「オーガニック」を紐解く

マザーアースニューズ 自然 自給 DIY

農業界で最も注目されている言葉の意味とその背景、それが現代の菜園家にどのような影響を与えているのか、詳しく紹介。

文:クレイグ・ルウリエ(Craig LeHoullier)

翻訳:沓名 輝政

 

 新型コロナウィルスをきっかけにガーデニングへの関心が大きく高まり、種苗会社では種子の需要が急増しました。多くの人が「オーガニック」という言葉と新たに向き合い、それぞれの世界観や哲学に合ったガーデニングの手法を模索しています。ガーデニングへの関心が高まっている今、さまざまな意図を持って語られ、その意味が曖昧になっている「オーガニック(有機的な)」という言葉を探ってみるのも良いかと思われます。

 

有機的な明快さを求めて

 「オーガニック」という言葉に注目すると、興味深い定義が浮かび上がってきます。オーガニックとは「生物に関連する、または生物に由来する」という意味です。また「化学肥料や農薬などの人工的な物質を使用しないで生産する農業や園芸の形態」という意味もあります。あるいは「何かの要素が、全体の必要な部分として調和的に組み合わされるような、要素間の関係を示す」こともあります。農業分野では、米国農務省の全米有機プログラムが定める認証要件を満たしていることを示す、米国農務省のオーガニックラベルが最もよく知られていることでしょう(認証の内容については、下記の「『オーガニック』の定義」を参照)。

 しかし、オーガニックという概念は農業と同じくらい古いものであり、ラベルや一般的な定義よりも深い意味を持っていても不思議ではありません。その意味とは、いったい何なのか。おそらく誰に尋ねるかによるでしょう。

 この言葉をさらに理解しようとした私は、ガーデニングに深く関わる経歴のある3人の友人と、魅力的で啓発的な会話を重ねました。それぞれが、自分や農業界全体にとって「オーガニック」が何を意味するのか、特別で多様な洞察を語ってくれました(正直に言うと、私はまだ自分が厳密なオーガニック菜園家だとは思っていません。しかし、私はその方向に向かっており、友人である Victory Seeds 社のマイク・ダントン(Mike Dunton)が作った「オーガニック志向(organic intent)」という言葉に共感しています)。

 

より良いものを残すために

 最初に会話したのは、園芸家で、元 Johnny's Selected Seeds の植物育種家であり、現在は Seed Savers Exchange のエグゼクティブ・ディレクターであるエミリー・ローズ・ハガ(Emily Rose Haga)です。

エミリーは、農業、種子の保存、ガーデニングなど、さまざまな分野の人々との会話の中で、最も基本的なレベルで、オーガニックであることの意味を語る際に、1つのテーマが繰り返し耳に入ると言います  ―  より良くすること。例えとしては、修復的な農業、土壌の再生、生態系のさまざまな相互作用の理解などです。

 オーガニック認証の専門家ではありませんが、エミリーはオーガニック認証を大いに支持しています。彼女は、純粋に考えると「オーガニック」と表示されていれば、品質の保証を示していて、投入されたものや農法が標準的なガイドラインを満たしているものだと言います。その一方で、企業がその理念に飛びつき、理念を完全に理解せずに経済的な利益を得ることもあると彼女は認めています。

 また、エミリーは、オーガニック(有機)農法を支持していても、まだ厳密に有機農法を実践していない人たちを疎外してしまう危険性についても語っています(個人的に私に響く要点です)。ガーデニングや農業をする人たちには、それぞれ異なる経済的・思想的基盤があり、さまざまなレベルの知識や経験があります。新しい生産者は各々、時間と経験をかけて進化する旅に出ているのです。

 

現代の世界での伝統的な方法

 次は、メイン州にある Fedco Seeds 社の植物研究者 であり、エリアコーディネーターでもあるヘロン・ブリーン(Heron Breen)に話を聞きました。ヘロンにとって「オーガニック」とは、大きく分けて3つの考え方があるとのこと。

 まず、健康な土壌とは何かについて、現代のオーガニックムーブメントの創始者とも言われる英国の植物学者、アルバート・ハワード卿の研究を挙げました。ハワードは、インドの農家との仕事をきっかけに、堆肥や被覆栽培、肥料の使用など、健全で生産性の高い土壌を作るための現代の有機農法をいち早く研究した人物です。「今日のオーガニックは、この点を見失っている」とヘロンは言います。「多くの人は、健康的な食べ物と健康的な土壌のつながりを理解していません」

 また、ヘロンは、現在行われている大規模農業が最近の現象であることを思い起こさせてくれました。「オーガニック」のルーツは、現在のように利益を追求することなく、人々が自給自足や地域社会を維持できる持続可能な小規模農業にあります。

 続いてヘロンは、作物生産を成功させるための畜産と農業の違い、そして2つの要素を統合することで栄養分の真のリサイクルが可能になることを語りました。このような自然な方法で健康な土壌を作ることは、化学肥料の増加や糞尿の健康への影響を考慮して、農業界では敬遠されてきました。

 ヘロンはまた、有機製品や有機農法につきまとう排他的なイメージを払拭し、有機認証に柔軟性を持たせる必要性についても言及しました。「多様な栽培方法が必要であることを認識する必要があります。都心部は田舎の農場のようにはいきません。彼らは利用可能な方法を使って認証を受ける方法を見つけなければなりません」とヘロンは言います。「誰でも、どんな一般人でも、参加することができます」

 

「オーガニック(有機)」の定義

 有機食品。米国農務省認定のオーガニック食品は、土壌の質、家畜の飼育方法、害虫や雑草の駆除、添加物の使用などに関する連邦政府のガイドラインに沿って栽培・加工されている。認証を受けた生産者は、自然物質と物理的、機械的、または生物学的な農法を用いている。

 生産物は、少なくとも3年間、禁止物質が適用されていない土壌で栽培されなければならない。また、特定の目的のために合成物質を使用する場合は、人の健康や環境への影響を考慮した基準に基づいて承認されなければならない。

 有機認証。認証されたオーガニック製品を販売するために、生産者や加工施設が受けなければならない5段階のプロセス。オーガニック(有機)システム計画の作成、計画の実施と米国農務省が認定した認証機関による審査、認証機関による検査、認証機関による検査報告書の審査、認証機関による承認の5段階で構成される。

 有機農業。資源の循環を促進し、生態系のバランスを保ち、生物多様性を保全するために、文化的、生物学的、機械的な手法を統合することで、その土地固有の条件に対応するように管理された生産システムを適用すること。輪作、生物学的制御、動物性肥料の使用などが重要な要素となる。

 

 有機種子。有機認証の種子は、認定された生産者によって生産されたもので、種子が成長、収穫、加工の過程で化学物質にさらされていないことを意味する。 

 

なぜ種子を保存するのか?

 種子を保存することは、お金を節約したり、驚くほどおいしい農産物を生産するだけではありません。種子保存は、遺伝子の多様性を維持し、コミュニティを形成します。新しいオンラインシリーズ「Seed Stories」にご参加ください。全米の家庭で何世代にもわたって大切に保存されてきた伝統的な種子の、ユニークで文化的に豊かな旅を追っています。詳しくは online.MotherEarthNewsFair.com をご覧ください。

 

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