インドの農民がストライキ

マザーアースニューズ  自然

 2020 年 9 月、インドの国会は 3 つの農業関連法を可決しました。「農場法案(farm bill)」ともいわれたこの法律の可決は、インド全土で大規模で長引くデモを引き起こしました。以降、数万人のデモ参加者がデリーの州境にある道路沿いに集まり、この法律の即時廃止を求め、それと同時に農業組合が提示したその他の要求を強く主張しています。

 

翻訳:浅野 綾子

 

 インドの労働組合が主張するところによれば、同年 11 月後半にはインド国内で 25 千万人の人々が 24 時間のゼネラル・ストライキに参加して農民の要求を支持し、この 6 か月以上にわたりインドの国内外で農民に連帯する大集会が繰り広げられているといいます。このような広範囲で一貫した参加は、現在進行中のデモとしては世界最大であり、人類史上最大であろうと多くの関係者が言っています。

 インド政府報道情報局 (PIB)によれば、これら 3 つの法律が合わさることにより、州内・州間の取引およびオンライン取引や、農民とバイヤーが排他的契約を締結することが可能となり、特定農産物の生産・供給・流通を規制する政府の権能が限定されることになるといいます。実際に政府の権能が限定されることになれば、特定農産物の市場と価格は以後、規制されることがなくなります。このデモに対してインド政府当局者は、この法律によって農民の市場アクセスは拡大し、柔軟な取引が可能になると主張しています。一方農民は、この法律はさらなる民営化を可能とし、企業による農産物の買い叩きや農産物の隠匿から農民が守られることが減り、されるがまま以外に選択肢がなくなるといいます。

 食の主権の活動家のヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva)は、デカンヘラルドの記事に以下のように書いています。これらの法律が「解体し得るのは、インドで何世紀にもわたって受け継がれてきた、小規模農家を中心とする伝統、生物多様性にもとづく、小規模農家の自立(Atma Nirbhar)という伝統です。70 年にわたって小規模農家を守ってきた統制システムも解体し、小規模農家や、小規模農家の生活手段、(農業マーケットの)数百万もの労働者と小規模業者の生活手段、食べ物への権利、インドの食の主権を壊し得るのです」。 

 農民はインドの人口の大部分を占め、インド経済の基礎を成しています。国際連合食糧農業機関(FAO)によれば、インドの農村地帯の人口 70 パーセントは農業で生計を立てており、こうした農民の大部分は小規模農場を営んでいるといいます。その上、ニューヨークタイムズの報道では、新型コロナウイルスのパンデミックにより、インドにおける農業労働者の負担は増しているといいます。これ以外にも、インドの農家はすでに数十年にわたって飢饉や気候の混乱、負債の問題を抱えています。

 本記事執筆の時点で、農業組合は国会と 11 回にわたり協議を行っていますが、以前膠着状態が続いています。

 農民のデモは大部分が非暴力的ですが、抗議運動がエスカレートすることも時に起こっています。AP 通信によれば、インドの祝日である共和国記念日のパレードには、許可ルートからはずれた数千台ものトラクターがつくる頑強な一団も交ざり、ニューデリー市の中央まで走行したと伝えられています。市の中央では、一部のデモ参加者が警察と対峙して、最終的にはバリケードを破ってデリー城まで侵入したとのことです。その後、農民の抗議運動を制限するため追加のバリケードが建築されましたが、農民は今後も非暴力による抗議運動を続け、譲歩することは拒否すると話しています。

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