを配置する必要性、コストがより高い、バッテリーを時々交換しなければいけないことです。しかし、高品質で密閉された吸着ガラスマット型(AGM)電池とゲルバッテリーは、交換が必要になるまで、4年以上エナジャイザーに電力を供給できます。

 すでに公共電力に接続されているエナジャイザーを使用していても、ソーラーパワーに変換するのは非常に簡単です。AC120ボルトのエナジャイザーを、専用のバッテリー とソーラーパネルを備えた自給式ソーラーエナジャイザーに交換する必要があります。 公共電力に接続されているエナジャイザーとは異なり、ソーラーエナジャイザーは、十分な日差しがあればどこにでも配置することができます。 

 

設置

 ソーラーエナジャイザーを配置または取り付けた後、ソーラーパネルが最大限に働く角度(通常、パネルが南または南西に向くように)設置します。 住んでいる地域の緯度に相当する角度に傾けると、ほとんどの自作農家で一年を通して最高のパフォーマンスを発揮します。 これは、米国の南半分では30〜40度の範囲に、北半分では40〜50度の範囲になります。

 バッテリーを充電するソーラーパネルからの出力は、たとえパネルのごく一部に小枝が落とす影であっても大幅に減少します。 ソーラーパネルは、早朝と遅い午後の時間帯には(太陽が地平線で低く、影が長い場合)日陰になるでしょうが、午前9時から午後4時、 太陽が最も高い時、影がパネルにかかるのを必ず避けるよう努力して下さい。独自のカスタムシステムを組み立てる場合は、電気柵エナジャイザーがあなたの使用する外付けバッテリーの電圧に合うよう設計されていることを確認してください。

 RV車や船舶の密封されたバッテリーは、小型の内部バッテリーのモデルよりも、長い曇った天候の期間、より多くの動作日数を提供します。 メンテナンスフリーのディープサイクルバッテリーは、連続充電および放電サイクル用に設計されています。 カーバッテリーは重量を減らすために非常に薄いプレートを持っており、この一定のサイクルのために設計されていません。

 私は、湿式バッテリーよりも、密閉されたAGMかゲルバッテリーを使用するのが好きです。 これらは完全に密封されているので、どんな位置にも設置でき、動物がバッテリーを転倒させても、中の液体の酸をこぼす危険はありません。 55アンペア時の容量を持つBCI Group No. 22NF密閉型バッテリーは、電気柵の通電に十分過ぎるほどで、曇った気候の多い地方において余分な電力を蓄えることができます。 これは、ほとんどのパッケージ化されたソーラーエナジャイザーに通常含まれる6〜10アンペア時の内部バッテリで可能な動作時間よりもかなり長い動作時間です。

 エナジャイザーのバッテリーを充電し続けるためにソーラーパネルを選択するときは、12ボルト充電の規格であることを確認してください。 通常、銘板に21ボルトのDC開回路電圧と17ボルトの充電電圧が記載されます。6〜10ワットの規格のソーラーパネルは、0.3〜0.5ジュールの規格のエネジャイザー用バッテリーを維持でき、12〜20ワットの規格のソーラーパネルは、1〜 2ジュールの規格のエネジャイザー用バッテリーを維持できます。どちらを選ぶかは、最終的に柵で囲む場所の大きさ、天候条件、緯度によります。

 

アース線

 動物が通電された柵ワイヤーと接触すると、電気回路が閉じます。 残念なことに、電気柵の設置で最も軽視されているは、システムを適切にアースにつなげることです。アース棒は、通常、エナジャイザーの隣の地面に押し込まれた銅メッキされた鋼の棒です。アースは、動物からエナジャイザーまでの電気経路の主要部分であり、正しく取り付けなければなりません。そうしないと、電気回路が閉じません。一年を通して地面に多少湿気がある地域では一本のアース棒だけで足りるでしょうが、非常に乾燥した気候では十分な接地を達成するために、複数のアース棒(通常は少なくとも300cmの間隔を空けて)が必要な場合があります。このアース棒は、住宅の電気線のアースと同様なもので、地中に180〜240cm押し込む必要があります。

 

テストとメンテナンス

 柵、グラウンドロッド、およびソーラー電気柵エナジャイザーを設置し、ソーラーパネルを適切に配置したら、テストする時間です。この作業は、高電圧電気柵テスターを使用して行うのが最適です。これは通常10ドル以下で買えます。貴重な動物を町に向かわないようにするための安い保険料です。柵のラインに沿って歩るきながら、各ワイヤの出力をチェックし、通電されていない、または電圧レベルが低いワイヤーの部分を調べてください。

 木の枝、高い雑草、またはどんな物でも通電した柵に接触すると、電圧を降下させ、ショックの力を著しく低下させるか、あるいは電圧を完全にアースに短絡してしまう可能性さえあります。柵周りを定期的に歩き、全ての雑草と背の高い草が、柵の両側から少なくとも150cm離れているようにして下さい。また、ソーラーパネルの周りを調べて、雑草や茂みがパネルの一角にでも影を落とすほどの高さになっていないことを確認して下さい。

 通電しているどんな機器でも同じですが、メーカーの設置と安全に関する指示に必ず従ってください。崖や高速道路、深い水面から動物を遠ざけるために電気柵に頼ることは絶対に避けてください。

 土地の境界線においては、電気柵と一緒に昔ながらの金属や木製の柵を使用すべきで、牧草地、菜園、一時的な放牧地などの内部エリアを分けるのに電気を使用しましょう。既存の木製または金属製の柵に、適切な絶縁体を使用することで、新しいソーラーパネル電気柵を取り付けることもできます。妥当なレベルのメンテナンスをしていれば、あなたのソーラー電気柵システムは問題無く長期間働いてくれるでしょう。

 

 

ジェフ・ヤゴ (Jeff Yago) は有資格のプロのエンジニアで認定エネルギー管理者。ソーラーと災害準備で40年を越える経験がある。彼が先日上梓した書籍は「Light On, address living on battery power during a grid-down event」。

 

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Power an Electric Fence with Solar

By Jeffrey R. Yago

August/September 2017