自給生活の実践案9つ

基本に立ち返り、食料保障を実現し、経済的自立をしよう。本当に自給自足を実現している家族の事例。

自分の食物を育て、電力を作り、生計を立てるために家や農場で働くと、いわゆる「生活費」は、大幅に消える。「働いて-稼いで-費やす」消費経済から解き放たれ、その代わりに、もっと地元中心で、現金収入が豊かな暮らしにとって重要でない自給自足経済を発展させている。この自給自足の夢を現実のものとすることは、妻のリサ・キヴィリスト( Lisa Kivirist) と私が1996年にウィスコンシン州南西部の 5.5エーカー(22,260平米)の農場に引っ越してきて以来、私たちの目標となっている。

  自立した暮らしは、様々な形態をとれる。自分の食物やエネルギーを提供でき、自前の床屋、修理屋、自宅学校の先生、家の掃除屋、ペンキ屋、子供の世話をする人になれる。自宅を拠点にしたビジネスを運営することで、自分で作れない重要な製品やサービスを得るのに必要なお金を生み出せる。

  自給自足生活に移行するには、調査と計画が要る。だが、心配無用。今日から始められる。どこに住もうが、既に持っている物や技能が何であろうが関係ない。

 

自立への旅の始まり

  今では、1/3エーカー(1,350平米)の菜園は、私たちに必要な食料のおよそ70% を満たしている。風車と太陽光システムは年間で余るほど電気を生成している。わが家の自宅拠点の事業として、「Inn Serendipity」 と名付けた B&B【一泊朝食付きの宿】、様々な非営利団体へのコンサルテーション、持続可能な生活に関する著述がある。ほどよい農地に、家族の暮らしと事業が収まっている。だが、始まりはこうではなかった。

  私たちはシカゴから農場へ引越し、新婚で、長い間他の人から買ってきた技能やサービスを自前でやるための冒険を始めることに熱を上げていた。化石燃料への依存から自由になり、毎年放出する量よりも多くの二酸化炭素を抑えたかった。達成するのに何年もかかることは分かっていた。以下が、ヴィジョンを現実とするためにとった方法だ。 

 

1.質素であれ

  質素であることを肝に銘じて、やり繰りに習熟する。先進のぜいたく品、衛星テレビやスマートフォンなどのおかげで、借金しない暮らしができる。新車を所有したことが無いし、クレジットカードで残高を繰り越したこと【リボ払い】も無い。

  図書館なら無料なのに、なぜ、映画のビデオレンタルをするの?洋服交換会で「ショッピングしよう」。そこで、子供が大きくなって着れなくなった服を置いて、自分のために何か新しいものを得よう。私たちは、お隣りさんと共に薪を切り、Sun Oven のソーラークッカーで料理を楽しむ。このような創造的なやり方を組合わせた節約で、食料や電気を生産し、無料の物を共有して使い、ローンを完済することができた。

  ローンを払い終わったので、年間10,000ドルで暮らせる。物を買う時は、高品質で耐久性 ― 10年以上の補償があるものが多い ― があるもので、可能なら生協から買う。隠居については、するのが好きなことをなぜ止めようとするのだろうと思う。

 

2.長期的に考えて踏ん張る

  1生住む場所を固め、長期ヴィジョンを作ろう。読者の皆さんは、今の人生のステージに見合った期間をかけて成し遂げる実践的な計画を持ちたいことだろう。50代の時に何年もかかる案件をやるのと、20代の頃にやるのとでは違う。自分の能力と案件の時間軸は、自分に正直に、妥当な線で考えよう。

  私たちは自給自足への10年がかりの旅を計画し、たくさんの時間を残しつつ大小の案件を解決済みだ。ポテトの育て方から、自宅のエネルギーシステムを可能にした再生可能エネルギー奨励金の利用の仕方まで。私たちはまた、障害が起こった時にやり抜く時間を考慮した ― 障害はいくつか起こっていて、厳しい嵐で風車の羽根3枚全てが損傷した時などだ。私たちは、基本的に、年に1つか2つだけ大きな自給自足案件に取りかかる。

 

3.基本に立ち返る

  どこで旅を始めるか決めるのは、重苦しい気持ちにさせる。もし、あなたが、かつての私たちのようならば ― カフェラテに毒され、ストレスだらけの大都会の仕事で狭い部屋に押し込められ、隔週の給料用小切手に頼って暮らし ― いつ、どこで、どうやって、を考え抜く時間を単に見つけることが難題。子供を育て、住宅ローンや教育ローンを支払うのが更なるストレスとなる。

