人類の叡智(その1)

今現在進行中のハッピーエンド・ストーリーを送りたい。主役はエンジニア、アーティスト、銀行員、農家、そしてあなただ。

日々のニュースは我々の視界を細く狭くし、今まさに起こっている圧倒的技術革新も見えなくなってしまうことがある。最近、テスラ・Sモデル電気自動車(Tesla Model S)のフロントガラスからそんな発展をはっきりと見ることが出来たのだ。コロラドの山の中、田舎道でSモデルの試乗をした。車に対しての概念が吹き飛ぶくらいすごい体験だった。

僕は車好きだ。大気汚染の主因であり、石油消費が環境問題、政治的紛争、経済的不条理の種だとわかっていてもずっと車が好きだった。

自動車は人間のもつ素晴らしい創造性、想像力の証明でもある。良い車は美しい彫刻、上質な部屋、便利な道具、スーパーコンピューター、ローラーコースター、宇宙船がひとつになった美しい創作物だ。

そしてテスラだ。すべてを備えたうえに石油なしで走り、政争に関連しない理想主義と想像力が産み出したもので、人類の暮らしを持続可能にし、業績を輝かせる。

イーロン・マスク(Elon Musk)はテスラ・モーターズのCEOで自動車のチーフ・デザイナーだ。企業家で複数の事業で成功したテクノロジー億万長者だ。ソフトウェアの会社Zip299年に37百万ドルで、PayPal02年に15億ドルで売却したのだ。成功を収め、地位に安住することも出来たがPayPalを売ってすぐにスペースシャトル事業に乗り出す道を選んだ。

そう、マスクの3つめの会社は宇宙船の設計、製造をするスペースX SpaceX だ。宇宙探索は今後、人類を救う決定打になると考えているのだ。アメリカ政府が宇宙計画を縮小したのでマスクは代替として事業を打ち出した。09年にロケットのひとつが衛星を軌道に乗せた。12年にはシャトルで物品を国際宇宙ステーションに運搬した。12年の終わりには民間、政府合わせた乗船契約が4百億ドルになった。

金持ちが宇宙船で遊んでいるわけではない。ビジネスマンが利益を産むための事業を順調に進めているのだ。マスクは最近「火星植民地に定期船が飛ぶまではスペースXを上場しない」と発言している。

つまり、長期計画である火星植民地が実現するまでは私財を投入するということだ。

空いた時間でアメリカ最大の太陽光発電総合サービス企業ソーラーシティ Solar City を思い描き06年の設立に尽力した。マスクは会社の議長でもあり、設計、融資、発電装置の設置、性能監視全てをまとめてできるような企業を作った。その頃、おそらく02年中にアイディアが湧いてきた。もっと良い自動車が作れないかと思い実現したのだ。

 

テスラSモデル

テスラが「良い自動車」という基本的理由は100%電力で動くという点にある。電気モーターはバッテリーに貯まったエネルギーをタイヤの動力に変換する能力がガソリンエンジンの約4倍も効率的なのだ。地面から掘った原油は石油に精製され、多くが海外から輸送され精製工場、パイプライン、トラックを通じてガソリンスタンドまで送られる。

しかし電気は発電方法が多様で、太陽光のように再生可能なものが多いのだ。地域の水力、地熱、太陽光、風力発電を利用する人が年々増えている。僕の電気自動車、シボレー・ボルトの充電のほとんどは小屋の屋根上の太陽電池パネルで賄っている。これ以上ないほどローカルで省エネだ。

運転席に座ると、テスラ・Sモデルはガソリン車に比べて比較にならないほど省エネでエコなのを忘れそうになる。この世でもっとも非日常な体験だ。大型セダンが4秒強で時速60マイル(約96㎞)に達する。

電気モーターはどの速度でもトルクが同じなのでテスラ・Sモデルは60マイルから120マイルに加速するのも同じ速さなのだ。大抵のフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニがテスラに敵わない。ギアもギアチェンジもない。必要な時に即なめらかな加速をしてくれる。

車両重量は約5,000ポンド(2,268㎏)でフォードF-150ピックアップ・トラック とほぼ同じだが1,000ポンドはキャビンの下のフラット・トレイに位置する7,000セルのリチウム・イオン電池だ。そのため重心が低くなる。コンピューター牽引と横滑り防止装置の相乗効果で価格が何10万ドルのスポーツカーに匹敵するスピードと操作性を保てるのだ。

テスラ・Sモデルは安くはない。ベーシックモデルでおよそ64,000ドル~なので連邦税額控除は7,500ドルになる計算だ。多くの州、自治体で無料駐車場、州税控除など電気自動車の奨励を実施している。しかし真に革新的な技術は導入時には高くつくことが多いのだ。パソコンが80年代半ばに初めてヒットし大きい市場を獲得したころ、IBMXT4,995ドルだった。数十年を経てぐっと値下がりした。テスラ・Sモデルも手頃な値段になることが期待できる。133月、マスクはブルームバーグTVにおいて34年以内に4,000ドル以下で「買いやすい、買いたくなる車を作る」と語った。

車好きの反応は以下の通り。モータートレンドマガジン(Motor Trend magazine)、オートモービルマガジン(Automobile Magazine)両誌の2013年カー・オフ・ザ・イヤーに選出され、コンシューマー・レポートには「史上最高の試乗車」と言わしめた。高速道路交通安全事業団はこれまでの最高評価をつけた。製造された中で最も安全な車というお墨付きだ。根拠をもってして史上最高の車とも呼べるだろう。アメリカ政府はテスラ(とスペースXソーラー・シティ)のスタート時に資金援助したが、テスラは46500万ドルの連邦ローンを9年繰り上げで135月に完済し、同月最初の利益をあげた。そして現在メルセデス、トヨタに負けない革命的マシンを売り出している。超省エネ、超安全な車が走る未来に向かっているのだ。

テクノロジーと健全な未来に関するブライアン・ウェルチの考えはこの記事のその2もご覧ください

 

写真上 テスラ・モーターズ提供: テスラ・モデルS電気自動車は大気汚染と石油依存の削減をしつつ運転を楽しめる。モーター・トレンド誌はSモデルを2013年カー・オブ・ザ・イヤーに選んだ。コンシューマー・レポートは最高安全評価を出した。

 

写真下 ソーラー・シティ提供: アメリカ最大の太陽光発電企業はWalgreens, eBay, Intel U.S. 軍 また写真のアリゾナ州スコッツデールscottsdaleの小学校 を含む68000以上の消費者に太陽発電を設置してきた。

 

 

Environmental Problems Are No Match for Human Ingenuity, Part 1

By Bryan Welch