十分に調べて適切な建て方がえらべれば、ビニールハウスが作物をしっかり保護して、栽培期も長くなる。
文:パム・ドーリング (Pam Dawling)
翻訳:浅野 綾子
ビニールハウス(「ハイ・トンネル (high tunnel)」 とも呼ばれる)は、その中を歩いて通れる高さのある、ビニールでおおわれたアーチ状の骨組みのことで、野菜や花や果物の栽培期を拡大するために使用されます。ビニールハウスは、「無加温ハウス」、「ポリトンネル」、「冷床」とも呼ばれ、四季折々の作物の栽培に 1 年を通して使用できます。太陽が照らない時は屋外との温度差はあまりありませんが、ビニールハウスがあれば、大した苦労もなく良質な作物を驚きの速さで育てる役に立ちます。一般的に、ビニールハウスは補助的な暖房の使用が一切不要で、作物は地面から直に育ちます。ビニールハウスは 2 層になっていることが多く、具体的にはプラスチックフィルムが 2 層になっていて、小さな送風機を使って層の間を常時ふくらませます。2 層になっていることで断熱性が増し、耐風性も強化され、氷雪荷重への耐性も増します。また、ビニールがバタバタしたり、摩耗したりすることを防いで、ビニールの耐用年数も伸びます。冬の夜間、風が強くなければ、2 層ビニールハウスの温度は屋外と比べ概ね 4℃ 高くなります。ビニールハウスの中の土の温度は、ゾーン 7a なら 10℃ よりも下がることはほとんどありません。
以下に、ビニールハウスを 1 棟建てる時間と手間をかける前に考えておきたい要素と、1 棟あることで最終的に得られるメリットについて書きました。自分のビニールハウスを建てたいなら、以下のことを検討してみましょう。
設置場所
日当たりは、ビニールハウスを設置する際に、最初に検討すべき重要な要素です。真冬に自分の農場を歩き回って全体を歩測し、いくつかの候補場所に目印をつけておきましょう。太陽は、この時期は 1 年で最も低い角度になり、障害物の影は最も長くなります。ビニールハウスは太陽熱で栽培する区画ですから、ビニールハウスの場所では、冬に最大限の日照が得られる必要があります。日陰になる場所を選ばないよう注意しましょう。私の住まいがあり、仕事場でもあるツイン・オークス・インテンショナル・コミュニティ(Twin Oaks Intentional Community)では、3~4 つの候補地を検討し、以下に記載するすべての基準に照らして評価しました。私たちが選んだのは冬の日照が一番良い場所でしたが、土壇場の思いつきでビニールハウスを 30m 東の、排水の良い場所に移すことにしました。それはそれで良かったのですが、9 本のテーダ松の一群がつくる影を軽視していました。テーダ松が生えていたのは南東 30m 先。冬にはビニールハウスの 3 分の 1 が午後 2 時半を過ぎると日陰になりました。冬を 2 回ほど経験して、テーダ松は伐採しました。
ビニールハウスは通常、両端が東西に向くように建てられ、両側の長い面は南北に向いており、日照が最大限得られるようになっています。南部ではビニールハウスの両端を南北、長い両側を東西に向けるようにと、逆のことをするよう勧める本があります(以下のイラストを参照)。でも、ビニールハウスでは冬の作物が最重要であり、日照が貴重な時期のために設置するものですから、良い考えだとは思いません。背の高い、つる性の作物の栽培が考えられる場合には、南北に走る畝を立てることで、日照を最大限均等にできるでしょう。
よく肥えた良好な土壌が目標です。もちろん、栽培するうちに土壌を改善することは可能です。ただ、大きな石や、砂利、泥がたまった窪地に設置することは避けましょう。ここまで言えばわかりますよね。
ビニールハウスを設置する場所は、東から西または西から東の縦長に、1% の傾斜があるのが理想的です。暖かい季節に、例えばハイグルーブ社 『Haygrove』 のトンネルのような、プラスチックフィルムが 1 層の一時的なビニールハウスを建てるなら、急斜面でも建てられます。でも恒常的なビニールハウスは無理です。設置場所の傾斜は、30m 進んで 30 から 60cm 上がるまでにならすことはできますが、それ以上はできません。
設置場所は端から端までが相当程度、水平である必要があります。理想的な状態にするのに、土を大量に動かさなければならないのであれば、表土はそのままの状態で残しておくように注意しましょう。農務省の自然資源保全局のウェブサイトに掲載されている 『Growing All Seasons: High Tunnels(仮称:1 年を通した栽培:ハイ・トンネル)』を検索してみましょう。この連邦機関では、ハイ・トンネル・システム構想(High Tunnel System Initiative)を通して、いくつかの種類のビニールハウスに補助金を出してもいます。
ビニールハウスの設置場所は排水が良い必要があり、屋根からの雨水の排水に配慮する必要もあります。私たちのビニールハウスでは、周辺に蹄鉄の形のような V 字の溝を掘っています。ビニールハウスの屋根を特別に長いプラスチックフィルムで覆って、ハウスからの雨水を逃がすのに使っている農家もいます。側面が巻き上げ・巻き下げのビニール ハウスを使用している農家の中には、この構造で必要になる側面の木材にプラスチックの雨どいを設置して、雨水を灌漑用に集めるという選択をする人たちもいます。天水桶は低い位置にあるので、雨水を利用するにはポンプを使用したり、汲み出したり、運搬したりすることが必要になります。
また、風が直撃しない場所(日陰にならない距離で)を探しましょう。寒気が上手く抜ける場所を選びます。斜面の一番低くなるところは選ばないようにしましょう。。。
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