  サバイバルと生活の維持に注力するところから始めよう。6大項目で自給自足生活へのアプローチを案内したい:水、小屋、食料、エネルギー(交通を含む)、生計、コミュニティー(娯楽を含む)。読者の皆さんがまず最初に取りかかる項目は、状況、熱意、特殊技能、経済状態によることだろう。総合的な自立を成し遂げるのは誰にも限界がある ― だが、限界を知った後は、実現性があるものへ変えるよう励むことができる(後述の「6つの基本ニーズにどうやって合わせるか」を参照)。

  私たちは、【乾燥機でなく】洗濯ロープを使うなど、簡単なことや、省エネ家電に取り替えるなど、早く元がとれることから直ぐに取り入れることにした。基本に立ち返るスタートで、時間とお金両方の大きな投資がある挑戦的なステップを後ほど取れるように段階を踏んだ。目標達成に役立つ既にあるものを見定めよう。例えば、南向きの屋根が太陽熱システムにとても合うと知ったので、資産として計画に組み入れて、家庭用水を暖めることにした。

 

4.人との関係を養う

  パートナーと共に旅を始める人にとって、見落としてはならないことは、共通のヴィジョンを見つけようと共に決意することだ。リサと私は、異なるアプローチと技能を持っているが、互いに助け合い、励まし合い、いくらかユーモアを交えながら、決断したことが方向性に合うか見定めている。しかし、例えば、木を一緒に切る時、戦略を練るのにかなりの時間がかかった(結婚生活の素晴らしいセラピーにもなった)。

  身体の健康を向上するのも最優先だった。テレビを見るのを断ち切ると、ずっと体が活動的になり、目の前の案件に捧げる時間をより持てた。私たちの農場で働くことは、最適な運動となった。オフシーズンには、予防健康管理の投資として、スポーツジムの会員制度を確認する。

 

5.季節に応じて変える

  私たちは季節に応じた食事をしている ― 6月にイチゴをたくさん食べて、1月にバターナッツ・スカッシュ・スープを味わう。季節はまた、生計をたてる案件の目安になる。暖かくて生物が育つ季節の間は、屋外の菜園で過ごして、B&B や小屋を貸す事業を通じて収入を生むことに注力する。冬の何カ月かの間は、物書き、写真、講演、コンサルティングが収入のほとんどを生み出す。

 

6.住まいを創る

  必須ではないが、土地を持つのは、自給自足を養う基礎となり得る。私たちは仕事を辞めて、シカゴから田舎の小さな土地に引越し、土地の賢い世話人になると決意した ― オーガニックで土壌改良し、暴風と野生動植物のために木を植え、豊かな風量と日光など、土地から得られるものを使う。

  土地の所有権を持つようになると、より多くというのが必ずしもより良いわけではない。現実的で且つ経済的に可能な土地管理の計画を創る。読者の皆さんの土地は、キャッシュフローを生み出し、取り組む活動の結果として時を経て価値が上がる資産と言える。農場を借りるのは、リース契約で目標達成に必要な案件が出来るなら、選択肢のひとつ。

  道を下った所に住む私たちのメンターで農的暮らし仲間のフィル・ウェルティと妻のジュディ(Phil and Judy Welty)は、繁盛しているメープルシロップの運営財産で1974年にログハウスを建てた。

  「自分たちで唯一やらなかったのは基礎工事」とフィルは言う。若い息子二人と妻の助けで、1年で130平米の家を建築し、後に、太陽熱システムと 0.5kW の風車を追加して、エネルギー需要を満たした。子牛と豚数頭、卵用の鶏を含めて、食料のおよそ 90% は所有地で育てた。

  ヘルディ・ハンクレイ(Heidi Hankley) は、夫のチップ(Chip)と二人の子供と共に、私たちの地方の北部で、2.8 ヘクタールの農地に住んでいる。「マディソンの市街に住んだ後、子供たちを田舎で育てたくなったの」と彼女は言う。彼らの建てた藁とコブの家には、メイソンリー・ストーブや太陽熱システムがあり、大草原とキッチンガーデンに囲まれている。「子供二人を育て、家で学校教育をし、創造的な空間をたくさん与えるために、健康的な家を建てたかったの。」

 

7.借金を無くす

  裏庭を農家市場、キッチンをレストラン、地下倉庫をスーパーマーケットとして使うと、基本的に食料費は無くなる。自分たちの食料をほとんど生産すると、ローンを早く払い終わることができ ― 更に食料の品質が向上する。

