ソーラー駆動のポンプ

太陽の力を使って水をポンプで汲み上げよう。

 

 

このソーラー電源式ポンプシステムは80エーカーの農場に水を供給します。PHOTO COURTESY PRASHANTH VISHWANATHAN/IWMI

文:ジェフリー・R・ヤゴ(Jeffrey R. Yago)

翻訳:古屋 奈央子

 

農家や牧畜業者が、小川、池、そのほか地表にある水源から動物に水を飲ませ るのは珍しいことではありませんが、家畜に飲み水を供給する方法は他の方法に切り替わりつつあります。ソーラー電源式のウォーターポンプは導入が簡単で、水を井戸から地上の貯蔵タンクに、または水源から高所まで汲み上げる、信用に値する手段です。いくつかの政府機関は農家や牧畜業者に、近くの小川や河川から放牧地を囲いで分けて、ソーラー発電式ポンプシステムのような他の水供給手段を導入するならば、現金で補助金を提供するとしています。

 

ソーラーポンプシステムの構成

 ソーラーポンピングの最も基本的な形は、小型の直流 (DC) ソーラーポンプ、ポンプコントローラー、一つまたは複数のソーラーモジュール、交換用井戸キャップ、電気配線、ポリ塩化ビニル  (PVC) 配管で構成されています。

ドライバーとパイプレンチを使える人は誰でも、ソーラーポンプキットを組み立てることができます。これらのシステムはとても初歩的です。電源インバータやバッテリーもいらないし、12ボルトまたは24ボルトのDC電源で作業するのは、240ボルトの交流(AC)ポンプを電力網につなぐよりも安全です。

 ソーラーポンプ。深さ100フィート未満の井戸から、毎分数ガロンの水しか必要としないシステムは、通常、小型の12または24ボルトDCの水中ポンプだけしかいりません。より深い井戸から、より多くの流量を必要とする場合には、もっと大きなソーラー電池アレイを使う48~90ボルトDCの範囲の水中ポンプが必要になることがあります。ソーラ電源式ポンプシステムは地表の水を川や湖 から、より高所に位置する貯蔵タンクまで汲み上げるのにも利用できます。

 ポンプコントローラー。ソーラーポンプコントローラには、ポンプとソーラーモジュールを接続するための別個の端子台に加えて、オプションのフロートスイッチ用の配線端子台があり、タンクが満杯になったときや井戸の水位が低すぎるときにポンプを停止させることができます。理論的にはソーラー電池アレイに直接DCソーラーポンプを配線することができますが、ソーラーポンプコントローラはシステム性能を向上させ、ポンプモーターの過負荷保護を提供する多くの特殊機能を備えています。

 例えば、早朝および午後遅い時間に、ソーラー電池アレイは、ポンプモーターを始動させるのに十分な電流(アンペア)を供給しない可能性があります。しかしながらいくつかのポンプコントローラーは余分なアレイ電圧をより高い電流に変換して、モーター巻線が加熱される間の失速状態に留まるかわりに、この状態のおぼつかないポンプを始動させることができます。

 この電圧が低下している間はポンプをフルスピードで作動させることはできませんが、ポンプで全く汲み上げられない場合に水の流量を増すことができます。ソーラーポンプコントローラは、ポンプを手動でオン/オフさせるのに 便利で、システムステータスを示すLEDライトもついています。ソーラー電源式ポンプシステムにはポンプコントローラーをつけることを強くお勧めします。

 ソーラーモジュール。ソーラーモジュールは、電線の電圧降下を軽減するために、できるだけ汲み上げ位置に近いところに設置すべきです。北半球ならば、太陽電池は南向きにすべきです。南西方向は、朝が曇りで午後から晴れるのが一般的な場所に適しています。ほとんどの農場や牧場の用途では、吹きだまった雪や、動物や芝刈り機からダメージを受ける可能性を軽減するために、少なくとも8フィート以上の高さのスチールパイプにモジュールとポンプコントローラを取り付ける必要があります。

 柱の上なら、設置するときに太陽電池の傾きや東西方向を調整することもできます。その場所の緯度と等しい傾きは、往々にして一年中最高のパフォーマンスをするでしょう。これはアメリカの南半分では30〜40度の範囲に、北半分の場合は40〜50度の範囲になります。

 井戸キャップ。掘られた井戸は、地面にある場合には、上部に保護キャップがあるでしょう。

水中井戸ポンプにはすべて、ステンレスのアイボルトか、アイボルトを取り付けるためのねじ穴がついています。

これによって、ナイロンロープを使ってポンプを固定し、電源ケーブルに負担をかけずに、ポンプがパイプから緩んで井戸の底に落っこちる危険を減らせます。

 ほとんどのソーラーポンプキットには、ウォーターパイプを通すための代替井戸キャップと、電源ケーブル用の密閉パッキン、安全ロープを縛るためのアイボルトが含まれています。

 フロートスイッチ。井戸から汲み上げるにせよ地表の水源から汲み上げるにせよ、どちらのシステムも、貯水タンクや家畜用水槽の水位に応じてポンプのオンオフを切り替えるフロートスイッチを使います。

貯水タンクや大きめの家畜用水槽を使うことで、曇天のためにポンプを使える日数が限られていても、家畜に水を供給する、さらなるバックアップ用の貯水容量が確保できます。

 凍結防止ブリーダーバルブ。冬が極寒になる地域なら、凍結線より下、井戸の静止水面より上に凍結防止ブリーダーバルブを設置できます。地上配管がこの排出ポイントから井戸まで傾斜している限り、凍結防止ブリーダーバルブで、ポンプの電源が切れた時に配管内の残った水が井戸内に排出されるようになります。

 

家畜用の水はどのくらい?

