田舎暮らしのための仕事と自営農園で生活する方法

都会や郊外のオフィスでの単調な仕事を離れ、自営農園 (homestead) を軌道に乗せて、あるいは田舎の仕事を継ぎはぎしながら生活することは可能だ。田舎で暮らす一家の大黒柱が、ニッチな田舎ビジネスや地域支援型農業 (CSA) 、更には自家製フードで起業して生計を立てることだって夢ではない。

 

 9時から5時の都市での退屈な仕事とは縁を切った収入源を見つけて(自分で創って!)、自営農園の夢に向かって飛躍しよう。

 マザーの読者は、9時から5時まで狭い事務所に閉じ込められる生活を一新するシンプルな地に足のついた暮らしに心惹かれる人たちだ。長年使い込んだ道具を直したり、菜園をきれいに草取りしたり、不要な木材から機能的なテーブルを作り出したり。都市での退屈な暮らしより、こうしたことに生きがいを見つける方を選んでいる。あなたもやってみたいかい? もしかしたら農村や静かな小さな町で暮らしたいと思うかもしれない。けれども、多くの読者の声が届いている。自営農園の夢を実現することは冒険だと。一番大きな問題は、たいてい資金不足とセンスの問題だ。自営農園を維持するには資金と創意工夫が必要なのだ。

 この特集では、あなたが田舎のはずれに居を構えていようが、農村地域のコミュニティに住んでいようが関係なく、生活をやりくりするための多様な方法を探究することに精力を傾けている。私たちは、各々独自のやり方で現代的な自営農園を軌道に乗せている人たち何人かについての調査を重ね、経験談を集めてきた。

 初めに、小さな町や農村地域での仕事について、アン・ラーキン・ハンセン (Ann Larkin Hansen) が、フルタイム・パートタイムや季節労働についての概要を教えてくれる。これらを組み合わせれば快適な田舎暮らしができる。高齢者介護から製粉作業まで、誰でも何かできることが見つかるはずだ。

 次に、作家でありDIY専門家のスティーブ・マックスウェル (Steve Maxwell) が、デジタルに詳しい読者がどうしたらノートパソコンで生計を立てていかれるかを教えてくれる。彼は、自営農園を営む先進技術愛好家のことを、昔からの技術と現代技術をつなぎあわせる能力にちなんで「デジタル百姓 (digital peasants) 」と呼んでいる。

 長年のMEN寄稿編集者者であるキャム・マザー (Cam Mather) も、夫婦で50人のメンバーが登録する地域支援型農業プログラムを運営してどのように生計を 立てているか詳しく教えてくれる。最後に、夫婦企業家の模範たるジョン・イバンコ (John Ivanko) とリサ・キビリスト (Lisa Kivirist) からのアドバイスでこの特集を締めくくる。10冊近くにも上る本の共著があり、宿「Inn Serendipity」を経営している夫婦。この二人が自宅の台所を拠点とした自家製フード事業でどのように生活していくかという問題に取り組んでいる。これらの経験談と散りばめられた実践の数々が、どのようにしたらあなたも創造的に自主独立して収入を得られるのか、アイデアを刺激してくれることを願ってやまない。

 

小さな町と田舎の仕事

いくらかの自己資金は必要だ。

 どれだけ自給自足できるといっても、不動産税の支払いや、廃品を回収したり育てたり作ったりすることができないサービスや物を買うためにはお金がいる。ビン詰めのふた、チェーンソーの替刃、歯の治療代やコーヒー代(少なくとも私には必要だ)しかり。あなたの自営農園の余剰農産物を売ること、たとえば平飼いの卵や野菜、肉やボディケア用品を売ることも一つの選択肢だろう。でも、その準備ができていない、または、フルタイム農園主になろうとは思っていないのなら、他の収入源が必要だ。自営農園から離れたパートタイム、季節労働、もしくはフルタイムの仕事でさえも、あなたに大きな経済的ゆとりを与え、あなたの住む小さな地域の経済基盤を一層安定させるだろう。幸運にも、あなたが想像する以上に田舎の仕事はある。探してみれば、いくつかの選択肢が見つかりそうだ。コメディアンのW.C.フィールズ (W.C. Fields) がいう「つかみづらい金 (elusive spondulix) 」をつかんで家に持ち帰ることがきっとできるだろう。仕事をどこで見つけるかについての統計資料の全体像と、就職・起業の可能性についてのリストを以下に掲載する。