  語源であるフランス語から訳された mortgage【ローンの意味の英語】は、「死の契約」という意味。ローン(元金に伴う利子払いも含む)は、借り主にのしかかる請求のため、もっと自給自足的になろうと努力する人たちの障害となることが多い。ローンやクレジットカードで自動車を買う場合も同じこと。借金を無くして経済的自由を取り戻すのだ。

  現金で払えないものは一切買わない努力をお勧めしている。様々な事業から節約して現金を得られたら、現物資産に投資しよう。例えば、自宅の電力を賄う再生可能エネルギーシステムや必要な時に確実に動き回れる燃費の良い自動車など。ハイブリッドやディーゼル車を所有しているなら、税額控除になる事業用途で運転する毎に、ただ自動車を運転するよりも利益があがる ― 自営業をする別の理由。

 

8.ホームビジネスを始める

  自営業では、DIYの考え方を個人財務に当てはめることが必要。家の一部を事務所に変えて、自分で育てたり作ったりできる付加価値のある製品を基にしたビジネスを作り上げる方法を探求しよう(たくさんの案はこちらHome-Based Business Opportunities【ホームビジネスの案】)。

  私たちは、自宅の述べ床面積のおよそ4分の1を事業用に使っている ― 家の中にB&Bの客室2部屋、更にホームオフィス。B&Bについては、リサと私が財産所有者として「トリプルネットリース」にサインしている。このリースで、私たちの事業は、宿貸し収入 ― 毎年稼ぐ収入の大多数を占める ― をもたらし、更に、3つの項目をもたらす:財産税の事業割当て分(およそ24%)、保険料、維持費。

  事業で生み出す収益は、経費で減る。純益の最大化をする代わりに、私たちは、事業をてこにして、自給自足の目標を目指すため、収益のほとんどを再投資して、事業の継続可能性を

高めている。例えば、B&Bや小屋の環境に優しい改装を完成させることなどだ。(この話は私たちの本「ECOpreneuring」で。)

  必ずしも、1年中農的暮らしにかかりきる必要は無い。私たちの生計を素晴らしく豊かにする面としては、マザーアースニューズフェアなどのイベントでの講演、国中の素晴らしいぢきゅう人(農的暮らしをする人)や農園料理人についての著述、写真撮影などがある。技術とインターネットが、編集者、クライアントと私たちの間の距離の弊害を無くしている。

 

9.コミュニティーを作る

  コミュニティーを創るのは、何世紀もの間、ぢきゅう人のやり方になっている ― 自給自足は独りで進むようなものではない。私たちは、ウィスコンシン州のグリーン郡へ引き寄せられた。なぜならば、ゆるやかな緑の丘、受賞歴のあるチーズ工場、モンローの 都市歴史郡庁舎広場(Downtown Historic Courthouse Square)に価値を見いだす他の人たちと郵便番号を共有したいと思ったから。ご近所さんたちは、私たちの移行を、ずっと手助けしてくれている。Inn Serendipity の改装を手伝い、雑草の識別の要点を教えて、親切に公開してくれる知見(金銭のやりとりは無し)でお金のかかる失敗をさけるよう助けてくれている。

  私たちの地域の有志で、「トランジション・グリーン郡(Transition Green County)」 を形成した。このグループは、どうやって化石燃料や遠方から輸送される食品に頼らない方向へコミュニティーを進めるか構想するものだ。

  自分たちが選んだ道を誰もが拍手喝采するわけでなく、ましてや支援するわけでもないと学んだ。すぐそばの家族にしてもそうだ。そこで、コミュニティー作りのスキルが出てくる。だが、それを引き出すことで、ローンの支払いに苦闘し、遠方で育った野菜で生き延び、給料のために嫌いな仕事をすること無しですむようになる。私たちの暮らしの豊かさは明らかで、農場の美しさ、体と精神の健康、自宅が学校の息子たちが何か新しいことを学んだと分かった時の楽しさに現れる。

  皆さんは、自給自足の夢に生きることができる。どこを自宅と呼ぼうとも。簡潔な言葉で言うと、自然の供するもので、大地とご近所さんとつながって、暮らすこと。

 

ジョン・D・イヴァンコは、受賞した本 ECOpreneuring を妻のリサ・キヴィリストと共著していて ― そこから、本稿の見地がひかれた。他の著書に  Rural Renaissance  と  Farmstead Chef がある。

 

 

 

9 Strategies for Self-Sufficient Living

October/November 2013