テキサス州アーリントンにおける環境正義:グリーン新聞

マザーアースニューズ エネルギー 食

最近全米で巻き起こった人種間の平等をもとめる暴動。その後、各地の活動・社会基盤に組みこまれた人種差別に取り組むよう、議会のリーダーたちには圧力がかかっている。たとえばテキサス州アーリントンでは、「水圧破砕法」[フラッキング:地下にある天然ガスや石油を含む頁岩(シェール)層に酸などの化学物質が混入した水を注入して、シェールガスやシェールオイルを採取する手法]の坑井がつくられた場合、周辺コミュニティにあたえる影響を検証することが求められた。最終的にこの坑井の掘削は否認されている。

 アメリカ合衆国環境保護庁によれば、化石燃料事業の設備は、アメリカ全土において有色人種(特に黒人)や貧困層の住むコ ミュニティの近くに建てられることが多いといいます。コミュニティ付近に設備があることで、付近のコミュニティが環境汚染に より受ける影響は度を越して大きくなります。それとともに、たとえば喘息やコロナウィルスなどの呼吸系疾患も増えます。この環 境的人種差別はアーリントンにも起こっています。アーリントンでは、フランスのエネルギー企業トタル (Total) が、主として黒 人とラテンアメリカ系の住民が占める地域の近くで、水圧破砕法の坑井を掘削する計画を立てていました。この地域では貧困や小 児喘息の割合が高く、また現在ではコロナウィルスへの感染率も高くなっています。  他地域とくらべてコロナウィルスの流行が著しく拡大していることが考慮され、有権者が警察官による暴力や人種間の不平等に 抗議するデモを行った後に、アーリントン市議会では 6 月、「コロナウィルスのパンデミックが起こった現在、すべての人種・民 族・国籍の住民を公平にあつかう義務を再確認し、コロナウィルスが高齢者や、アフリカ系アメリカ人とヒスパニックのコミュニ ティに属する住民に破滅的な影響をもたらしていることを認める」決議をしました。  その後、有権者はその公約が本当かどうかを試しました。2015 年からアーリントンで「水圧破砕法」の採掘場の拡大と掘削を阻 止する活動をしている非営利団体のリバブル・アーリントン (Liveable Arlington) は、トタルの新しい「水圧破砕法」採掘場につ いて、2020 年の早い時期からコミュニティへの教育活動にとりくんでいました。新たな採掘場は住宅やプレスクール付近にできる 予定でした。この非営利団体は地域のまとめ役の人たちとつながり、プレスクールで会議を行い、住宅を 1 軒 1 軒回り、付近のカ トリック教会の礼拝者に話しかけ、英語とスペイン語の資料も配布しました。こうした努力をする中で、団体のメンバーは「水圧 破砕法」採掘場が付近のコミュニティにどのような影響を与えるのか、また、その地域に住む人たちはどのような思いで掘削に反対しているのかを感じとることができました。

 リバブル・アーリントンの創設者であり会長であるランジャナ・バンダリ (Ranjana Bhandari:www.Facebook.com/LiveableArling- ton) は、掘削される坑井が学校や住宅、デイサービスから 600 フィート (183 メートル)よりも離れていれば、この地域の坑井が そうであったように、一般的には市議会の許可は不要だと言います。さらにはテキサス州の法律では、石油ガス産業を市が規制す ることを禁じています。ただこのケースでは、人種間の平等にとりくむというアーリントン市の最近の決議が、懸念する地域住民 の影響力を高めて、市議会は坑井を否認する決議をしました。

  バンダリは、この決議は多方面に影響を及ぼすものであり良かったと言います。たとえば、子どもの健康、環境正義と人種の平 等、(住宅や学校に非常に近い場所で掘削が許可された場合の)コミュニティに及ぶ悪影響というような重要な事柄です。バンダ リはこの決議が良い変化の表れであるようにと願いましたが、その後、市の職員は公聴会を開かずに、7 つの新たなガス坑井を別 のプレスクール付近に掘削する許可を出しています。 「私たちは活動を続けるつもりです。というのも現時点の状況は、残念ながらアーリントンの新たな方向性を表しているように は見えないからです」とバンダリは言います。「この場所では子どもたちの間で喘息が大変広がっており、呼吸系疾患や心臓病の 割合も高いです。これは公衆衛生の危機であり、財政上の危機でもあります。というのもこうした事態は、個人と公衆衛生システ ムの両方に高くつくからです。そしてもちろん、水圧破砕法は気候危機にも大きく加担しています。けれども私は、今回の決議が同 じような状況にある他の人たちにとって良い前例になればと思います。今回の決議は水圧破砕法の害や、誰がその害を被っている のかを考慮しています。この決議は、市がみずから事を判断するリーダーになることを決断し、住民の利益を代弁して良い決議をし ようと決めた、ひとつの例なのです」

 全米で広がっている環境正義の運動については、www.ClimateJusticeAlliance.org などのウェブサイトで詳細がわかる。同ウェブサ イトには情報源や会員団体も掲載されている。自分の住まいの付近で参加できる環境正義の活動を見つけるには、会員リストをみてみよう。

 

 

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