 米国農務省 (USDA) 農業経済研究局 (ERS) のアメリカの農村地域概観 (Rural America at a Glance)  2014年版によれば、農村地域と都市の失業率はほとんど同じだが、就労可能な職種に違いがあるという。農村地域では専門職や事務職は少ないが、肉体労働や技能訓練が必要な職種は都市よりも多いという。こうした仕事は労働単価は低くなるものの、パートタイム、季節労働、自営の機会がより多く、自営農園者のスケジュールに合いやすい。多くの田舎住まいの人たちがパートタイムや季節労働を組み合わせて生計を立てている。春には植樹、夏には溶接、冬には捕獲、除雪、道路グレーダーの運転といった例がある。

 それぞれの農村地域で就労可能な職種は、人口密度、天然資源基盤、主流の農業のスタイルによって大きく異なる。人口の少ないグレートプレーンズ【アメリカ中央にある、ロッキー山脈の東麓に広がる大平原。北はカナダ、南はメキシコ国境まで広がる】は就労機会が乏しいが、人口が増加するミシシッピ川東には、家屋塗装や高齢者介護などのサービス業の需要がある。森林地帯では木材伐採や製材加工、景観のよい観光客がよく訪れる地域ではリゾートやマリーナ、レストランでの仕事がある。果樹園や菜園は、苗植えや収穫のための季節需要がある。酪農場は、牛乳配達車の運転手や加工工場での働き手に周年の需要がある。

 ERSのエコノミストであるトム・ヘルツ (Tom Hertz) は、製造業がかつて農村地域の主流だったが、減少の一途を辿っており(2003年から15%減少)、主要都市およびそれ以外の地域で自営業が最も急速に伸びているセクターであると記している。2013年は、農村地域の仕事の23%は農業以外の自営業だった。農業関係の技能職(獣医、動物栄養士、土壌科学者、農場管理者を含む)は不足していると彼は言う。最近の米国農務省レポートでは、60,000近くの求人需要がありながら、農業関係の学位をとった大卒者は毎年35,000人しかいないと言う。

 

週40時間

アメリカ中の多くの小さな町において、最高水準の仕事(フルタイム、社会保障手当付き)は、学校、病院、診療所、政府機関に集中している。学校は先生だけが必要なのではない。調理師、守衛、音楽や美術の助手、バス運転手、事務職、図書館のスタッフも必要だ。病院や診療所が町にあれば、受付、清掃スタッフ、実験助手や看護師が必要になる。高齢者ホームには、調理師、介護助手、アクティビティディレクターの需要がある。郡レベルの地方公共機関では、事務職や守衛、郡と市町双方で道路管理・修理、ごみ処理・リサイクル、下水処理の仕事の需要がある。地域の郵便サービスの仕事もあるだろう。

 大通り沿いや高速のインターチェンジ沿いには、銀行、ガソリンスタンド、レストラン、食料雑貨店や他小売業の労働需要がある。その周辺や裏通りには目立ちにくいが穀物倉庫、飼料工場、掘削工事業者、車体修理工場、溶接業、美容院や肉屋などが点在しており、同じく労働需要があるだう。

 

専門技術

あなたの住む地域で需要のある専門技術を持っているなら、あるいは、技能訓練を受けることができるなら、より高給な定期雇用を見つけたり、自営業ができるだろう。テクニカルカレッジや、コミュニティーカレッジ【主に2年制の公立の高等教育機関。学位取得のみならず、職業訓練・技術教育プログラムも提供。コミュニティーカレッジのうち職業教育訓練に比重をおくものをテクニカルカレッジと呼ぶ場合がある。】は、一段と就労可能性が高まるあらゆる技能訓練を提供している。小型エンジン修理、トラック運転手、送電線保守・修理などだ。地域の農務出張所 (Local agricultural extension offices) には、短期講座があるかもしれない。あるいは、特殊訓練が必要な近隣農場の研修生受入れの知識があるかもしれない。羊毛狩り、蹄手入れやトラクターの安全教育における求人はわずかだ。

 小さな町では、的確な訓練で自営業や中小企業への多くの可能性が開かれる。不動産業、保険業、会計、税務などだ。地域の小規模印刷業や新聞社の商売は成り立たなくなるだろうと言われたが、今のところそのようなことは起こっていない。こうした事業は地域の頼もしい仕事提供元だ。仕事をみつけることができるかどうかは、あなたが選択した事業活動を支えるだけの人口があるかどうかと、あなたの腕にかかっている。小さな町では口コミの広がりは早い。あなたが信頼に足り、感じがよく、腕もよければ、客は集まってくる。

