天然ライラックのビネガー

マザーアースニューズ 自然 レシピ

花や植物から天然酵母を起こして、自宅の台所で微生物の力を利用した風味豊かな調味料を作ろう。

 

 文:カースティン・K・ショッキー(Kirsten K. Shockey

翻訳:松並 敦子

 

 ビネガーは広口の容器に新鮮な果汁を注ぎ、布で蓋をして、時間をかけて微生物を発生させるだけで作れます。ただ、私の経験では、これが上手くいくか完全に失敗するかの割合はほぼ半々です。失敗の原因のほとんどは、無害とはいえ好ましくない上面酵母、あるいは他の良くない微生物のせいです。微生物は糖分と栄養分を奪い合い、発酵の過程を停止させたり、開始させなかったりします。

 ですから、私は自分のレシピにビネガーの種菌を加えます。種菌はビネガーが良好な発酵を始める助けをしてくれます。最初に液体を酸性にし、これが上面酵母を制御してから、すぐに機能する適切な集団の植え付けを助けるのです。

世界で最高のビネガーは上質の原料が基となり、良質なワイン、日本酒、リンゴ酒や他のアルコールへと発酵していきます。既製のアルコールで始めることもできますが、できるだけおいしいビネガーを作るなら、自分でアルコールを作らなければなりません。アルコールは酵母から始まるのです。

 酵母は植物の花や果実に容易に見られる単細胞菌類です。自家製ビネガーを作るのに市販の菌株ではない天然酵母を起こすには、蓋をしない容器の中に新鮮で低温殺菌されていない果汁を入れて、果汁の中に存在する酵母が果汁の上に落ちてくる酵母と共に醗酵していくのに任せるだけです。

 天然酵母を使いたくても、生の果汁が手に入らないなら、天然酵母の種菌を作るところからビネガーの醸造を始めても良いでしょう。種菌であなたの起こした天然酵母がどれくらい上手にビネガーを発酵させるか小さく試すことができます。良い種菌かどうか確認しましょう。とても活発な種菌なら、酵母が活動しているのが分かります。味見のチャンスもあります。お酒臭いのは良い兆候です。酸っぱくて乳臭かったら、乳酸菌ができている印です。乳酸菌は糖分をアルコールではなく乳酸(酢酸ではなく)に変えるので、使いたくないですね。種菌を作れば、起こした酵母を「試す」機会もできます。酵母は活発で美味しいこともあれば、欠陥がある場合もあります。

 私はよく花で天然酵母の種菌を作ります。花には糖分を含む蜜が豊富に含まれていますが、糖分があるということは酵母がいるのです。小さじ 1/8 杯分にも満たない蜜の中に最大で 4 億個もの酵母が含まれています。花の蜜はマルハナバチのような花粉を運ぶ昆虫を引きつけますが、蜂がやってくる回数は果実の中や上にある酵母の種類と濃度が大きな要因だと信じられています。

 酵母起こしの素晴らしさは、酵母起こしに必要な植物材料が非常に少なくて済むことです。例えば、小さな一房のトウワタの花から数リットルのビネガーを作るのに十分な酵母とエッセンスが起こせます。ただし、農薬や除草剤が散布された場所で花を摘まないでください。それから、全ての花や植物が食用とは限らないことも覚えておきましょう。必ず植物と花を特定して、可食部分だけ使います。特に初めのうちは、花の使用を控えめにします。なぜなら、花で消化不良を起こす人もいるからです。 

 

ライラックのビネガーのレシピ

 ライラックには刺激的な香りがありますが、私が少女時代に初めてこの花と恋に落ちたのは、この香りのせいかもしれません。大人になってからはどこに住んでも、窓の近くにライラックを植えてきました。ライラックの花とその香りは私を気持ち良くしてくれますが、ライラックで作るレモンっぽい花のビネガーも同じように安らぎをもたらしてくれます。

 これはライラックの花の天然酵母で発酵させたリンゴ酢用のレシピです。ライラックのエッセンスは酸味のすぐ上に残る甘い花の香りを通して伝わり、ビネガー自体のフレーバーからは酸味の中にも繊細な花の資質が感じられます。

 これを基本のレシピと方法と考え、「花の力」を参照に、より多くのアイディアを試してください。出来上がり分量:1 ガロン(3.8 L)。

 

材料

  • 低温殺菌のリンゴ果汁・・・1 ガロン(3.8L
  • 花の房から摘んだライラックの小花・・・軽く計量カップに詰めた状態で 12 カップ(235470ml
  • 生で低温殺菌されていない、ろ過していない天然酵母の種菌あるいは種酢・・・1 カップ(235ml

 

 1️⃣ リンゴ果汁の大半を滅菌した広口の大きな瓶に注ぎ入れ、ライラックの花の小花を加え、残った果汁をできるだけ多く注ぎ入れる。木製スプーンでしっかりかき混ぜる。

 2️⃣ バスケットタイプのコーヒーフィルターまたは無漂白の綿モスリンか目の細かいチーズクロスで瓶に蓋をする。ミバエを防ぐために、蓋を紐または輪ゴムかねじ式のビン詰め用の発酵蓋で固定する。

 3️⃣ 蓋をした瓶は 1018℃ の場所に置く。天然酵母は涼しい温度を好むので、この温度に近ければ近いほど好ましい。通常、天然酵母はゆっくり発酵を始めるので、数日ちょっとで泡立ち始めることは期待しない。

 4️⃣ 11 回、瓶の蓋を外し、酸素が中に入るように中身をかき混ぜる。花びら自体が混合物の中に浸かっていることを確認する。そうなっていないと根付きやすい、花びらが好ましくない細菌の宿主になってしまうかもしれない。かき混ぜた後は、蓋を元通りにする。

 5️⃣ 56 日後、種菌を加えてしっかりかき混ぜてから蓋を元通りにする。瓶は 2430℃ のカウンターか別の場所に置く。

 6️⃣ 1 ヶ月後にビネガーを確認する。良い酸味になっているはずだ。保管場所が涼しい場合、ビネガーが完全に熟成させるのはさらに 12 ヶ月かかることがあるので驚かないこと。

 7️⃣ 完成したビネガーを瓶詰する。ビネガー母は次にビネガーを作るときのために取りおくか、友達とシェアする。ビネガーはすぐに使えるが、さらに熟成させてまろやかなフレーバーにしてもよい。。。

 

* 今号の記事全文は5月前半のご注文でご利用いただけます。こちらからどうぞ

* 今号の和訳抜粋サンプルはこちらからどうぞ

* 和訳全文は1年おきに発行される和訳電子版のバックナンバーでお楽しみください