 始める前に、導入するシステムはどのくらいのサイズなのか知りたく思うでしょう。動物によって、発達段階によって必要とする水の量が異なるので、計算は期待するほど簡単なことではありません。さらに、季節、周囲の温度、食べる飼料の種類、授乳中であるかどうかなどによって、水の摂取量は毎日異なります。

 異なる種類の家畜用システムのサイズを決めるのに役立つように、先ほど挙げた変数によって幅があるものの、最も一般的な家畜が温暖な気候下で消費する水量のおおよその範囲は、写真のスライドショー内の「毎日の飲料水の必要量」の表に記載しています。

 

 ほとんどのソーラー発電システムは水を直接水槽に送りますが、多くの家畜に対応するシステムは、まず数千ガロン水が入る地上の貯水タンクに水を汲みいれる場合があります。この貯水タンクは水槽より高い場所に設置する必要があり、それを重力で供給できるように配管すべきです。必要に応じて大きい方の貯水タンクから水を開放し、不必要な時には閉じる、メカニカルフロートバルブが利用できます。

 1日24時間定格流量を流す標準の送電網を電源とするポンプとは異なり、ソーラー電源式ポンプの流量は、夕方から早朝までの流量0から、正午付近の最大流量まで変化します。雲が多すぎる悪天候の場合には、ポンプが作動しない可能性もあります。

 しかしながら、アメリカの大部分の地域では夏場の日々の平均性能を概算すると、ソーラーポンプは太陽電池が正面南向きの場合は、一般的に午前9時から午後3時まで動作します。南西向きの場合は10時から4時まで。

夏場の平均は1日6時間です。この日々の時間枠の中で、フル稼働が約2時間、75パーセントの稼働が2時間、正午から離れるにつれ50パーセント以下の稼働率となるでしょう。冬の間は1日約4時間の稼働にまで落ち込みます。

 ソーラーポンプシステムは十分な日光がある時しか稼働できないため、ソーラーポンプは、フロートスイッチがタンク一杯を示して止まる時以外、日が昇ってから沈むまでずっと稼働すべきです。高い位置に設置した貯水タンクを追加することで、ソーラーポンプが動かない時はいつでも、水槽ですぐには必要にならない水を利用することができます。

 

ソーラーポンプのサイズ決め

 ポンプは「全動圧」と呼ばれる所定の「水柱フィート」量における流量に基づいてサイズ分けされています。

全動圧とは、水源の高さからタンクや高所の排出ポイントの水位まで、2点間のパイプや継ぎ手の摩擦力による水頭圧の損失を加味し、フィート単位で示される水を垂直に持ち上げる力のことです。大口径のパイプは摩擦による圧力減少が少ないですが、ソーラーポンプは送電網と接続している交流電源のポンプよりもかなり低い圧力と流量で稼働するため、ポンプからタンクまでのパイプは太すぎない方が望ましいです。流量が低すぎる場合は、井戸の底近くにある小さなポンプから砂や砂利を持ち上げるのには速度が足りないかもしれません。一般的に、2.6フィート (0.79m)/秒以上のパイプ流速があればこの問題を緩和できます。スライドの「流速(フィート/秒)」の表を見て、パイプサイズの流速が最小値を超えていることを確認してください。

 設計の例として、適切に電源が供給された場合に、全体の水頭圧が100フィート (30.5m) の時、4ガロン (15.1L)/分(GPM)で水を汲み上げると宣伝されたソーラーポンプを使ったとしましょう。スライドの「100フィート当たりの水頭圧減少」の表を参照すると、12インチ (38.5cm) のPVCパイプを通る4 GPMの流量は、100フィートの配管ごとに17.1フィートの水圧損失があることがわかります。これはかなり高いです。この表の値は配管100フィートあたりの水圧損失であることに注意してください。水源からタンクまで250フィートが必要ならば、この表の値に2.5を掛けます(250 ÷ 100 = 2.5)。同様に、65フィート (19.8m) のパイプしかいらない場合は0.65(65÷100 = 0.65)を掛けます。

 全動圧を知ることは、あなたが必要とする流量を満たす、適切なポンプを選ぶのに役立ちます。たとえば、12インチ・80フィート (24.4m) のPVCパイプを通して、静水位が40フィート (12.2m) 下の井戸から、地表から10フィート (3.1m) 高い近くのタンクまで4GPMで水を汲み上げる場合、この全動圧は63.7です。計算がどのように分解されるかは次の通りです。

 

40フィート+ 10フィート = その高さに到達するための水圧50フィート 

 

12インチPVCパイプ100フィートあたり17.1フィートの水圧損失 

×(PVCパイプ80フィート ÷ PVCパイプ100フィート)

= パイプの摩擦による水圧損失13.7フィート

 

水圧50フィート + 水圧損失13.7フィート

=総全動圧63.7フィート

 

 この例のポンプは100フィートの全動圧で4GPMを供給するように指定されているので、提案されるシステムはポンプの性能の範囲内でなければなりません。しかし、タンクが小高い丘の上にあれば、他のすべてが同じ条件だったと仮定すると、ポンプの流量は低下します。

 

 

ジェフリー・R・ヤゴ(Jeffrey R. Yago)は有資格のプロのエンジニアで認定エネルギー管理者。ソーラーと災害準備で40年を越える経験がある。彼が上梓したばかりの書籍「Light On」は、送電網が停止する事故の間、バッテリー電源で生活することを述べている。

 

Solar-Powered Water Pumps for Livestock

By Jeffrey R. Yago | October/November 2017