 データ入力や、コールセンターのような仕事には経験はいらない一方で、医療情報処理【医師の診察などを聞き取り必要箇所を文書化するなど、治療情報を電子媒体に記録する仕事】やメディア管理はより高度な訓練もしくは技術が必要だ。友人の一人はリフォームと屋根工事を手がけて成功を収めているが、はじめは報酬の良いオンラインでの保険請求和解処理の仕事から始めた。ブロードバンドインターネットの普及で、その一家は一番近くの町から40マイル(約64km)離れた小さな家で24時間の生活を送るという夢に近づいている。

 

綿密な計画

どのような自営ベンチャー事業を始めるにしても、許認可と証明書の取得、州・国税法、また資金調達の方法をよく知る必要がある。健康保険も自分で加入しなければならないことを忘れずに。地域のコミュニティーカレッジや、公開講座でビジネス講座を受けることができるかもしれない。以下のページを調べてみよう。U.S. Small Business Administration(米国中小企業庁)、USDA Rural Business Development Grants(米国農務省 地域ビジネス成長助成金)、中小企業経営と自営業者向けのInternal Revenue Service(米国国税庁)のページ。

 

具体例

デジタル時代の家でするオンラインの仕事

地域支援型農業 (CSA) 運営

自宅で自家製フード起業

 

田舎で一家を支えるための92の仕事

このリストの中にある、組み合わせれば生活をやりくりできるかもしれない、あなたの地域にある仕事を頭の中に叩き込んでしまおう。ほとんど実務経験のない、あるいは起業資金のない求職者のために、左手のコラム「地域の仕事」の下に、入門レベルの分野別(多少の訓練が必要な場合もある)職種リストを記載している。建築・修理、農業と畜産、他に高齢者介護や小売、在宅勤務を含めたいろいろな仕事がある。右のコラム「ビジネスチャンス」は、地域雇用の幅広い見通しについてのリストだ。店舗や在庫、より広い範囲での訓練や経験、多くの場合は許認可が必要なこともある地域雇用の需要についての見通しが書いてある。

 

地域の仕事

 

建築・修理

パートタイムからフルタイムまで

アスファルト舗装、コンクリート作業、掘削作業・ブルドーザー操作、屋内塗装、井戸掘削・修理、塀据え付け・修理、 灌漑設備設置、修理点検、石工職、製材作業、電気工、自動車整備士、農機具整備、送電線管理、機械技師、配管工事、溶接作業。

季節就労

屋外塗装、道路グレーダー・除雪機操作、屋根工事

 

農業と畜産

パートタイムからフルタイムまで

蹄手入れ、競り売り、家畜の人工授精、獣医

季節就労

定植・収穫、伐採搬出作業、育苗・温室作業、収穫物販売

 

パートタイムからフルタイムまで

在宅ケア/高齢者介護、救急医療スタッフ、ホスピススタッフ、食料雑貨・小売業、燃料油および液化石油ガス配送、トラック運転手、不動産管理、仕出し、床屋/美容院、肉屋、データ入力、検品、アンケート収集、賠償請求額査定、編集・ライター業、医療情報処理、ウェブ

 

デザイン

ビジネスチャンス

家電修理、樹木栽培、パン屋、帳簿会計サービス、建築検査、木工家具製造、カーペットクリーニング、コンピューターソフト・ハードウェア修理、受注農作業(耕運、干草作成)、運転サービス、電気設備取付・修理、繊維加工、薪加工、製粉、鉄砲鍛冶・小銃修理、何でも屋、装蹄、ハウスクリーニング、狩猟・キャンプ・釣り用具店やガイド、空調設備取付・点検修理、保険販売、造園、土地測量、芝生管理、家畜輸送、錠前屋、食肉加工、貸し倉庫、育苗・温室サービス、配管設置・修理点検、移動式製材機の作業、家禽のと畜、不動産鑑定、建物改装、建物改築、金属くず回収、汚水浄化槽設置・点検修理、羊毛狩り、靴修理、看板作成、スキッドステアローダー点検修理、小型エンジン修理、仕立て・寸法直し、はく製加工、トレーラー販売・点検修理、捕獲作業、火災・水害復旧作業、窓洗浄

 

アン・ラーキン・ハンセン (Ann Larkin Hansen) は、ウィスコンシンの自営農園で20年以上家畜・野菜を育てている。その間、他の農場の農場新聞のスタッフライターも6年間務めている。農園立ち上げ当初からフリーランスライターとしても活動。著書 「Organic Farming Manual」はMOTHER EARTH NEWS storeで販売中。

 

たのしく自活

マザーアースニューズ

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Rural Jobs: Make a Living in Your Rural Community or from a Homestead Business

By Ann Larkin Hansen 

February/March 2016