生態系の多様性

気候変動の影響を緩和するのは、自然環境における種の多様性に今よりも目をむけることかもしれない

 

翻訳:浅野 綾子

 

大気中の炭素レベルが少しずつ高くなり、生きものの生息地が失われることで種の総数や多様性が前代未聞のスピードで減少しています。そのような中で、気候変動の影響を緩和する方法をみつけることは、かつてないほどに喫緊の課題となっています。そこでスタンフォード大学の新たな研究が示唆するのは、野生生物が私たちにしてくれていることがあるということ。ただ存在するだけで、と言うのです。

 樹木は、温室効果ガスを「吸いこみ」、幹や根にためることで、空気中からとりのぞいていることがすでに認められています。スタンフォード大学の研究者によって2017年に「Nature」誌に掲載された分析結果(「Mammal diversity influences the carbon cycle through trophic interactions in the Amazon(仮題:アマゾンでは、ほ乳類の多様性が栄養相互作用を通じて炭素循環に影響をおよぼしている)」)は、脊椎動物が効率のよい二酸化炭素吸収源であることを明らかにしています。この研究に寄与したのは、3年にわたる環境調査とアマゾンにおける動物の活動記録100万件以上。この調査と記録によって、土中の炭素レベルは、動物の個体群がもっとも多様な場所において有意に上昇することがわかりました。

 呼吸や食べものの消化や分解によって、動物が二酸化炭素を隔離するのは長く知られていましたが、この新たな発見は驚くべきものでした。この発見は、動物が炭素循環におよぼす類をみない影響について浮きぼりにし、種の多様性が個体群の大きさよりも重要になる可能性を示唆しています。

 前代未聞なのは分析調査のスケールも同じです。動物、植物、土の炭素レベル間の関係を調査するには、膨大な量のデータが必要なのです。スタンフォード大学のチームは、現地のさまざまな地形に残された動物のかすかな形跡をよく見わけるために、先住民のマクシ族、ワピシャナ族、ワイワイ族の人たちの知識やガイドを頼みにしました。

 データを収集する間、70人以上の技術者からなるチームが、樹木の大きさや種類の数を毎月しらべ、ほ乳類や鳥類、爬虫類、両生類の種類の数と多様性について推定。

 こうしたデータは、その後、6ヶ月にわたり収集された土のサンプルにふくまれる炭素レベルと相互参照されました。データと炭素レベルに何か相関関係がないかをたどっていくためです。研究者は、炭素濃度がもっとも高い地域では、他の地域よりも多様な動物の種が生息できていることを発見。そこで研究者は次のような仮説をたてました。種の多様性がふえれば生態系における摂食の相互作用が増し、結果として、多くの有機物が分解され、土中の全炭素含量がふえるという説です。

 

 この研究は熱帯環境のみを対象にしましたが、こうした発見結果は地球上のどの地域にもおそらく共通するでしょう。生態系における動物の多様性は、植物の多様性から水分保持量まで、すべてに影響するのです。ですから、炭素隔離についてもおそらく良い意味で相関関係があるでしょう。生態学的な地域をひとまとまりとしてそこに生存する種の多様性をささえることが、炭素保持率を向上させる最適な方法の1つになる可能性についても、この研究は示唆しているのです。

 

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Species Diversity Boosts Carbon Sequestration in Ecosystems

By Lydia Noyes

June/July 2018