小型トラクターを購入する時に考慮すべきこと

どんなことを計算に入れて適切な小型トラクターを選ぶのか。

文:オスカー・H.・ウィル (Oscar H. Will III)

翻訳:長谷川 伸

 

 あなたは、全てのものを人力で持ち上げるわけにはいかないので、思い切って投資をすることを決めました。ずいぶんと延期してきた土木プロジェクトを実行するための、掘る以上のことができる機械が必要です。 2 年後には、少し干草を作りたいと思いますが、私道も地ならしをしなければなりません。あなたは小型トラクターがその要件を満たすと推定しましたが、非常に多くの選択肢があります。シャトル操作式トランスミッションは本当に必要でしょうか。

 最初のトラクターを選ぶプロセスは困難ですが、アタッチメント(作業機)の理解と機械のノウハウを少し備えれば、販売代理店が使う専門用語を話し、必要なものを手に入れることができます。 

 小型トラクターは、1960 年代に日本のメーカーがその市場が存ることをはっきりさせたので、北アメリカで急増しました。今日では小型トラクター市場には、入門レベルに相応しい経済的なモデルから、工夫を凝らしたモデルまでたくさんあります。車台(シャーシ)のサイズと重量のバリエーション、広範囲にわたるエンジン出力、ほとんど連続的に変化するトランスミッションの種類を加えると、それらを選ばなければならない者としては混乱してしまいます。「何が必要なのか」を明らかにするのは「何が欲しいのか」を明らかにするよりも少しだけ難しいですが、そのプロセスは必ずしも最初に思ったほど困難ではないはずです。

 

基礎から始めよう 

 検討する価値のあるトラクターはすべて、クリーンで燃費のいいディーゼルエンジン、トランスミッション、後部 3 点リンク、牽引管(ドローバーヒッチ)、1 つか 2 つの PTO(パワーテイクオフ/動力取出し装置)、油圧システムを備えています。ほとんどのトラクターは 4 輪駆動で(もしオプションで 4 輪駆動にできるのなら、そうすることをほとんどいつもすすめます)、ローダー(装備する価値が常にあります)、ときとしてバックホーやその他の後部アタッチメントを装備しています。トラクターを押したり引いたりする機械として考えるべきですが、また同時に考えるべきはプラットフォームの役割です。アタッチメントその他のツールを取り付けて動力を与えますが、そのツールとは多岐にわたり、非常時の住宅用の発電機、除雪機、草刈機(モア)などです。アタッチメントをつけない基本構成のトラクターは出力・サイズと、エンジン、トランスミッション、油圧システムで定まるレベルに応じて値段が変わりますが、どれでも 1 万ドルから 3 万ドルを優に超える値段になります。

 

力を人々に 

 完璧なトラクターを求める中で最初に答えるべき問いは力に関すること、PTO 出力と牽引力についてです。不幸なことに、ほとんどのメーカーはエンジン出力を強調しますが、エンジン出力値は PTO 出力値より大きいのです。しかし、PTO 出力を使う装置、例えばシュレッダー式(ロータリー)モアやロータリー式の耕耘装置を使いたい場合、PTO 出力値を知っておくことが重要になります。PTO 出力値で、トラクターとともに効率的に使うことができるモアや耕耘装置のサイズが決まり、とにかく使えるかどうかがわかる訳ではありません。1.8 m(6フィート)幅のモアで草刈りをする必要がある場合は、1.2 m(4フィート)幅のモアでする場合よりも大きな PTO 馬力が必要になります。ほとんどの農村地域の愛好家にとっては、PTO 出力は 25〜50 馬力で十分でしょう。

 多くのメーカーが馬力範囲の重なり合ういくつかの車台のサイズを提供しているので、、トラクターで押したり引いたりして使うアタッチメントの重量も考慮しましょう。一般的には、機械重量が大きければ大きいほど、動かしたり止めたりする際に大きな牽引力が求められます。だから、もし私と同じく直接噴射・過給ディーゼルエンジンのターボがうなりを上げる音が好きなら、ターボで得られる出力が本当に必要なのか慎重に検討しましょう。本当は必要ないのなら、ターボ付きを買わずに「欲しいもの」より「必要なもの」を買いましょう。同様に、より重い車台ではなく、より大きな PTO 出力が必要ならば、より小さな車台のトラクターで出力を上げることを検討しましょう。

 

方向を与える力

 小型トラクターのメーカーは「乗用車のように運転する」新しいトラクターを販売するために多大な努力を払ってきました。このことが実際に意味するところは、運転者の範疇から従来の運転手順を設計者が省いてきたということです。あらゆる小型トラクターは少なくとも 2 つ、中には 3 つのギアレバーが付いている時代がありました。1 つは速度切替(高・低)、1 つは速度調整(1 速から 4 速)、加えて多くのトラクターにはもう 1 つ、シャトルと呼ばれる(前進・後進)方向用の独立したレバーがありました。

 トラクターの経験が豊富な人にとっては、上記の旧式の構成は完全に理にかなっており、ギアを変更するためにトラクターを停止してクラッチ操作する必要性に疑問を感じません。最近の小型トラクターの多くは、従来のトランスミッションを、速度と方向の両方を制御するために 1 つまたは 2 つのペダルを使用する油圧式に置き換えました。ペダル制御変速機のさらに新しいバリエーションは、油圧の代わりに機械的な速度変調を使用する無段変速機 (CVT) です。「簡単な」トランスミッションを選択するとどちらの場合もトラクターの価格がかなり上がります。

 一般的には、フロントローダー作業を頻繁に行うなど、方向転換と変速を多用することが予想される場合、油圧式や無段変速機(CVT)がより容易で、おそらくより効率的です。次善の選択は、シンクロクラッチあるいはノークラッチによるシャトル操作型のトランスミッションになるでしょう。これなら、方向転換は速度を落としてシャトルレバーを握るだけで済みます。手間や便利よりも資金が大切なら、伝統的な(平歯車の)マニュアルトランスミッションを選ぶといいでしょう。方向転換をするためには、停止し、クラッチを操作し、トランスミッションを切り替える必要がありますが、草刈りのような他の操作についてはほとんどの場合、油圧式、CVT、シャトル操作式とそれほど大差ありません。 

販売代理店とうまくやる

 実際には小型トラクターは、地元のディスカウントストアで手に入るようなものではありません。人を介さない購入は難しいので地元の販売代理店と取引しなければなりません。乗用車について販売代理店と取引した経験しかなければ、できるだけ多くのことを考えてみてください。トラクターの購入は長期にわたる関係(使用時間数で計測されるトラクターの寿命は数年ではなく数十年にわたるもの)の始まりで、販売代理店は部品やアクセサリ、アタッチメント、ユーティリティビークル(多目的四輪車)など諸々の販売で利益を得ようとする立ち位置をとります。興味があるトラクターのブランドについて少々自己学習をし、予想されるトラクターの使用方法を正確に理解して、よい取引経験を確実なものにしましょう。いくらまで支払えるか素直に伝えてください。ただし、交渉の余地があることも知っておいてください。

 販売代理店との最初のやりとりが心地よくなかったなら、遠慮せずに自分が知らないこと、わかってないことを認めてそう伝えてください。さらに質問をしましょう。ただ、そのやりとりで最終の決定をしてしまおうとする衝動には打ち勝ってください。その代わりに、メモを取って家に帰り、交渉に戻る前にさらに調査を行ってください。 

 

 最後に、契約する前に十分な訓練と意味のある試運転(ほとんどの販売代理店は数日のうちに貸出用のトラクターをあなたの土地に運んでくれます)を要求しましょう。トラクターの動作が気に入らない場合は、別のメーカーまたはモデルを試してみてください。販売代理店がどうしても気に入らない場合は、地元で別の販売代理店を見つけてください。 購入したら、オーナーズマニュアルを読み、安全第一で農場の仕事をすべて楽しくしましょう!

 

たのしい暮らしをつくるマザーアースニューズ

購読登録はこちらからどうぞ